著者の所属・活動拠点の国は、中国、韓国です。

掲載誌:Gels

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ビール醸造の副産物を代替肉の材料に

大豆や小麦などの植物たんぱく質から作る代替肉では、肉のような繊維感や歯ごたえをどう生み出すかが製品づくりの要になります。その主な製法の一つが、水分を多く含むたんぱく質の生地を加熱しながらスクリューで押し出し、冷却しながら成形する「高水分押出成形」です。熱とせん断の力でたんぱく質がほどけて並び直し、冷えるときに繊維状のゲルの網目として固定されると考えられています。

研究チームが注目したのは、ビール醸造で大量に生じながら十分に活用されていないビール酵母です。酵母は乾燥重量の約40〜60%がたんぱく質とされる一方、精製された大豆たんぱく質とは異なり、細胞壁に由来する多糖類なども含む不均一な素材です。こうした違いは、押出成形中の水との結びつきや生地の流れ方、たんぱく質の網目のつながり方に影響する可能性があります。

著者らによると、ビール酵母を含む代替肉についての先行研究は、材料の配合や栄養面、全般的な品質に主眼を置いたものが中心でした。そこで本研究では、生地の水分量、押出機の加熱筒(バレル)の温度、スクリューの回転速度という主要な条件を一つずつ変え、それぞれが繊維の見た目、構造の保たれやすさ、たんぱく質の抽出されやすさ、食感にどう関わるかを調べました。

何をどう調べたか

配合は、大豆分離たんぱく質45%、小麦グルテン36%、コーンスターチ9%、ビール酵母10%(乾燥重量比)です。酵母の割合は、同様の配合を用いた先行研究で適切とされた10%に固定されました。

まず押出成形前の粉体の混合物について、酵母を含まないもの(0%)と10%含むものを比べました。加熱・冷却したときの粘りの変化、温度による弾性や粘性の変化、そして赤外分光法やラマン分光法による分子レベルの特徴を測定しています。

次に、酵母入りの配合を使い、水分量(55〜70%)、バレル温度(140〜170℃)、スクリュー回転速度(150〜300rpm)を、ほかの条件を固定したうえで段階的に一つずつ変えて押出成形しました。できあがった試料について、断面の繊維状構造の観察、高温高圧処理や粉砕・洗浄の後にどれだけ固形分が残るかを示す「インテグリティ指数」、アルカリで抽出される窒素成分の割合(たんぱく質の抽出されやすさの目安)、弾力性・まとまり・かみごたえ(咀嚼性)・切断強度といった食感に関わる力学的性質を測りました。

主な結果

成形前の混合物では、ビール酵母を加えると加熱・冷却時の粘りの立ち上がりが全体的に小さくなりました。粘りが出始める温度は約50.2℃から約76.5℃へと高くなり、冷却後の最終粘度も約3839cPから約2560cPに下がりました。著者らは、酵母の追加と同時にデンプンの割合も10%から9%に下がっているため、これは配合全体の変化を反映したものとして解釈すべきだとしています。温度を変えながら測った弾性と粘性はいずれの混合物でも弾性が優位でしたが、冷却後の最終的な値は酵母入りのほうが低く、網目が固まりきる度合いが小さかったことが示唆されました。一方、赤外分光とラマン分光では、両者に検出できるほどの違いは見られませんでした。

押出成形の条件のうち、最も大きな違いをもたらしたのは水分量でした。水分55%では密でよく発達した繊維構造が見られたのに対し、70%では目に見える繊維がほとんどなくなりました。インテグリティ指数は55%で最も高く、水分が増えるにつれて有意に低下しました。かみごたえも55%から70%の間で約86%低下し、水分が多いほど柔らかく、まとまりが弱く、圧縮や切断に対する抵抗が小さい試料になりました。著者らは、過剰な水がたんぱく質同士の結びつきを弱め、繊維がそろうのに必要な力の条件を損なった可能性を挙げています。

バレル温度を上げると、繊維の見た目がよりはっきりし、170℃で最も顕著でした。インテグリティ指数は140℃で150〜170℃より有意に低く、150〜170℃の間では差がありませんでした。かみごたえや切断強度も温度とともに高まる傾向でした。たんぱく質の抽出されやすさは、140℃から170℃へ温度が上がるにつれて増加し、三つの条件の中で温度との関わりが最もはっきりしていました。

スクリュー回転速度は、試した範囲では繊維の見た目やインテグリティ指数、たんぱく質の抽出されやすさに目立った影響を与えませんでした。ただし、回転速度を150rpmから300rpmへ上げると、かみごたえは約44.8%低下しました。

この研究が示すこと

この研究は、ビール酵母を加えた代替肉でも、押出成形の条件、とりわけ水分量が繊維状の構造と食感を大きく左右することを示しました。また、酵母は成形前の生地の粘りや固まり方を変える一方で、分光分析で捉えられるような大きな分子組成の変化は伴っていませんでした。著者らは、水の分布や網目の物理的な組み立て方の変化が関わっている可能性を挙げつつ、その仕組みは確認できていないとしています。

なお、本研究は条件を一つずつ変える設計のため、水分・温度・回転速度が互いにどう影響し合うかは評価されておらず、個々に好ましかった条件の組み合わせが最適な条件を意味するわけではないと著者らは注意しています。官能評価も行われていません。それでも、醸造の副産物を代替肉の材料として扱う際に、どの加工条件が構造や食感と結びついているかを一つずつ整理した点に、この研究の意義があります。

原著論文の著者・所属:Yu Zhang(Department of Food and Quality Engineering, Nanning University, Nanning 530200, China)、Yung-Hee Jeon(Department of Food Science and Technology, Food and Feed Extrusion Research Center, Kongju National University, Yesan 32439, Republic of Korea)、Ayeon Han(Department of Food Science and Technology, Food and Feed Extrusion Research Center, Kongju National University, Yesan 32439, Republic of Korea)、Gi-Hyung Ryu(Department of Food Science and Technology, Food and Feed Extrusion Research Center, Kongju National University, Yesan 32439, Republic of Korea)、Bon-Jae Gu(Department of Food Science and Technology, Food and Feed Extrusion Research Center, Kongju National University, Yesan 32439, Republic of Korea)、Da-Eun Jung(Department of Food and Resource Economics, Dankook University, Cheonan 31116, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yu Zhang, Yung-Hee Jeon, Ayeon Han, et al. Characterization of Fibrous Protein Gel Network Properties in Brewer’s Yeast-Enhanced Meat Analogs Produced by High-Moisture Extrusion. Gels 2026-08-27. DOI: 10.3390/gels12090769. 原著ライセンス:CC BY.