著者の所属・活動拠点の国は、韓国です。

掲載誌:Animal Bioscience

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

牛肉の軟らかさは、食べたときの満足感や購入意欲を大きく左右します。一方で、等級の低い牛肉は筋肉内の脂肪が少なく、硬くてジューシーさに欠けがちです。そのため、こうした肉を軟らかくする方法は食肉加工の現場で重要な課題となっています。

肉を軟らかくする方法の一つに、植物由来のたんぱく質分解酵素の利用があります。イチジクにはフィシン、緑色のキウイフルーツにはアクチニジンという酵素が含まれ、どちらも筋肉のたんぱく質を分解する働きが知られています。また、強い超音波を当てて筋肉の構造を物理的に変える方法も、熱を使わない軟化技術として注目されています。ただし、酵素の働きが強すぎると軟らかくなりすぎ、食感が損なわれるおそれもあります。

研究チームは、韓国の低等級(品質等級3)ホルスタイン牛肉を対象に、酵素の活性を同じ強さにそろえたイチジク抽出液とキウイフルーツ抽出液で効果に違いがあるか、さらに超音波処理を加えると抽出液だけの場合より効果が上乗せされるかを調べました。

何をどう調べたか

研究チームは、イチジクとキウイフルーツを凍結乾燥して粉末にし、水に溶かして抽出液を作りました。牛乳たんぱく質の一種であるカゼインを分解する力で酵素活性を測り、両方の抽出液を同じ活性(1ミリリットル当たり10単位)に薄めて使いました。

試料には、3頭分のホルスタイン牛の胸最長筋(ロースの部位にあたる筋肉)を用いました。肉片に、水だけ、イチジク抽出液、キウイフルーツ抽出液のいずれかを、肉の重さの10%分、針で注入しました。さらにそれぞれを、超音波(19.8キロヘルツ、600ワット、計30分)を当てるグループと当てないグループに分け、合計6通りの処理を設けました。その後、肉を4℃で14日間冷蔵保存しました。

測定項目には、加熱した肉を刃で切断するのに必要な力(せん断力。値が小さいほど軟らかい)、筋肉の線維がどれだけ細かく崩れたかを示す指標、たんぱく質が分解されてできた小さなペプチドの量などが含まれます。さらに、脂質の酸化の初期段階を示す過酸化物価、保存中や加熱時に失われる水分量、電子顕微鏡で見た筋肉の表面構造も調べました。

主な結果

イチジク抽出液とキウイフルーツ抽出液を注入した肉は、水だけを注入した肉に比べて、筋線維の崩れを示す指標と分解ペプチドの量が多く、せん断力は小さくなりました。抽出液がたんぱく質の分解を進め、肉を軟らかくしたことを示す結果です。せん断力については、イチジクとキウイフルーツの間で差はみられませんでした。

超音波処理を加えた場合、抽出液を注入した肉では保存0日目と7日目に、超音波を当てない肉よりせん断力がさらに小さくなりました。ただし、この上乗せ効果は14日目には認められませんでした。著者らは、超音波による軟化の追加効果は保存期間によって異なると結論づけています。

このほか、抽出液を注入した肉は水だけの肉に比べ、保存7日目と14日目の過酸化物価が低く、保存中に包装内へ出る水分も少なくなりました。一方、超音波処理をした肉は、処理しなかった肉より過酸化物価が高くなる傾向がありました。電子顕微鏡では、抽出液を注入した肉で筋線維の分離や表面の乱れが観察され、超音波処理では線維の間のすき間が広がる様子がみられました。

研究が示すこと

この研究は、酵素の強さをそろえたイチジクとキウイフルーツの抽出液が、どちらも低等級牛肉のたんぱく質分解を進め、同程度に肉を軟らかくすることを報告しています。超音波を組み合わせると保存初期にはさらに軟らかくなる一方、脂質の酸化を示す値は高くなる傾向がありました。

なお著者らは、食べたときの評価(官能評価)を行っていないこと、14日目には非常に小さなせん断力が観察され、軟らかくなりすぎた可能性を否定できないことを指摘しています。そのうえで、実用化の前には酵素の濃度や注入量、超音波の条件をさらに最適化する必要があると述べています。果物由来の酵素と超音波を組み合わせて低等級牛肉の食感を変える際に、効果と注意点の両方を示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Haeun Kim(Chonnam National University, Gwangju, Korea.)、Min Jae Kim(Department of Animal Science , Chonnam National University , Gwangju 61186 , Republic of Korea)、Yu Jin Nam(Department of Animal Science , Chonnam National University , Gwangju 61186 , Republic of Korea)、Jun Ho Park(Chonnam National University, Gwangju, Korea.)、Koo Bok Chin(Department of Animal Science , Chonnam National University , Gwangju 61186 , Republic of Korea)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haeun Kim, Min Jae Kim, Yu Jin Nam, et al. Effects of fig and kiwifruit extract injection combined with ultrasound treatment on proteolysis and tenderness of low-grade Holstein beef. Animal Bioscience 2026-11-02. DOI: 10.5713/ab.260552. 原著ライセンス:CC BY.