著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:肉らしい構造を植物たんぱく質で組み立てる

環境や動物福祉、健康への関心から、植物由来の代替肉に注目が集まっています。消費者に受け入れられるには、見た目や食感、加熱したときの変化まで肉に近づける必要があります。従来よく使われる押出成形は高温・高圧で材料を押し出す方法で、牛肉の霜降りのような外観や部位ごとの多様な食感を再現するには限界があると著者らは指摘しています。

そこで研究チームが注目したのが、食品用3Dプリンターです。材料を一層ずつ積み重ねるため、内部の構造や材料の配置を設計どおりに作り込めます。ただし、そのためには細いノズルから滑らかに押し出せ、積んだ後は形を保てる「フードインク」が必要です。

代替肉によく使われる大豆たんぱく質はゲルを作る力が強い一方、粘りと弾力が強すぎて、インクに使える濃度に制限があります。米たんぱく質は溶けにくく、ゲルになりにくいという弱点があります。研究チームは、米たんぱく質を加工して大豆たんぱく質と組み合わせれば、印刷しやすさと仕上がりの質を両立できるのではないかと考えました。

具体的には、米たんぱく質に糖の一種であるキシロースを化学的に結合させる「糖化(グリコシル化)」を、超音波を当てながら行いました。糖化はメイラード反応(食品を加熱したときに色や香りが生まれる反応)の初期段階にあたります。この処理で米たんぱく質の構造と性質を変え、筋肉に似た構造物(研究では「人工筋肉」と呼んでいます)を3Dプリントで作ることが研究の目的です。

何を調べたか

研究チームは、米たんぱく質とキシロースの混合液に超音波を0分、5分、30分、50分当て、その後95℃で1時間加熱して結合体を作りました。まず、たんぱく質に糖がどれだけ結びついたか(グラフト化度)と、褐色の着色の程度を測りました。

次に、大豆たんぱく質だけのインク、大豆たんぱく質と未処理の米たんぱく質を混ぜたインク、さらに各条件の結合体を加えたインクを用意しました。いずれも加熱で色が変わる肉を模すため、ビートなどを含む赤い色素を加えています。各インクの流れやすさや形を保つ力を測定し、その性質に合わせて押し出し量と印刷速度を統計的手法で調整しました。そのうえで縦40ミリ、横30ミリ、高さ15ミリの直方体を印刷しました。

最後に、印刷物を加熱調理し、外観、色、たんぱく質の分子の大きさや立体構造などを調べました。比較対象には、調理した牛サーロインステーキを用いています。

主な結果

超音波を当てた結合体は、当てなかったものに比べてグラフト化度が2.97倍以上高くなりました。褐色の度合いも超音波処理で高まりました。著者らは、超音波の衝撃で米たんぱく質の球状の構造が部分的にほどけ、糖と反応できる部分が表に出たためと考えています。

すべてのインクは、力を加えると粘りが下がって押し出しやすくなる性質を示しました。同時に、弾性が粘性を上回る、形を保てる状態でもありました。インクの粘りの強さと、流れ出すのに必要な力は、大豆たんぱく質のみのインクで最も高く、未処理の米たんぱく質を混ぜたインクで最も低くなりました。結合体を加えたインクでは、超音波の処理時間が長くなるほどこれらの値が上がる傾向がありました。ただし50分処理では低下しました。適度な超音波処理はインクの性質を整えますが、過剰な処理は構造の安定性を損なう可能性があると著者らは述べています。

性質に合わせて条件を調整した結果、どのインクでも人工筋肉を印刷できました。設計寸法とのずれは0.03〜1.78ミリにとどまりました。調理後、牛肉は大きく縮んで変形しましたが、人工筋肉はわずかな縮みで印刷した形を保ちました。

色にも違いが表れました。大豆たんぱく質のみのインクと、未処理の米たんぱく質を混ぜたインクでは、調理後に赤みが減り、明るさと黄色みが増しました。一方、結合体を含む人工筋肉では明るさが大きく下がり、著者らはこれをメイラード反応によるものとしています。メイラード反応で生じる物質の量は牛肉が最も多かったものの、米たんぱく質や結合体を加えると人工筋肉でも増え、超音波処理が長いほど多くなりました。

分子レベルの分析では、超音波処理をした試料に分子量の大きな成分を示す帯が現れました。たんぱく質の立体構造の割合も、処理時間に応じて変化しました。また、大豆と米のたんぱく質を組み合わせた試料は、大豆のみより全体としてバランスのとれたアミノ酸組成を示しました。

研究が示すこと

この研究は、米たんぱく質とキシロースの糖化を超音波で補助すると、たんぱく質の構造が変わり、それがインクの性質や印刷後・調理後の色や形に反映されることを報告しています。また、超音波の効果は処理時間が長いほど高まるとは限らず、適度な範囲があることも示されました。扱いにくいとされてきた米たんぱく質を加工して大豆たんぱく質と組み合わせることで、肉に似た構造を3Dプリントで設計して作る道筋が示された研究といえます。

原著論文の著者・所属:Jung Soo Kim(School of Food Science and Biotechnology, Kyungpook National University, 80 Daehak-ro, Daegu 41566, Republic of Korea; 3D Food Printing Technology Research Institute, FOODPRO CO., Ltd., 14 Bokhyeon-ro, Daegu 41530, Republic of Korea; School of Food Science and Biotechnology, Kyungpook National University, 80 Daehak-ro, Daegu 41566, Republic of Korea; 3D Food Printing Technology Research Institute, FOODPRO CO., Ltd., 14 Bokhyeon-ro, Daegu 41530, Republic of Korea; Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, 245 Nongsaengmyeong-ro, Wanju-gun 55365, Republic of Korea)、Jiyoon Kim(School of Food Science and Biotechnology, Kyungpook National University, 80 Daehak-ro, Daegu 41566, Republic of Korea; 3D Food Printing Technology Research Institute, FOODPRO CO., Ltd., 14 Bokhyeon-ro, Daegu 41530, Republic of Korea; School of Food Science and Biotechnology, Kyungpook National University, 80 Daehak-ro, Daegu 41566, Republic of Korea; 3D Food Printing Technology Research Institute, FOODPRO CO., Ltd., 14 Bokhyeon-ro, Daegu 41530, Republic of Korea; Smart Food Manufacturing Research Group, Korea Food Research Institute, 245 Nongsaengmyeong-ro, Wanju-gun 55365, Republic of Korea)、Kwang-Deog Moon(School of Food Science and Biotechnology, Kyungpook National University, 80 Daehak-ro, Daegu 41566, Republic of Korea. Electronic address: [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jung Soo Kim, Jiyoon Kim, Kwang-Deog Moon. Development of 3D-printed artificial muscles for meat analogs: structural and functional changes modulated by ultrasound-assisted glycosylation of rice protein with d-xylose. Ultrasonics Sonochemistry 2026-08-02. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.107947. 原著ライセンス:CC BY.