著者の所属・活動拠点の国は、インドです。

掲載誌:Applied Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

有色米と非有色米を比べ直す総説

米は世界人口の半数以上の主食で、世界の食事エネルギー摂取量の約2割を担うと著者らは紹介しています。米は粒の色によって、赤米や黒米などの「有色米」と、玄米や白米などの「非有色米」に分けられます。生産量の大半は非有色米ですが、有色米は独特の成分構成を持つことから研究上の関心を集めています。

この論文は新しい実験の報告ではなく、既存の研究を集めて整理した総説です。著者らは、米に含まれる代謝物(細胞の中で作られたり変化したりする多様な化合物)の違いを有色米と非有色米で比べ、収穫後の加工や遺伝的な改良によってそれらがどう変わるかを、一つの枠組みにまとめることを目指しました。目的として、両者の代謝物の比較、発芽・精米・パーボイル加工・膨化(パフ)加工などが成分や栄養品質に与える影響の評価、遺伝子工学などによって代謝物やミネラルを高める手法の検討、有色米の成分と健康に関わる性質についての現在の証拠の要約、の4点を挙げています。

文献の集め方と、色による成分の違い

著者らは学術文献データベースのScopusで、2016年から2026年に発表された研究を検索しました。最初の検索で165件が見つかり、重複の除去と内容の確認を経て133件を詳しい検討の対象にしています。背景を補うため、2016年より前の基礎的な研究も必要に応じて加えています。

整理の結果として著者らは、有色米と非有色米で成分の構成が大きく異なると報告しています。非有色米の成分は主に炭水化物と基本的な栄養素が中心であるのに対し、有色米はフェノール酸、フラボノイド、アントシアニン、プロアントシアニジンといった多様な二次代謝物(生育に直接は必須でないものの、植物が作るさまざまな化合物)を蓄えています。これらは主に「ぬか層」と呼ばれる粒の外側の層に集まっています。黒米は主にアントシアニンを、赤米は主にカテキンなどがつながったプロアントシアニジンを多く含むとまとめられています。また、有色米ではアントシアニジンに糖などが結合して18種類のアントシアニンが生じ、そのうちシアニジン-3-O-グルコシドが88%を占めるという記述も紹介されています。

引用された研究の一つでは、抗酸化活性を測る試験で有色米が46.55〜56.36%、非有色米が12.93〜18.53%の値を示したとされています。ほかに、ビタミンE類やB群ビタミン、ガンマオリザノールなどの脂質成分についても、有色米や精米度の低い米の方が多く保たれる傾向が報告されています。一方で白米は、ぬか層が取り除かれるため二次代謝物が大幅に少ないと著者らは述べています。

加工による変化と、残された課題

収穫後の加工は、見た目だけでなく粒の中の化学的な成分も変えると著者らは指摘しています。とくに発芽では、デンプンやたんぱく質を分解する酵素が働き始めるほか、フェノール類を作る経路の酵素の働きが高まり、フェノール酸やフラボノイドが増えると整理されています。アミノ酸の一種であるGABA(ギャバ)も発芽で増えるとされ、引用された研究では、発芽によってGABA量が白米で4.7倍、黒米で6.7倍、赤米で14.2倍に増えたと報告されています。ただし、有色米で特にGABAが蓄積されやすいかどうかは研究が少なく、さらに確認が必要だと著者らは述べています。また、精米は米を削る工程であるため、外側に集まったミネラルやフェノール類を減らす方向に働くことが紹介されています。

健康面について、著者らは試験管内や動物での研究などから、有色米の抗酸化、抗炎症、抗肥満、抗糖尿病、抗腫瘍に関わる性質を検討しています。そのうえで、有色米は多様な植物由来成分と栄養素を持つことから、機能性食品として有望だとしています。その一方で、代謝物の分析法が標準化されていないこと、特定の成分と健康への影響を結びつける臨床的な証拠がまだ確立していないことを課題として挙げています。産地や栽培条件、抽出方法、分析機器の違いによって成分の測定値が大きくばらつき、研究どうしを直接比べにくいことも指摘されています。

この総説が示すこと

この総説は、米の色の違いが含まれる成分の違いと深く結びついていることを示しています。さらに、精米や発芽といった身近な加工によっても、その成分が大きく変わりうることを、多数の研究から一つの見取り図として描き出しています。同時に、成分と健康との関係については、まだ人での確かな証拠が足りない段階にあることも明確に示しています。

原著論文の著者・所属:Sonal Aggarwal(Department of Food Science and Technology, Graphic Era (Deemed to be University), Dehradun, 248002, Uttarakhand, India)、Arun Kumar(Department of Food Science and Technology, Graphic Era (Deemed to be University), Dehradun, 248002, Uttarakhand, India)、Narpinder Singh(Department of Food Science and Technology, Graphic Era (Deemed to be University), Dehradun, 248002, Uttarakhand, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sonal Aggarwal, Arun Kumar, Narpinder Singh. Comprehensive insights into post-harvest and biotechnological modulation of metabolites in pigmented and non-pigmented rice. Applied Food Research 2026-08-02. DOI: 10.1016/j.afres.2026.102477. 原著ライセンス:CC BY.