著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Journal of Microbiology and Biotechnology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:配合比で性質を設計できるか

油の粒をゲル状の網目の中に閉じ込めた「エマルションゲル」は、液体の油を半固形に変え、油に溶ける成分を運ぶ素材として食品分野で注目されています。研究チームは、植物由来の乳化剤である大豆分離たんぱく質(SPI)と、増粘やゲル化に使われる多糖類のジェランガム(GG)に注目しました。

両者を加熱すると、たんぱく質と糖が化学的に結びつく「メイラード反応」が起こり、複合体(コンジュゲート)ができます。著者らは、SPIとGGの重さの比率を変えると、複合体の性質と、それを使ったエマルションゲルの性質がどう変わるかを調べました。さらに、食品用3Dプリントへの適性など、用途ごとに最適な比率が異なるかどうかも検討しました。

何を調べたか

SPIとGGを2:1、1:1、1:1.5、1:2の4通りの比率で水に分散させ、90℃で60分加熱して複合体を作りました。比較対象として、SPIだけのものも同じ条件で用意しています。

研究チームはまず、反応の進み具合や、水への溶けやすさ、油となじみやすい部分の露出度合いを示す「表面疎水性」を測定しました。次に、複合体とひまわり油(30%)からエマルションゲルを作りました。そのうえで、油滴の大きさ、油滴表面の電気的な性質、乳化の能力と安定性、冷蔵保存中の見た目の変化を評価しました。

あわせて、ノズルから押し出して積み重ねる3Dプリントを想定し、流れやすさや変形への強さを測定しました。押し出した後に構造がどれだけ戻るかも調べています。縦横15mm・高さ10mmの直方体を実際に印刷し、設計とのずれも測りました。このほか、油に溶ける色素成分β-カロテンを閉じ込める素材としての評価も行っています。

主な結果:GGが多いほど良いわけではない

GGの割合を増やすと反応は進みました。たんぱく質の反応部位が糖と結びついた割合を示す「糖化度」は、2:1で約16%、1:2では約50%に達しました。水への溶けやすさは逆の傾向でした。SPI単独の約30%に対し、2:1では約97%まで高まりましたが、GGを増やすにつれて下がり、1:2では約31%でした。表面疎水性はGGが多いほど高くなりました。

エマルションゲルでは、1:1の配合で油滴が最も小さく、そろって分散していました。乳化能力と乳化安定性の指標もこの配合が最も高い値を示しました。GGをそれ以上増やすと、これらの性質はむしろ低下しました。論文はこの結果を、乳化性能が溶けやすさや表面疎水性のどちらか一方だけでは決まらず、両者のバランスを反映していると解釈しています。保存試験では、SPI単独のゲルは水が分離して形を保てなくなりました。一方、複合体を使ったゲルはすべて、4℃で30日間、容器を逆さにしても形を保ちました。

3Dプリントに関しては、複合体を使ったゲルはいずれも力を加えると流れやすくなり、押し出し後は70%以上の粘度回復を示しました。ゲルの硬さはGGが多いほど増しましたが、壊れ始めるまでに耐えられる変形の大きさは1:1.5が最も大きくなりました。崩れ始める力(降伏応力)も、1:2では大きく下がりました。実際の印刷では、2:1のゲルは横に広がって幅・奥行きが約32mmになり、高さも約7.4mmに低下しました。1:1.5は幅・奥行きが設計値に最も近く(約16mm)、1:2は高さが最も設計値に近い結果でした。

この研究が示すこと

著者らの報告からは、SPIとGGの比率がこのゲルの性質を左右する重要な設計要素であることがうかがえます。その影響はGGの量に比例するものではありませんでした。油滴を細かく安定に保つ点では1:1が優れ、印刷後の形の保持では1:1.5が釣り合いのよい性質を示しました。目的とする用途によって適した配合比が異なりうることを、同じ一連の試料で示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Eui-Jung Han(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea)、Sangeun Park(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea)、Jiyoung Park(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea)、Jae-Hee Lee(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea)、Yourim Oh(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea; SuFAB Inc., 123 Digital-ro 26-gil, Guro District, Seoul 04790, Republic of Korea)、Jin-Kyu Rhee(Department of Food Science and Biotechnology, Ewha Womans University, Seoul 03760, Republic of Korea; SuFAB Inc., 123 Digital-ro 26-gil, Guro District, Seoul 04790, Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eui-Jung Han, Sangeun Park, Jiyoung Park, et al. Formulation of Emulsion Gels Stabilized by Soy Protein Isolate and Gellan Gum Conjugates for 3D Printing and β-Carotene Encapsulation Applications. Journal of Microbiology and Biotechnology 2026-10-08. DOI: 10.4014/jmb.2607.07035. 原著ライセンス:CC BY.