この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Jurnal Siti Rufaidah
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
妊娠高血圧腎症(プレエクランプシア)は、妊娠中に高血圧・浮腫・尿タンパクを特徴として現れる状態で、原著は、これが世界的にも母体の病気や死亡に大きく影響する妊娠期の障害であると述べています。母体側では妊婦の年齢が若すぎる場合や高すぎる場合、出産回数の多さ、既往歴などが、胎児側では多胎などが、発症のリスク要因として挙げられています。
著者らは、妊婦が栄養の知識を十分に持たないことが妊娠高血圧腎症や慢性的なエネルギー不足につながりやすいという問題意識から出発しています。そのうえで、インドネシアの各地域で古くから栽培されてきたキャッサバ、いも類、トウモロコシ、サゴといった地元の食材を活かした栄養教育に着目しました。この研究の目的は、トウモロコシといも(ubi)を題材にした栄養教育が、北スラウェシ州トモホンの保健センター(プスケスマス)に通う妊娠第3三半期の妊婦における妊娠高血圧腎症の予防の取り組みに、どのような影響を与えるかを明らかにすることだとされています。
どのように調べたか
研究は量的研究として実施され、前実験(プレ実験)という方法が用いられました。具体的には、一つのグループに対して教育の前(プレテスト)と後(ポストテスト)の2回観察を行う「一群事前事後テストデザイン」です。参加したのは妊娠第3三半期の妊婦で、開会、プレテスト、栄養教育の内容の説明、評価としてのポストテストという流れで進められました。教育で扱われたのは、栄養のある献立、地元の食材(トウモロコシといも)に含まれる栄養、そして妊婦にとって健康的な料理への調理法で、献立については地元の保健センターの栄養チームが説明を担当したと記されています。
データの分析は、回答者の分布を見る単変量分析と、教育前後の変化を調べる二変量分析として、ウィルコクソンの符号付き順位検定が使われました。これは、同じ人の前後の値を比べるときに用いられる統計手法です。
主な報告結果
回答者の特性として、年齢は26〜31歳が14人(47%)で最も多く、学歴は高校・専門高校が13人(43%)、職業は主婦が28人(93%)と報告されています。妊娠週数は28〜35週が20人(67%)、36〜40週が10人(33%)でした。妊娠高血圧腎症については、該当する人が24人(80%)、該当しない人が6人(20%)とされています。
教育前のプレテストでは「十分(cukup)」の区分が17人(57%)で最も多く、「良好」は4人(13%)、「不足」は9人(30%)でした。教育後のポストテストでは「良好」が24人(80%)、「十分」が6人(20%)という結果が示されています。
ウィルコクソンの検定では、ポストテストの値がプレテストより低い方向へ変化した人(負の順位)が24人(80%)、値が上がった人は0人、値が変わらなかった人が6人(20%)と報告されています。Z値は−4.564、p値は0.000で、著者らはこれを有意水準0.05を下回る有意な差としています。原著はこの結果について、与えられた教育が回答者の知識を高めるには至らず、むしろポストテストの点数が教育前より下がる傾向を示したと述べ、その背景として教育の伝え方の効果が十分でなかった可能性、回答者の集中度、内容を理解する時間の制約、情報の受け取りに影響する環境要因などを挙げています。
一方で原著は結論として、地元の食材に基づく栄養教育が妊娠第3三半期の妊婦の妊娠高血圧腎症の予防に有意な影響を与えた(p値=0.000、p<0.05)とし、この教育は妊婦の栄養リテラシーを高めるうえで効果的で、予防の戦略的な手立てになり得ると述べています。また、トウモロコシのお粥といもには複合炭水化物、食物繊維、ビタミンC、ビタミンA、カリウム、各種の抗酸化物質が含まれ、血管の健康を保ち血圧の管理を助ける働きがあるとしています。
この研究が示すこと
この報告が描いているのは、どの地域にもある身近で手に入りやすく安価な食材を入口にして、妊婦に栄養の知識を届けようとする試みです。著者らは、文化や地域の実情に合わせ、実際の食材を例に示す実践的な教育のほうが受け入れられやすいと述べており、地域の保健センターや住民参加型の保健活動(ポシアンドゥ)といった、最も身近な場での予防の取り組みに位置づけています。
同時に、この研究の数値そのものは、教育後に知識の点数が下がる方向の変化を示しており、著者ら自身も伝え方や実施の条件に課題があった可能性に触れています。一つの集団を前後で比べた前実験という設計であることも含め、報告された結果をどう読むかには幅があります。地元の食材を活かした栄養教育という方向性と、それを実際の知識の向上につなげる進め方の両方が、この報告から読み取れる論点だといえます。
著者:Lisiye Manginsihi(Institut Teknologi Sains Dan Kesehatan RS dr.Soepraoen Malang)、Anik Purwati(Institut Teknologi Sains Dan Kesehatan RS dr.Soepraoen Malang)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lisiye Manginsihi, Anik Purwati Pengaruh Edukasi Gizi Berbasis Pangan Lokal (Bubur Jagung dan Ubi) Terhadap Upaya Pencegahan Preeklampsia pada Ibu Hamil TM III di Puskesmas Tomohon Sulawesi Utara. Jurnal Siti Rufaidah 2026-08-31. DOI: 10.57214/jasira.v4i3.388. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。