この研究は、ブラジル、フランスの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Research International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
アマニ油は多価不飽和脂肪酸を多く含みますが、その一方で酸素と反応して劣化しやすい(酸化しやすい)性質があります。そこで油を微小な粒子の中に閉じ込める「マイクロカプセル化」という方法が使われますが、包む材料によって、酸化のしにくさや、食べたあとで油が消化されるかどうかが変わり得ます。
研究チームは、キャロブ(カロブ)の種子から得たタンパク質を使い、アマニ油を包んだ粉末粒子をつくったうえで、その酸化に対する安定性と、試験管内での消化のされやすさ(in vitro消化性)を評価しました。
どのように調べたか
まず、キャロブのタンパク質濃縮物(CPC)と、それを酵素で分解したもの(CPH)を、それぞれ乳化剤(水と油を混ざった状態に保つ材料)として用いてエマルション(乳濁液)を調製しました。さらに、乳化剤の層が一重のもの(単層系、SE)と、ペクチンを加えて層を重ねたもの(多層系、ME)の二種類を用意し、合わせて四つの組み合わせを比較しました。
これらのエマルションを噴霧乾燥(細かい霧にして熱風で乾かし粉末にする方法)で微粒子にし、37℃で28日間置きながら酸化の進み方を追跡しました。指標としては、酸素の消費量、共役ジエン、チオバルビツール酸反応性物質(TBARS)に加えて、トリプトファン蛍光の消光を測ることでタンパク質側の変化も調べています。共役ジエンは酸化の初期にできる生成物、TBARSはその後にできる二次的な生成物の目安です。
消化については、粉末を水に戻したエマルションを用いて試験管内の消化を再現し、胃と腸の段階でそれぞれ油がどの程度分解されるか(リポリシスの程度)を測定しました。
報告された主な結果
著者らによると、CPH(酵素分解物)を用いた微粒子は、CPC(未分解の濃縮物)を用いた試料と比べて、培養開始から最初の14日間の酸化が少なかったと報告されています。
28日後の時点では、CPHとペクチンを組み合わせた多層系(CPHME)が四つの系の中で最も酸化に対して安定でした。粒子表面の油、全体の油、内部に包まれた油のいずれについても、一次および二次の脂質酸化生成物が最も少なく、トリプトファン蛍光の消光も最小だったことが根拠として示されています。
一方、試験管内消化では、四つの系すべてで胃での分解度が16〜24%、腸での分解度が59〜66%の範囲に収まりました。多層エマルションは胃での分解をわずかに促進したものの、腸での分解のパターンは配合の違いによらず比較的似ていたとされています。つまりCPHMEは、包んだ油の酸化を抑えつつ、脂質の消化を大きく妨げることはなかったという結果です。
この研究が示すこと
この報告が示しているのは、「守る」と「消化される」という、しばしば両立しにくい二つの性質を同時に満たす組み合わせが見つかったという点です。酸化を防ぐために油を頑丈に包み込むと、体内で分解されにくくなる懸念がありますが、キャロブ種子のタンパク質分解物とペクチンによる多層構造では、消化のされ方をほぼ保ったまま酸化が抑えられていました。
著者らは、この結果からキャロブのタンパク質分解物が、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む機能性食品の開発に向けた植物由来の乳化剤として有望であると位置づけています。
著者:Pedro Renann Lopes de França(Departamento de Engenharia e Tecnologia de Alimentos , Faculdade de Engenharia de Alimentos , Universidade Estadual de Campinas (UNICAMP) , Rua Monteiro Lobato 80 , 13083-862 , Campinas , São Paulo , Brasil)、Lucie Ribourg-Birault(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)、Sophie Laurent(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)、Alice Kermarrec(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)、Rosiane Lopes Cunha(Departamento de Engenharia e Tecnologia de Alimentos, Faculdade de Engenharia de Alimentos, Universidade Estadual de Campinas (UNICAMP), Rua Monteiro Lobato 80, 13083-862, Campinas, São Paulo, Brazil)、Sébastien Marze(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)、Louise Emy Kurozawa(Departamento de Engenharia e Tecnologia de Alimentos, Faculdade de Engenharia de Alimentos, Universidade Estadual de Campinas (UNICAMP), Rua Monteiro Lobato 80, 13083-862, Campinas, São Paulo, Brazil)、Anne Meynier(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)、Claire Berton-Carabin(INRAE, UR BIA, F-44300, Nantes, France)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Pedro Renann Lopes de França, Lucie Ribourg-Birault, Sophie Laurent, et al. Carob seed protein hydrolysates combined with pectin protect microencapsulated linseed oil against oxidative degradation while maintaining in vitro lipolysis. Food Research International 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.foodres.2026.120880. 原著ライセンス:CC BY.