日本関連:この研究は海外機関を中心とする国際共同研究で、日本の研究機関に所属する共著者が参加しています。参加国はインドネシア、日本です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

果実の品質低下を抑える膜を目指して

研究チームは、熱帯果実のサラク(スネークフルーツ)の保存中の品質低下を抑えるため、バナナの皮由来のペクチンを使ったコーティングを開発しました。サラクは収穫後、水分の減少や褐変、カビによる腐敗などで品質が低下しやすい果実です。研究では、コーティングの性質とカビの生育を抑える働き、実際の果実に塗ったときの変化を調べました。

材料には、膜の土台となるペクチンに加え、ジャワウコンの精油と、セルロースを微細な結晶にしたセルロースナノクリスタルを用いました。この微粒子で油滴を取り囲み、水中に分散させる仕組みが「ピッカリングエマルション」です。研究チームは、この方式のコーティングを、ペクチンだけのものや、界面活性剤のTween 80で精油を分散させたものと比較しました。

培養試験ではカビの生育を強く抑制

研究チームは、精油の分散状態を目視で調べ、セルロースナノクリスタルの濃度を0.05%とする配合を選びました。完成したコーティング液の電気的な性質や、乾燥させた膜の構造も調べ、成分同士の相互作用と、分散状態の安定性を支える特徴が認められたと報告しています。

カビを培養する試験では、セルロースナノクリスタルと精油を含むコーティングが、比較した配合の中で最も強く生育を抑えました。7日目の生育抑制率は、灰色かび病菌のボトリティス・シネレアで87.37%、ペニシリウム・ディジタタムで72.53%でした。これは培養条件下での結果であり、果実上の腐敗が同じ割合で減ったことを示す数値ではありません。

果皮の黒ずみは遅れたが、重量減少には差がなかった

果実への試験では、研究チームは選んだコーティング液にサラクの先端部分を浸して乾燥させ、無処理の果実と保存中の変化を比較しました。コーティングした果実では果皮の黒ずみが遅れ、7日目には処理した先端部の明るさが無処理より有意に高く保たれていました。

一方、果実の重量減少と、糖などの水に溶ける成分の量には、有意な差が認められませんでした。今回の処理は果実全体ではなく先端部を覆うものでした。著者らの報告は、この配合が培養試験での抗カビ作用と、果実の一部に塗った際の果皮の色の保持に特徴を持つことを示しています。

原著論文の著者・所属:Ata Aditya Wardana(Department of Food Technology, Faculty of Engineering, Bina Nusantara University, Jakarta, Indonesia)、Aisya Zahra Zhafira(Department of Food Technology, Faculty of Engineering, Bina Nusantara University, Jakarta, Indonesia)、Ananda Caesarini Aulia(Department of Food Technology, Faculty of Engineering, Bina Nusantara University, Jakarta, Indonesia)、R. Haryo Bimo Setiarto(Research Center for Applied Microbiology, National Research and Innovation Agency (BRIN))、Retno Tri Astuti(Department of Fisheries Product Technology, Faculty of Fisheries and Marine Science, Universitas Brawijaya)、Xirui Yan(Laboratory of Postharvest Science, Faculty of Agriculture, Kyushu University)、Fumina Tanaka(Laboratory of Postharvest Science, Faculty of Agriculture, Kyushu University)、Fumihiko Tanaka(Laboratory of Postharvest Science, Faculty of Agriculture, Kyushu University)、Laras Putri Wigati(School of Life Sciences and Technology, Bandung Institute of Technology)、Jhauharotul Muchlisyiyah(Bioscience Innovation Centre, Universitas Brawijaya; Department of Food Science and Biotechnology, Universitas Brawijaya)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ata Aditya Wardana, Aisya Zahra Zhafira, Ananda Caesarini Aulia, et al. Development of fresh fruit coating based on banana peel pectin with Pickering emulsion of cellulose nanocrystals/Javanese turmeric essential oil for snake fruit preservation. Frontiers in Nutrition 2026-11-04. DOI: 10.3389/fnut.2026.1982447. 原著ライセンス:CC BY.