この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Amerta Nutrition

ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

インドネシアでは肥満が増え続けており、肥満は心血管疾患などの慢性疾患の主要な危険因子とされています。血圧・血糖・脂質の異常と肥満が重なった状態は「代謝性症候群(メタボリックシンドローム)」と呼ばれ、世界的に増加していると論文は説明しています。

著者らは、こうした代謝の問題に食事がどう関わるかを調べるため、炭水化物の「質」を表す指標と、食事全体の炎症のしやすさを表す指標に注目しました。血糖指数(グリセミック・インデックス、GI)は食品を食べたときの血糖の上がりやすさを示す値、血糖負荷(グリセミック・ロード、GL)はそれに食べた量(炭水化物量)を掛け合わせた値です。食事炎症指数(DII)は、食事に含まれる成分の炎症を促す性質と抑える性質をもとに算出され、値がプラスなら炎症を促しやすい食事、マイナスなら炎症を抑えやすい食事と判定されます。

研究チームによれば、インドネシアの若年層でこうした指標と代謝性症候群の関係を調べた研究はほとんどありません。そこで本研究は、肥満のある若い女性において、GI・GL・DIIが代謝性症候群の有無とどう関連するかを検討することを目的としました。

調べた方法

研究は横断研究(ある一時点で状態をまとめて測る調査)として、2021年7月から12月にインドネシア・中部ジャワ州のスマランで実施されました。対象は19〜25歳の女性で、腹囲が80cmを超え、BMIが25kg/m²を超える人です。妊娠・授乳中の人、厳しい食事制限をしている人、血圧・コレステロール・血糖に影響する薬を使っている人などは除かれ、最終的に126人が参加しました。参加者の多くは学生でした。

体重・身長・腹囲は訓練を受けた専門職が測定し、血圧も機器で測りました。測定はいずれも参加者が落ち着いた状態で3回行い、平均を用いています。血液は8〜12時間の絶食後に採取し、空腹時血糖、トリグリセリド(中性脂肪)、HDLコレステロールを測定しました。代謝性症候群の判定には、腹囲・空腹時血糖・中性脂肪・HDLコレステロール・血圧の5項目のうち3項目以上が基準に該当するという、修正NCEP-ATP IIIの基準が用いられました。

食事については、過去1か月の食習慣を半定量食物摂取頻度調査票(SQ-FFQ)を使った聞き取りで把握しました。調査票はインドネシアの伝統的な料理を踏まえ、スマランの若い女性の典型的な食事に合わせて作られ、食器の図や盛りつけ量の写真資料を併用して回答の精度を高めています。GIとGLは国際的なGI一覧表の値をもとに計算し、DIIは食事から得られた栄養素量を世界的な平均摂取量と比べて得点化する手順で算出しました。統計解析にはカイ二乗検定とロジスティック回帰が用いられ、研究は倫理委員会の承認を受けています。

主な報告結果

論文によると、参加者126人のうち代謝性症候群と判定されたのは11.9%(15人)でした。全員が腹部の肥満に該当し、BMIでは72.2%が肥満に分類されました。食事のDIIの分布では、71.4%が炎症を促しやすい食事、28.6%が炎症を抑えやすい食事に分類されました。1日あたりのGIとGLの平均はそれぞれ176.7±44.4、458.4±183.3と報告されています。

中心的な結果として、GI(p=0.066)、GL(p=0.207)、DII(p=0.362)のいずれも、代謝性症候群があるかどうかとの統計的に意味のある関連は認められませんでした。著者らは、慢性疾患の危険因子は長い期間をかけて影響が表れるため、この年齢層ではまだ炎症の影響が明らかな形になっていない可能性や、発症には食事以外の仕組みも関わりうることを考察しています。

一方で、代謝性症候群を構成する個々の項目と食事指標を照らし合わせると、いくつかの関連が見られました。GIは中性脂肪の値と(p=0.008)、GLはHDLコレステロールの値と(p=0.009)、DIIは空腹時血糖の高さと(p=0.022)それぞれ統計的に意味のある関連を示しました。なお、これらはあくまで同じ時点で測った指標どうしの関連であり、食事が原因でこれらの値が変わったことを示すものではありません。

著者らは研究の限界も挙げています。LDLコレステロールや遊離脂肪酸、炎症性サイトカインといった指標は測定されていません。また、調査は新型コロナウイルス流行下の活動制限期に行われ、対面とオンラインを併用したため、参加者の環境にばらつきが生じた可能性があります。結果を一般化するには、男女を比較できるより大きな規模の研究が必要だとしています。

この研究が示すこと

この研究は、肥満のある19〜25歳の女性において、食事のGI・GL・DIIが代謝性症候群そのものの有無とは結び付かなかった一方で、中性脂肪、HDLコレステロール、空腹時血糖といった個別の代謝指標とは関連していたことを報告しました。著者らは、対象となった若い女性では代謝性症候群に至るような大きな炎症の過程はまだ生じていなかったと解釈しつつ、この年齢層でもすでに代謝性症候群のリスクを抱えていると述べています。

論文は、安価で脂質・ナトリウム・炭水化物が多い揚げ物や加工食品、砂糖を多く含む飲料といった人気の食品の摂取が、代謝性症候群が早い年齢で始まる主な要因だと指摘しています。そして、健康的な食習慣を育てるために、若いうちからの栄養リテラシー(栄養に関する知識を理解し活用する力)が重要だと結論づけています。

著者:Sophia Rose(Department of Nutrition, Faculty of Health Science, Universitas Kusuma Husada, Surakarta)、Fillah Fithra Dieny(Department of Nutrition Science, Faculty of Medicine, Universitas Diponegoro, Semarang)、Muflihatul Muniroh(Department of Physiology, Faculty of Medicine, Universitas Diponegoro, Semarang)、Apoina Kartini(Department of Public Health Nutrition, Faculty of Public Health, Universitas Diponegoro, Semarang)、Adriyan Pramono(Department of Nutrition Science, Faculty of Medicine, Universitas Diponegoro, Semarang)、Etika Ratna Noer(Department of Nutrition Science, Faculty of Medicine, Universitas Diponegoro, Semarang)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sophia Rose, Fillah Fithra Dieny, Muflihatul Muniroh, Apoina Kartini, Adriyan Pramono, Etika Ratna Noer Association between Glycemic Index, Glycemic Load, and Dietary Inflammatory Index with Metabolic Syndrome in Young Adult Women with Obesity in Semarang, Indonesia. Amerta Nutrition 2026-09-04. DOI: 10.20473/amnt.v10i3.2026.539-547. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。