この研究は、アメリカ、ニュージーランドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
有色米の加工が抱える課題
黒米や赤米のような有色米には、アントシアニンと呼ばれる色素をはじめ、ポリフェノールの仲間である生理活性成分が含まれています。アントシアニンは植物の赤や紫の色のもとになる色素です。
一方で、有色米の加工にはいくつかの課題があります。著者らは、一部の有色品種ではでんぷんが比較的消化されにくいこと、乾燥に長い時間がかかること、加工の過程でアントシアニンが分解しやすいこと、そして色素を効率よく取り出しにくいことを挙げています。
この論文は、新たな実験の報告ではなく、既存の研究を整理した総説です。著者らは、こうした課題に対して、超音波を従来の加工を補う技術としてどう役立てられるかを検討しました。
三つの用途から見た超音波の働き
総説では、超音波の主な用途として、でんぷんの改質、超音波を併用した乾燥、アントシアニンの抽出の三つを取り上げています。
でんぷんについて著者らは、超音波による物理的な作用がでんぷん粒の構造や分子の並び方を乱し、それによってでんぷんの性質や消化のされやすさを調整しうると整理しています。酵素処理や加熱・加水を伴う処理と組み合わせると構造の変化がさらに速まる可能性がある一方、その効果は処理条件や対象となる米の種類・状態によって異なるとしています。
乾燥では、超音波が熱や水分の移動を促して処理時間を短くし、その結果として長時間の加熱にさらされることを抑えられると述べています。
抽出では、超音波を用いる方法が溶媒の浸透や米の組織の破壊、色素の拡散を促し、米粒や精米の際に出る副産物からアントシアニンなどの成分を回収しやすくすると報告しています。
条件次第で逆効果にもなる
著者らは同時に、こうした効果が超音波の周波数や出力、処理時間、温度、装置の構成、使う溶媒の種類に強く左右されることを強調しています。処理が過剰になると、かえって色素の分解を進めてしまうおそれもあるとしています。
また、超音波を使った米の加工の過程でアントシアニンがどの程度保たれるかについては、直接的な証拠がまだ比較的少ないとも指摘しています。
総説が示すこと
著者らは全体として、超音波を、条件の設定によって効果が変わる補助的な手法と位置づけています。加工の効率、アントシアニンの回収、有色米製品の品質の向上に役立ちうる一方で、色素の保持については裏付けがまだ限られているというのが、この総説が示す現状の整理です。
著者:Jingxian An(Department of Food Science Purdue University West Lafayette Indiana USA)、Chong Liu(Department of Chemical and Materials Engineering The University of Auckland Auckland New Zealand)、Kwan‐Mo You(Department of Food Science Purdue University West Lafayette Indiana USA)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jingxian An, Chong Liu, Kwan‐Mo You. Ultrasound in Pigmented Rice Processing: A Versatile Approach for Anthocyanin Retention and Extraction: A Review. Food Science & Nutrition 2026-10-01. DOI: 10.1002/fsn3.72476. 原著ライセンス:CC BY.