著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:DOAJ (DOAJ: Directory of Open Access Journals)
ライセンス: CC BY 3.0 対象: 公開論文 確認元: 論文掲載ページ
研究の目的
サルコペニアは、加齢とともに全身の筋肉の量が減り、筋力や身体機能が低下していく病気です。転倒や骨折、身体の障害、死亡の増加と深く関わるため、高齢者の健康と生活の質を左右する問題として注目されています。一方で診断基準はまだ統一されておらず、中国では質問票による簡易スクリーニングがよく使われてきました。ただし著者らによると、従来の質問票は主観的な判断に左右されやすく、リスクのある人を見逃しやすいという課題がありました。
そこで上海市宝山区の病院などに所属する研究チームは、別の簡易質問票の中国語版「C-MSRA-7」と、年齢・握力・ふくらはぎの太さから計算する「Ishiiスコア」を組み合わせて評価しました。その方法で、地域で暮らす寝たきりでない高齢者のうち、サルコペニアのリスクがある人の割合と、それに関連する生活習慣や栄養の要因を調べることが目的です。
どのように調べたか
調査は2025年4月から6月にかけて行われました。対象は、宝山区内20か所の地域の健康相談拠点を訪れた65歳以上の住民です。寝たきりではなく、身体測定を受けられる人が参加しました。重い病気の急性期にある人などは除かれています。
参加者は、基本情報や食事・生活習慣に関する質問票、C-MSRA-7、簡易栄養評価票に回答しました。さらに身長、体重、ふくらはぎの周囲長、握力も測定しました。C-MSRA-7は、年齢、過去1年の入院回数、1000メートル歩けるか、3食を食べているか、牛乳・乳製品や良質なたんぱく質を毎日とっているか、体重が減っていないかを点数化する質問票です。研究チームは、C-MSRA-7とIshiiスコアの両方で陽性となった人を「サルコペニアリスク群」、それ以外の人を「非リスク群」に分けました。そのうえで両群を比べ、複数の要因を同時に考慮する統計解析によって、それぞれの要因との関連を調べました。
主な結果
有効な回答は2611人分でした。このうち486人(18.6%)がサルコペニアリスク群に分類されました。男女別では、男性が18.9%、女性が18.4%でした。論文は、この割合を国内の他の地域研究と近いか、それよりやや低い水準と位置づけています。
複数の要因を同時に考慮した解析では、次の要因がリスク群であることと独立して関連していました。まず、年齢が高いことです。75歳未満と比べて、75~84歳ではリスク群に入る見込み(オッズ)が約2.6倍、85歳以上では約4.0倍でした。このほか、やせ(BMIが20未満)では約2.2倍、2kgを超える体重減少があった場合は約4.5倍、規則的な身体活動がない場合は約1.8倍、飲酒している場合は約1.5倍でした。
反対に、リスク群であることが少ない方向に関連していた食習慣もありました。牛乳を毎日飲むこと(オッズ約0.40倍)、3食を規則正しくとること(約0.56倍)、肉・魚・卵・大豆製品などの良質なたんぱく質を毎日とること(約0.70倍)です。
研究が示すこと
著者らは、地域で暮らす寝たきりでない高齢者のサルコペニアリスクは、身体活動、食習慣、栄養状態と関連していると結論づけています。また、主観的な質問票と握力などの客観的な測定を組み合わせた今回の方法は、簡便で短時間に実施できます。そのため、筋肉量を測る専用機器のない地域の医療機関でも使いやすいと論文は述べています。
ただし、この研究は一時点の状況を調べた横断研究です。挙げられた要因とサルコペニアとの因果関係までは示されていません。対象が寝たきりでない人に限られていること、血液検査や体組成の測定が含まれていないことも、著者ら自身が限界として挙げています。リスクのある高齢者を早めに見つけるうえで、食事や運動の習慣に目を向ける手がかりを示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Lijun Wang(Department of Clinical Nutrition, Renhe Hospital of Baoshan District, Shanghai 200431, China)、Ping Wu(Department of Clinical Nutrition, Tongji Hospital, Tongji University, Shanghai 200065, China)、Haimin Xu(Geriatric Medicine Center, Renhe Hospital of Baoshan District, Shanghai 200431, China)、Kewen Cheng(Department of Respiratory, Renhe Hospital of Baoshan District, Shanghai 200431, China)、Fen Rao(Department of Nutrition, Shanghai Second Rehabilitation Hospital, Shanghai 200072, China)、Miaomiao Yao(Department of Clinical Nutrition, Renhe Hospital of Baoshan District, Shanghai 200431, China)、Yu Zhang(Department of Clinical Nutrition, Renhe Hospital of Baoshan District, Shanghai 200431, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lijun Wang, Ping Wu, Haimin Xu, et al. Analysis of sarcopenia prevalence and related factors in community-dwelling older adults based on C-MSRA-7 combined with Ishii score. DOAJ (DOAJ: Directory of Open Access Journals) 2026-08-01. DOI: 10.12025/j.issn.1008-6358.2026.20260359. 原著ライセンス:CC BY.