著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Plant Science Today
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
赤米や黒米のような有色米は、ぬか層にフェノール類、フラボノイド、アントシアニンといった色素や成分を含みます。こうした成分は抗酸化性と関わるとされ、精白米とは異なる穀物として関心を集めています。一方で、有色米を加工したときにこれらの性質がどの程度残るのかは、十分に分かっていませんでした。
インドの研究チームは、この点を調べるために5品種の有色米(MSN 100、MSN 104、MSN 20-13、KMP 220、JYOTHI)を使いました。それぞれの米粒と、米を押しつぶして薄く延ばした「フレーク」を比較しています。著者らによると、これまでの研究の多くは生の米粒だけを扱うか、栄養成分や抗酸化性を個別に調べたものでした。フレーク加工がデンプン、食物繊維、抗酸化活性の三つに同時にどう影響するかについては、とくに新しく育成された品種で情報が限られていました。
何をどう調べたか
フレークは次の手順で作られました。米を水に浸してから加熱調理し、乾燥させて軽く焙煎します。その後、ローラーで押しつぶしてフレーク状にし、再び乾燥させます。研究チームは、米粒とフレークのそれぞれについて三つの項目を測定しました。
一つ目はデンプンです。総デンプン量に加え、デンプンを構成する2種類の分子の量を調べました。直鎖状のアミロースと、枝分かれの多いアミロペクチンです。両者の割合は、米の食感や加工のしやすさに関わります。二つ目は食物繊維で、水に溶ける水溶性食物繊維、溶けない不溶性食物繊維、その合計を測りました。三つ目は抗酸化活性です。DPPH法、ABTS法、FRAP法という3種類の化学的な試験で評価しました。DPPH法とABTS法は不安定な分子(ラジカル)を消去する力を、FRAP法は鉄イオンを還元する力をみる方法です。いずれも試験管内での化学反応を測るもので、体内での働きを直接調べたものではありません。
主な結果
米粒の総デンプン量は69.30〜70.46%でした。フレークでは68.90〜69.85%となり、わずかに減りました。アミロース含量は、米粒でもフレークでもすべての品種が20〜25%の範囲に入り、「中アミロース」に分類されました。著者らは、中アミロースの米は炊飯や加工に適した性質をもつと説明しています。アミロースとアミロペクチンの比率については、フレーク加工による有意な変化はみられなかったと報告されています。
米粒の総食物繊維量は品種によって差があり、100gあたり5.53〜7.12gでした。最も多かったのはKMP 220です。どの品種でも、不溶性食物繊維が水溶性食物繊維を大きく上回っていました。フレークにすると水溶性食物繊維はやや減り、不溶性食物繊維と総食物繊維はやや増えて、総量は100gあたり5.80〜7.40gになりました。著者らは不溶性食物繊維が増えた理由について、加熱によってデンプンの一部が消化されにくい形に変わることや、成分同士の結合が起こることなどが考えられると述べています。
抗酸化活性は、3種類の試験すべてで品種間に有意な差がありました。JYOTHIとKMP 220は一貫して高い値を示しました。米粒のDPPH法での消去率は45.77〜56.91%で、最高はJYOTHIでした。FRAP法では1gあたり1.97〜3.02µmolで、最高はKMP 220でした。フレークにすると活性はやや低下し、DPPH法は38.96〜50.62%、FRAP法は1.72〜2.68µmolとなりました。著者らは、熱に弱い成分が分解したことや、浸水・調理の際に水へ溶け出したことが原因と考えています。ただし、品種間の順位は加工後も変わりませんでした。
研究が示すこと
研究チームは、フレーク加工によって総デンプン量、水溶性食物繊維、抗酸化活性はわずかに下がるものの、有色米の主要な栄養的・機能的特性の多くはフレークにも保たれていると結論づけています。また、繊維量や抗酸化活性には品種による差がはっきり表れました。このことから著者らは、加工食品をつくる際の品種選びが重要であると指摘し、候補としてKMP 220とJYOTHIを挙げています。
一方で著者らは、個々のフェノール化合物、消化されにくいデンプン(難消化性デンプン)、成分が体内でどれだけ利用されるか、そして実際の健康への影響は調べていないことを限界として挙げています。この研究は、有色米をフレークに加工した後の成分の変化を品種ごとに比べた基礎的な知見として位置づけられます。
原著論文の著者・所属:S Sujay(Department of Food Science and Nutrition, University of Agricultural Sciences, Gandhi Krishi Vigyana Kendra, Bengaluru, Karnataka 560 065, India)、R Usha(Department of Food Science and Nutrition, University of Agricultural Sciences, Gandhi Krishi Vigyana Kendra, Bengaluru, Karnataka 560 065, India)、S Nanjappa(Director of Education, University of Agricultural Sciences, V. C. Farm, Mandya, Karnataka 571 405, India)、V N Priya(Department of Food Science and Nutrition, University of Agricultural Sciences, Gandhi Krishi Vigyana Kendra, Bengaluru, Karnataka 560 065, India)、S Sushma(Department of Food Science and Nutrition, University of Agricultural Sciences, Gandhi Krishi Vigyana Kendra, Bengaluru, Karnataka 560 065, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):S Sujay, R Usha, S Nanjappa, et al. Biochemical characterisation and functional properties of pigmented rice (Oryza sativa L.) genotypes and their flakes with emphasis on starch fractions, dietary fibre and antioxidant activity. Plant Science Today 2026-09-28. DOI: 10.14719/pst.14477. 原著ライセンス:CC BY.