著者の所属・活動拠点の国は、インド、イタリア、フランスです。
掲載誌:Food Chemistry X
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、植物に含まれる成分を生肉の天然保存料として使えるかを探るため、2種類の植物抽出液の保存効果を調べました。対象は冷蔵中の鶏のフィレ肉(チキンフィレ)で、抽出液がその品質にどのような影響を与えるかを評価しています。
使われた植物は、ウルシ科のヌルデ(学名 Rhus chinensis Mill.)の果実と、サンショウ属の植物(学名 Zanthoxylum acanthopodium DC.)の葉です。論文の抄録では、前者の果実抽出液を「SF」、後者の葉の抽出液を「PAL」と略しています。
何を調べたか
研究チームは、それぞれの植物から作った10%(重量/体積)の浸漬液に鶏フィレ肉を浸し、4±1℃で9日間冷蔵保存しました。比較のため、抽出液で処理しない鶏肉も用意しました。
抽出液そのものについては、植物に含まれる抗酸化成分であるフェノール類の総量とフラボノイド類の量を測定しました。あわせて、DPPHやABTSと呼ばれる試薬を使い、物質を酸化させる不安定な分子(ラジカル)を消去する働きも調べています。
保存中の鶏肉については、pH、肉が水分を保つ力(保水性)、脂質の酸化の程度を示す指標(TBARS)、色、微生物の面での安全性、そして人の感覚で品質を判定する官能評価を追跡しました。さらに、これら多数の項目をまとめて統計的に比較する多変量解析も行いました。
主な結果
抽出液の分析では、サンショウ属の葉の抽出液(PAL)のほうがフェノール類の総量が多かった(148.9 μg GAE/mg)と報告されています。一方、ヌルデ果実の抽出液(SF)はフラボノイドが多く(62.4 μg GAE/mg)、ラジカルを消去する働きもより強かったとされています。
鶏肉の保存試験では、2種類の抽出液がそれぞれ異なる保存効果の特徴を示しました。ヌルデ果実の抽出液は、強いラジカル消去作用とともに脂質の酸化と微生物の増殖をよりよく抑えた一方、サンショウ属の葉の抽出液は官能評価で比較的好ましい反応を得たと報告されています。
多変量解析では、どちらの抽出液で処理した鶏肉も、未処理の鶏肉とははっきり区別されました。著者らは、これは酸化、微生物、保水性などの加工上の性質、官能評価に関わる項目がまとまって変化したことによるもので、抽出液の保存効果を示すものだと述べています。
研究が示すこと
著者らは、2つの抽出液で保存効果に違いが出た背景として、それぞれの抽出液がもつ化学的な特徴と、鶏の筋肉という複雑な組織の中での相互作用を挙げています。そのうえで、今回の結果は、これらの植物抽出液を生肉の天然保存料として用いることを支える根拠になると結論づけています。
脂質の酸化や微生物の抑制にすぐれた抽出液と、官能評価で比較的好ましい反応を得た抽出液があったという結果は、植物の種類によって保存効果の現れ方が異なることを示しています。
原著論文の著者・所属:Sushmita Moirangthem(Department of Livestock Products Technology, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, Kolkata 700 037, India)、Gopal Patra(Department of Livestock Products Technology, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, Kolkata 700 037, India)、Subhasish Biswas(Department of Livestock Products Technology, West Bengal University of Animal and Fishery Sciences, Kolkata 700 037, India)、Laura Alessandroni(School of Pharmacy, Chemistry Interdisciplinary Project (CHIP), University of Camerino, Via Madonna delle Carceri, 62032 Camerino, Italy)、Santanu Nath(Eastern Regional Station, ICAR-Indian Veterinary Research Institute, 37 Belgachia Road, Kolkata 700 037, India)、Arun K. Verma(Goat Products Technology Laboratory, ICAR-CIRG, Makhdoom, Mathura-281 122, India)、Pramod Kumar Nanda(Eastern Regional Station, ICAR-Indian Veterinary Research Institute, 37 Belgachia Road, Kolkata 700 037, India)、Arun K. Das(Eastern Regional Station, ICAR-Indian Veterinary Research Institute, 37 Belgachia Road, Kolkata 700 037, India)、Mohammed Gagaoua(PEGASE, INRAE, Institut Agro, 35590 Saint-Gilles, France)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sushmita Moirangthem, Gopal Patra, Subhasish Biswas, et al. Effects of sumac fruit and prickly ash leaf extract on the intrinsic technological, sensory and safety quality properties of chicken fillets. Food Chemistry X 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104691. 原著ライセンス:CC BY.