著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。
掲載誌:Food Science and Biotechnology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
植物性代替肉は、持続可能性や健康、倫理への関心から研究と商品化が進んでいます。消費者に受け入れられるかどうかは食感に大きく左右されるため、製品開発では食感を客観的に評価する必要があります。
研究チームが注目したのは、ごま油を搾った後に残る「ごま粕」です。ごま粕は粗たんぱく質を約35〜40%含む副産物で、ここから取り出したたんぱく質(ごま粕たんぱく質分離物)は大豆たんぱく質を補ったり置き換えたりする候補とされています。ただし、代替肉に使ったときの食感についての情報は限られていました。
代替肉の食感は通常、試料を器具で押しつぶして硬さや弾力などを数値化する「テクスチャー・プロファイル分析」で測ります。しかしこの方法は試料を壊してしまい、多くの配合条件を効率よく比べるには手間がかかります。そこで著者らは、試料を壊さずに光で測る「ハイパースペクトル画像」を使い、代替肉の複数の食感項目を予測できるかを調べました。著者らによれば、代替肉の食感を総合的に予測する目的でこの手法の実現可能性を評価したのは、これが初めての試みです。
何をどのように調べたか
研究チームは、低温圧搾でごま油を搾った後のごま粕からたんぱく質を抽出し、たんぱく質含量77.80%の粉末を得ました。この粉末を水と25〜35重量%の濃度で混ぜ、直径35mm・高さ10mmの容器に入れて90℃で20分加熱し、モデルとなる代替肉を作りました。試料の水分含量は48.16〜66.86%の範囲にわたりました。
各試料について、まずハイパースペクトル画像を撮影しました。これは900〜1700nmの近赤外域を436の細かい波長帯に分けて、画像の各点の光の反射を記録する技術です。近赤外光の吸収には水やたんぱく質などに含まれる化学結合の情報が表れるため、食品の成分や物理的な状態を推定する手がかりになります。撮影後、同じ試料で破壊的な食感測定を行い、硬さ、咀嚼性(かみ応え)、凝集性、復元性、付着性、弾力性の6項目を測りました。
最終的に80個の試料で、光の反射のパターン(スペクトル)から各食感の値を予測する統計モデルを作りました。手法には、多数の波長データを少数の要素にまとめて関係を捉える「部分最小二乗回帰」を用い、1試料ずつ除いて予測を繰り返す方法で性能を確かめました。さらに、予測にどの波長が重要だったかを評価し、重要な波長だけを使ったモデルも作って全波長モデルと比べました。
主な結果
予測の当たりやすさは食感の項目によって大きく異なりました。硬さ、復元性、咀嚼性の3項目では、予測と実測の一致度を表す決定係数が0.829〜0.882となり、著者らは試料を大まかに区別できる水準の性能と評価しました。最も良かったのは硬さで、決定係数は0.882でした。
一方、凝集性(決定係数0.669)と付着性(同0.607)は、ふるい分けに使うには不十分な性能にとどまりました。弾力性については有効なモデルが得られませんでした。著者らは、弾力性が試料間でほとんど変わらず、モデルが説明できるばらつき自体が小さかったことが一因と考えています。
著者らは、予測性能の上限は実測値そのもののばらつきに左右されると指摘しています。硬さ、咀嚼性、復元性では、同じ条件で作った試料間の測定のばらつきから見積もった上限に対し、モデルはその89〜97%に達していました。つまり今回の性能水準は、光によるモデルの欠陥というより、基準となる食感測定の再現性を主に反映しているという見方です。
重要な波長の分析では、硬さ、復元性、咀嚼性に共通して900〜1036nm、1134〜1145nm、1171〜1213nmの領域が選ばれました。これらには水やC–H結合(炭素と水素の結合)に関わる吸収が含まれます。ただし今回の試料ではたんぱく質濃度と水分が連動して変わっているため、選ばれた波長を特定の成分に結びつけることはできないと著者らは述べています。また、ある波長が重要と判定されても、その波長が食感の原因であることを意味するわけではありません。
重要な波長だけに絞ったモデルでは、予測精度は向上しなかったものの、使う変数を全体の34〜41%に減らせました。たとえば硬さでは波長帯を436から150に減らしても、決定係数は0.882から0.862とほぼ保たれました。これに対し、凝集性では0.669から0.470へと大きく低下しました。
研究が示すこと
この研究は、ごま粕由来のたんぱく質で作ったモデル代替肉について、ハイパースペクトル画像と統計モデルを組み合わせることで、硬さ・復元性・咀嚼性といった一部の食感を試料を壊さずに予測できる可能性を示しました。同時に、どの食感でも同じように予測できるわけではなく、対象とする項目によって適用できる範囲が異なることも明らかになりました。
また、少ない波長でも主な食感の予測がおおむね保たれたことは、より簡素な測定装置を考えるうえでの手がかりになると著者らは述べています。なお、今回の結果は単一の原料系から作った80試料に基づくものであり、著者らは、別の製造ロットやより幅広い原料・加工条件で検証しなければ一般化はできないとしています。
原著論文の著者・所属:Hyun-Su Choi(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Jaeeun Lee(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、In-Geun Jung(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Harin Jang(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Dong-Heun Sung(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Pu Reun Yoon(Department of Regional Construction Engineering, College of Industrial Sciences, Kongju National University, Yesan, 32439, Republic of Korea)、Sangbae Park(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Research Institute of Agriculture and Life Sciences, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Ghiseok Kim(Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Research Institute of Agriculture and Life Sciences, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)、Yong-Ro Kim(Center for Food and Bioconvergence, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Convergence Major in Global Smart Farm, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Department of Biosystems Engineering, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea; Research Institute of Agriculture and Life Sciences, Seoul National University, Seoul, 08826, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hyun-Su Choi, Jaeeun Lee, In-Geun Jung, et al. Nondestructive prediction of textural properties of model plant-based meat analogs prepared with sesame seed meal protein isolate using hyperspectral imaging. Food Science and Biotechnology 2026-10-16. DOI: 10.1007/s10068-026-02335-1. 原著ライセンス:CC BY.