著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

「何グラム含むか」だけでは分からないたんぱく質の価値

包装食品では、「たんぱく質○グラム」という表示が広く使われるようになりました。研究チームは、この含有量の表示だけで栄養的な価値を十分に伝えられるのかを問題にしています。食品に含まれるたんぱく質のすべてが、調理や消化を経たあとに体で利用できる形になるとは限らないためです。

インドの市場には、植物性代替肉の製品が200種類以上、主要な形態だけでも20種類以上あり、その多くは家庭で加熱して食べるタイプだと著者らは述べています。製品の裏面にはたんぱく質の量が記載されていますが、調理と消化のあとにどれだけが体に利用されうるかは示されていません。そこで著者らは、「○グラムのたんぱく質」から「○グラムの、消化され利用されうるたんぱく質」へと、伝え方を変える必要があると提案しています。

またインドは雑穀(ミレット)と豆類の世界最大の生産国であり、国内の作物を代替たんぱく質の原料に生かす余地が大きいとされています。そのためには、根拠に基づいて作物を選ぶこと、そして原料の段階だけでなく、実際に食べられる食品の中で栄養価を評価することが必要だと著者らは指摘しています。

原料から完成品まで、加工と調理の影響を調べる

この研究では、原料と最終製品の両方について、たんぱく質の溶けやすさ(溶解性)と、試験管内で消化を模した条件で、どれだけが消化されて吸収されうる状態になるか(バイオアクセシビリティ)、さらに吸収・利用されうる割合(バイオアベイラビリティ)を調べました。あわせて、「加工すると必ずたんぱく質の質が損なわれる」わけではない、という仮説も検証しています。

具体的な問いは三つです。一つ目は、雑穀や豆類を原料としてさらに加工する前に、発芽や発酵といった生物的な処理、あるいは加熱処理のうち、どの方法がたんぱく質の質を高めるか。二つ目は、たんぱく質を取り出す方法として、粉砕して分ける「乾式分画」と、水を使って分ける「湿式分画」で、質の指標がどう違うか。三つ目は、市販の植物性代替肉のうち、チャンク(塊状)、キーマ(ひき肉状)、ケバブ、パティ、ナゲットといった形態で、調理がたんぱく質の利用されやすさにどう影響するか、です。

主な結果:加工の効果は作物や製品によって異なる

著者らがまず強調しているのは、たんぱく質の含有量、消化されやすさ、利用されやすさはそれぞれ別のものだという点です。加工によって、総たんぱく質量はほとんど変わらなくても、溶けやすさや消化のされ方、吸収されうる割合は大きく変わりうると報告しています。

加工の効果は作物によって異なり、最適な方法は、その作物で何が消化の妨げになっているか、そして加工がその妨げをどのように取り除くかによって決まるとされています。雑穀では、発芽や発酵によって利用されうる割合が高まり、抽出前にたんぱく質を利用しやすくする方法として有望だと示されました。豆類では加熱と生物的処理の両方が効果を示し、圧力調理がひよこ豆とササゲで利用されうる割合を高めたほか、発酵は調べたすべての豆類で良好な結果だったと報告されています。

抽出法については、湿式分画のほうがたんぱく質の濃度と利用されうる割合が高く、栄養を重視する用途に向いていました。一方、乾式分画は溶けやすさをよく保ち、食品の物性などの機能を重視し、添加物の少ない表示を目指す用途を支えうるとされています。著者らは、抽出法は原料の使い道に合わせて選ぶべきだとまとめています。

植物性代替肉の調理については、調べた5つの形態のうち4つで、調理によって消化されうる割合と利用されうる割合が増えるか、維持されたと報告されています。結果は、たんぱく質の原料、それまでの加工の経緯、製品の形態によって左右されました。さらに、今回評価した形態では、調理済みの植物性代替肉は、対応する動物性の肉製品よりも、たんぱく質の利用されうる割合が高かったとされています。著者らはその背景として、あらかじめ加工を受けて構造が一部変化したたんぱく質濃縮物を使っていることで、消化酵素が働きやすくなっている可能性を挙げています。

たんぱく質の質を決めるのは「植物か動物か」だけではない

研究チームは全体の結論として、たんぱく質の質や利用されやすさは、植物由来か動物由来かという起源だけで決まるのではなく、加工の仕方や製品の構造によって左右されると述べています。

この研究は、試験管内での評価を通じて、食品のたんぱく質を量だけでなく「どれだけ利用されうるか」という観点で見ることの大切さを示しています。あわせて、作物の選び方や加工・調理の方法によって、その値が大きく変わりうることも示しました。

原著論文の著者・所属:Kumar, Raman(Institute of Himalayan Bioresource Technology)、Karan Saini(Institute of Himalayan Bioresource Technology)、Yadav, Sudesh Kumar(Institute of Himalayan Bioresource Technology)、Ishwarya, Padma(Good Food Institute India)、Srivatsan, Vidyashankar(Institute of Himalayan Bioresource Technology)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kumar, Raman, Karan Saini, Yadav, Sudesh Kumar, et al. Protein quality and bioavailability of indigenous crop-based ingredients and plant-based meat products in India. Zenodo (CERN European Organization for Nuclear Research) 2026-10-21. DOI: 10.5281/zenodo.23532406. 原著ライセンス:CC BY.