著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:South African Journal of Chemical Engineering

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チョコレートの原料となるカカオ豆は、カカオポッドと呼ばれる大きな果実の中にあります。豆を取り出した後に残る果皮(カカオポッドハスク)は大量に発生する副産物です。これを価値の高い素材に変えることは、資源を循環させる経済づくりにつながると考えられています。

その素材の候補の一つがペクチンです。ペクチンは植物の細胞壁に含まれる多糖類で、食品のゲル化剤などに使われます。なかでも低メトキシル(LM)ペクチンと呼ばれるタイプは、分子中のメトキシル基(メチルエステル)の割合が低いものです。著者らによると、品質の高いLMペクチンを環境に配慮した方法で回収するプロセスは、まだ限られています。

超音波を使ってペクチンを抽出する方法(超音波アシスト抽出)はこれまでにも検討されてきました。しかし、果実などに含まれる有機酸であるタルタル酸(酒石酸)と、プローブ型の超音波装置を常温条件で組み合わせ、カカオの果皮からペクチンを回収した報告はなかったといいます。そこで研究チームは、この組み合わせによる抽出工程を開発して条件を最適化することを目指しました。さらに、得られたペクチンの性質を調べ、フィルム(薄膜)をつくる性能も評価しました。

何を調べたか

研究チームは、抽出液のpH、超音波の振幅(出力の強さの指標)、抽出時間の三つを条件として変えました。そして応答曲面法を用いて、ペクチンが最も多く得られる組み合わせを探しました。応答曲面法は、複数の条件と結果の関係を統計モデルで表し、最適な条件を見積もる手法です。

得られたペクチンについては、エステル化度、メトキシル含量、ペクチンの主成分であるガラクツロン酸の含量、色を測定しました。エステル化度とは、ペクチンの構成単位のうちエステル化されているものの割合です。あわせて、赤外分光(FTIR)で化学構造を、熱分析(TGA–DSC)で熱に対する安定性を調べました。電子顕微鏡(SEM)では、超音波処理後の植物組織の様子を観察しました。最後に、このペクチンからフィルムをつくり、市販のLMペクチンでつくったフィルムと比べました。

主な結果

最適条件は、pH2.1、振幅48%、抽出時間22分と報告されています。この条件でのペクチンの収率は14.41%でした。この値はモデルによる予測値とよく一致し、モデルが妥当であることが確認されたとしています。

得られたペクチンは低メトキシルの特徴を示しました。エステル化度は25.07%、メトキシル含量は2.07%、ガラクツロン酸含量は85.66%です。明るさを表す指標L*は84.00と高く、タルタル酸を用いた抽出によって色の明るいペクチンが得られたことを示すと著者らは述べています。

FTIRと熱分析では、ペクチン特有の構造と熱安定性が確認されました。電子顕微鏡による観察では、超音波処理によって植物の細胞壁が大きく壊れている様子が見られました。

フィルムの評価では、回収したペクチンは途切れがなく均質なフィルムを形成しました。市販のLMペクチンと比べると柔軟性は高い一方、引っ張り強さは低いままでした。

研究が示すこと

著者らは、常温でタルタル酸と超音波を組み合わせる抽出法が、カカオの果皮という廃棄物をLMペクチンに変える穏やかな方法であり、より環境に優しい可能性のある経路になると位置づけています。また、この工程は廃棄物の削減や高温処理への依存の低減につながり、植物由来の包装材への応用を後押しするものだとしています。フィルムは柔らかさの点では市販品を上回った一方、強度の面では市販品に及ばないことも報告されています。

原著論文の著者・所属:Vivi Nurhadianty(Doctoral Program of Chemical Engineering, Institut Teknologi Bandung 40132, Indonesia)、Tjandra Setiadi(Department of Chemical Engineering, Institut Teknologi Bandung 40132, Indonesia)、Lienda Aliwarga Handojo(Department of Chemical Engineering, Institut Teknologi Bandung 40132, Indonesia)、I Dewa Gede Arsa Putrawan(Doctoral Program of Chemical Engineering, Institut Teknologi Bandung 40132, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vivi Nurhadianty, Tjandra Setiadi, Lienda Aliwarga Handojo, et al. Ambient ultrasound-assisted extraction of pectin from cocoa pod husk using tartaric acid and evaluation of its film-forming properties. South African Journal of Chemical Engineering 2026-09-04. DOI: 10.1016/j.sajce.2026.100990. 原著ライセンス:CC BY.