灰分という言葉には馴染みがないかもしれませんが、これは食品を燃やしたときに残る「灰」の量のことです。食品を一定の条件で灰にすると、炭水化物たんぱく質などは燃えて消えてしまい、ナトリウムカリウムといった無機質(ミネラル)だけが残ります。つまり灰分の値は、その食品に含まれる無機質の総量を映す指標であり、エネルギーを生み出す成分ではありません。この「灰分」という物差しだけで食品を並べてみると、意外な事実が見えてきます。

灰分が多い食品の上位5品を見てみると、すべて食塩の仲間で占められています。しかも数値はほぼ横並びです。1位タイの精製塩 業務用精製塩 家庭用がともに100g、3位の食塩が99.9g、4位の並塩が98.2g、5位の減塩タイプ食塩が98g(推定値)。差といっても2g程度で、順位をつける意味はほとんどありません。灰分という総量だけを見れば、この5つはほぼ「同じ食品」に見えてしまいます。

横並びの数字の裏にある、まったく違う中身

ところが、灰分の中身を分解してみると話は変わってきます。精製塩 業務用、精製塩 家庭用、食塩、並塩の4品は、いずれもナトリウムが38000〜39000mgと、成分のほぼすべてを占めています。塩化ナトリウムが主成分であることに変わりはなく、精製塩は食塩より精製度が高く、並塩はあら塩とも呼ばれる加工用の塩という違いはあるものの、無機質の中身という点ではどれも「ナトリウムの塊」です。精製塩 家庭用には食塩相当量99.6gという表示もあり、これはナトリウム量から換算した値で、ほぼ塩そのものであることを示しています。

ここで5位の減塩タイプ食塩だけが、まったく違う顔を見せます。灰分は98g(推定値)と他の4品と同程度なのに、中身の主役はナトリウムではなくカリウム25000mgです。ナトリウムも18000mgと少なくないものの、他の食塩類の半分以下にとどまり、代わりにカリウムが主成分に躍り出ています。カリウムは細胞内の浸透圧を保ち、正常な血圧の維持に関わるとされる無機質で、女性30〜49歳の目安量は1日2000mgです。100gという極端な量を食べることはまずありませんが、同じ「灰分98〜100g」というラベルの下に、ナトリウム中心の塩とカリウム中心の塩という、成り立ちの異なる2種類が隠れていたことになります。

なお、これら食塩類はいずれも脂質がほぼゼロという共通点も持っています。灰分の値がほぼ食品の重さそのものに近いことからも分かる通り、水分と脂質以外のほとんどを無機質が占める、純度の高い調味料だということです。

数字だけでなく、中身まで見て選ぶ

灰分という指標は「無機質がどれだけ含まれているか」を教えてくれますが、それが何の無機質かまでは語ってくれません。今回の上位5食品はまさにその典型で、同じ灰分の数値の裏に、ナトリウム主体の食塩とカリウム主体の減塩タイプ食塩という、性格の異なる組成が同居していました。食塩に由来するナトリウムとクロールは、体液に溶けるイオンの主な成分を占めるとされ、いずれの食品も基本的な役割は共通しています。ただし、日々の調味料選びでは「灰分が同じくらいだから同じようなもの」と括らず、ナトリウムが主なのかカリウムが主なのか、成分表の内訳まで一歩踏み込んでみると、見え方が変わってきます。同じ「塩」という言葉でも、灰分の数字の奥には、もう一段掘り下げてはじめて見える違いが潜んでいるのです。

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)および日本人の食事摂取基準(2025年版)のデータ等をもとに作成しました。