著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:International Journal of Food Properties

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

果実を切らずに糖度を知るために

キウイフルーツの甘さや熟し具合、食べごろの品質を判断する重要な目安に、果汁に溶けている糖などの成分量を示す「可溶性固形分含量(糖度の指標として用いられ、単位はBrix)」があります。従来は果実を切って果汁を搾り、屈折計で測る方法が一般的でした。しかしこの方法では測った果実が売り物にならず、多数の果実を素早く検査する用途には向きません。

光を当てて果実の性質を推定する分光法による研究も進んでいます。研究チームによると、既存の多くの手法は果実全体の平均的な光の情報(平均スペクトル)を主に使っており、画像に含まれる「果実のどの場所でどんな光が返ってきたか」という空間的な情報はあまり活用されていませんでした。そこで研究チームは、キウイフルーツの品種「徐香(Xuxiang)」を対象に、ハイパースペクトル画像と深層学習を組み合わせ、果実を傷つけずに可溶性固形分含量を予測する仕組みの開発に取り組みました。

400個の果実の画像から特徴を学ぶ

研究チームは成熟した果実400個を集め、900〜1700ナノメートルの近赤外の範囲でハイパースペクトル画像を撮影しました。ハイパースペクトル画像とは、画像の各点について多数の波長ごとの光の強さを記録したもので、通常のカラー写真よりはるかに細かく光の情報を持っています。

撮影した画像は補正したうえで果実の部分を切り出し、主成分分析という手法で情報を圧縮しました。主成分分析は、多数の波長の情報から重要な傾向をまとめた少数の成分を取り出す方法です。こうして要約した画像を、研究チームが開発した軽量な畳み込みニューラルネットワークに入力しました。このネットワークは、異なる大きさの範囲から特徴を捉える「マルチスケール」の仕組みと、重要な情報のチャンネルに重みを置く「チャンネルアテンション」の仕組みを備え、画像の空間的な情報と波長の情報をあわせて取り出すよう設計されています。

研究チームはさらに、残す主成分の数を変えたときに予測性能がどう変わるかを調べ、提案したネットワークを部分的最小二乗回帰、サポートベクター回帰といった従来の統計・機械学習手法や、ResNet50、VGGNetという代表的な深層学習モデルと比較しました。

主成分15個で高い予測精度

抄録によると、残す主成分の数は予測性能に影響し、15個の主成分を残したときに、必要な情報の保持と無駄な重複の削減とのバランスがよい結果となりました。

この設定で、提案したネットワークはテストデータに対して決定係数0.9714±0.0054を示しました。決定係数は予測値が実測値の変動をどれだけ説明できているかを表し、1に近いほどよく一致していることを意味します。予測誤差の大きさを示す二乗平均平方根誤差は0.3305±0.0682 Brix、予測の実用的な信頼性の目安とされる残差予測偏差は5.9695±0.5221と報告されています。

画像の空間情報を生かした品質評価の可能性

研究チームは、これらの結果から、ハイパースペクトル画像とマルチスケール・チャンネルアテンションを用いた学習の組み合わせが、キウイフルーツの品質を素早く、果実を傷つけずに評価する手法として可能性を持つことを示したとしています。平均的な光の情報だけでなく、画像に含まれる場所ごとの情報も取り込んで糖度を推定するという考え方を、具体的なモデルと数値で示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Wei Geng(Universities of Shaanxi Province; Xijing University)、Zuliang Wang(Universities of Shaanxi Province; Xijing University)、Ting Zhang(Universities of Shaanxi Province; Xijing University)、Yanan Xue(Universities of Shaanxi Province; Xijing University)、Yaguo Wang(Research and Development Center, Shaanxi Bairui Kiwifruit Research Institute Co., Ltd., Co., Ltd., Xi’an, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wei Geng, Zuliang Wang, Ting Zhang, et al. Non-destructive prediction of soluble solids content in kiwifruit using hyperspectral imaging and a multi-scale channel-attention network. International Journal of Food Properties 2026-10-29. DOI: 10.1080/10942912.2026.2752334. 原著ライセンス:CC BY.