著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM)
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
子どもの発育不良と、地域の食材という手がかり
スタンティング(発育阻害)とは、年齢に対して身長が著しく低い状態を指し、主に妊娠から2歳ごろまでの「最初の1000日」に栄養不足や感染症が重なることで起こる慢性的な栄養問題です。インドネシアでは国の優先課題とされており、論文によると東ヌサ・トゥンガラ州は特に有病率が高い地域の一つです。
研究チームが活動したのは、同州東スンバ県パフンガ・ロドゥ郡のタマ村です。この村では、年齢別身長の指標で37人の幼児に問題が記録されており、そのうち33人が「低身長」、4人が「重度の低身長」とされていました。著者らは背景として、家庭の食事がトウモロコシやイモ、米といった炭水化物に偏る一方、トウモロコシ、タロイモ、そして地元で「マルンガ」と呼ばれるモリンガ(ワサビノキ)の葉など、身近にある栄養価の高い食材が十分に生かされていない点を挙げています。
そこで研究チームは、村の母子保健活動の拠点「ポシヤンドゥ」で幼児の計測や栄養指導を担う住民ボランティア(カデル)に注目しました。このボランティアの知識と調理技術を高め、地元の食材で栄養を強化した補助食づくりを広めることを目的に、地域貢献活動として研修を企画しました。なお論文でいう「強化(フォーティフィケーション)」とは、合成の微量栄養素を加えることではなく、栄養豊富な地元食材を組み合わせて補助食の栄養価を高めることを意味しています。
8か月・6段階で進めた研修
活動は8か月にわたり、6つの段階で進められました。行政や保健所との調整から始め、ボランティアの事前知識の測定と地元食材の入手状況の調査を行いました。その結果をもとに研修用の教材と携帯用の手引き書を作成し、2種類の補助食のレシピを標準化しています。2種類とは、トウモロコシを使った蒸し菓子「レメット」と、タロイモのスティックで、いずれもモリンガの葉の粉を使ったものです。
中心となったのは、村内6か所のポシヤンドゥのボランティアを対象とした1日がかりの研修です。発育阻害や「最初の1000日」、バランスのよい食事、地元食材による栄養強化、栄養に関する伝え方などを学んだうえで、栄養士の指導のもと2種類の補助食を実際に調理しました。研修は、成人の経験や参加を重視する「アンドラゴジー(成人教育)」の考え方に基づき、対話型の講義、話し合い、実演、実習を組み合わせています。研修の後は、定例の活動で補助食づくりを自分たちで実践できるよう、チームが巡回して支援しました。
研修の効果を確かめるため、研修前後に同じ知識テストを実施し、得点の変化を統計的に比較しました。
知識テストの平均点は上昇、目標の伸び幅には届かず
研修には37人のボランティアが参加し、前後のテスト結果がそろった35人が分析の対象となりました。平均点は研修前の78.9点から研修後には86.6点となり、7.7点(9.8%)上昇しました。研修前後の差は統計的に意味のあるものと報告されています。個人別に見ると、得点が上がったのは17人、変わらなかったのは16人、下がったのは2人でした。
70点以上を取った人は、研修前の29人(82.9%)から研修後には35人全員となり、「8割以上が70点以上」という目標は達成されました。一方、「知識を30%以上伸ばす」という目標には届きませんでした。著者らはその理由として、参加者がもともと比較的高い知識を持っており、研修前から満点の人が5人いたため、伸びる余地が限られていたことを挙げています。
著者らはまた、今回の論文では知識の変化を報告したにとどまると説明しています。ボランティアが自分で補助食をつくる技術の観察結果や、幼児が補助食を受け入れたかどうかはまだ報告されておらず、子どもの食生活や栄養状態への影響も評価されていません。発育阻害には衛生環境や養育のあり方、医療へのアクセスなど多くの要因が関わるため、こうした影響は長期の支援と観察を通じて初めて判断できる、としています。
身近な食材と担い手の力を結びつける試み
著者らは現地の状況について、食材そのものが不足しているというより、それを子どもが食べやすく栄養のある料理に加工する知識や技術が足りないことが課題だったと分析しています。今回の取り組みは、地元の食材と村の保健ボランティアの力を結びつけ、手引き書という形で知識を村に残そうとしたものです。研修によって参加者の知識が高まったことを示し、似た条件の村でも応用できる可能性があると、論文は結論づけています。
原著論文の著者・所属:Maria Magdalena Dwi Wahyuni(Fakultas Kesehatan Masyarakat, Universitas Nusa Cendana)、Galuh Wiedani Kusuma Dyah Larasati(Fakultas Kesehatan Masyarakat, Universitas Nusa Cendana)、Aletha Anasthasya Litelnoni(Fakultas Kesehatan Masyarakat, Universitas Nusa Cendana)、Maissie Ginaninta Charoline Niron(Fakultas Kesehatan Masyarakat, Universitas Nusa Cendana)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Maria Magdalena Dwi Wahyuni, Galuh Wiedani Kusuma Dyah Larasati, Aletha Anasthasya Litelnoni, Maissie Ginaninta Charoline Niron Pemberdayaan Kader Posyandu melalui Fortifikasi Pangan Lokal sebagai Strategi Pencegahan Stunting di Desa Tamma, Kecamatan Pahunga Lodu, Kabupaten Sumba Timur. JURNAL KREATIVITAS PENGABDIAN KEPADA MASYARAKAT (PKM) 2026-10-30. DOI: 10.33024/jkpm.v9i11.27654. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。