著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Plants
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:カリウムの効果は品種によって違うのか
ジャガイモは穀物以外では世界最大の食用作物ですが、乾燥地や半乾燥地では水不足が収量を大きく左右します。論文によると、干ばつによる減収は、ストレスの強さや品種によって20〜50%に達すると報告されています。
一方、ジャガイモは肥料の三要素のひとつであるカリウムを特に多く必要とする作物です。カリウムには、葉でつくられた光合成産物をイモへ運ぶ働きや、糖をデンプンに変える酵素を活性化する働きがあることが知られています。ただし、これまでの研究の多くは一つか少数の品種だけを対象にしていました。そのため、カリウムが干ばつの害を和らげる効果がどの品種にも共通するのかは、はっきりしていませんでした。品種がもともと持つカリウムの利用効率と乾燥への強さに関係があるのかも、体系的には調べられていませんでした。
そこで研究チームは、遺伝的背景の異なる6品種を対象に、水が十分な条件と干ばつ条件でカリウム施肥の効果を比べました。そのうえで、品種をカリウムへの反応と乾燥への強さの組み合わせで分類しようと試みました。
何を調べたか:水とカリウムを組み合わせた圃場試験
試験は2025年の栽培期に、中国・内モンゴルの圃場で行われました。対象は国内外で育成された6品種(V7、DXY、JZS-3、SY-2、JZS-12、ZJ-7)です。各品種に4通りの条件を設けました。「カリウムなし・通常の灌水」「カリウムなし・干ばつ」「カリウムあり・通常の灌水」「カリウムあり・干ばつ」の4つです。カリウムの施用量は、酸化カリウム換算で1ヘクタールあたり300kgでした。
研究チームは生育期間中に、根・茎・葉・イモそれぞれの乾物重(乾燥させた重さ)を測りました。あわせて、イモのデンプン含量、葉の水分状態、気孔の開き具合なども調べました。収穫時には収量を測定しています。さらに、4条件の収量をもとに、カリウムを与えたときの増収の程度を表す「カリウム反応指数」と、干ばつ下でどれだけ収量を保てたかを表す「干ばつ耐性指数」を品種ごとに計算し、品種を4つのタイプに分けました。
主な結果:干ばつの害をカリウムが一部和らげ、反応は品種で異なった
干ばつは、6品種すべてで根・茎・葉・イモの乾物の蓄積を抑えました。カリウムを与えると、この抑制は部分的に回復しました。植え付けから90日目には、干ばつ下でカリウムを与えた場合、与えなかった場合と比べて、根で25.9%、茎で21.0%、葉で19.4%、イモで28.2%、乾物重が多かったと報告されています。イモのデンプン含量は、干ばつによって品種や時期に応じて18.5〜35.2%低下しました。干ばつ下でカリウムを与えると、通常灌水・カリウムなしの水準の82.6〜94.3%まで戻りました。
調整後の平均収量は、1ヘクタールあたり次のとおりでした。カリウムなし・通常灌水が約4万4300kg、カリウムなし・干ばつが約3万8700kg、カリウムあり・通常灌水が約5万1600kg、カリウムあり・干ばつが約4万6800kgです。最も多かったのは、水とカリウムがともに十分な条件でした。干ばつ下でカリウムを与えた条件の収量は、全品種で一貫して、水とカリウムがともに十分な条件の収量を下回りました。著者らはこの結果から、カリウム施肥の効果を左右する主な制限要因は、あくまで水の利用可能性だと述べています。
品種の分類では、SY-2が「カリウム効率が高く乾燥に強い」タイプとされました。DXYとJZS-3は「カリウムによく反応し、乾燥耐性は中程度」のタイプです。JZS-12とZJ-7は「カリウムへの反応は小さいが乾燥に強い」タイプとされました。V7は「カリウム効率が低く乾燥に弱い」タイプに分類されています。SY-2は、カリウムなしでも収量がもともと高く、肥料1kgあたりの増収量は大きくありませんでした。それでも、干ばつ下でカリウムを与えた条件での収量は全品種で最も高かったと報告されています。反対にDXYは、カリウムなしでは収量が比較的低いものの、カリウムを与えると干ばつ下でSY-2に近い収量に達しました。
品種による違いは、葉の水分状態にも表れました。干ばつ下でカリウムを与えたときの葉の相対含水率の回復は、V7の12.3%からSY-2の28.6%まで幅がありました。また相関分析では、根の乾物重と収量の関係は全体では弱いものでした。しかし干ばつ条件に限ると、有意な正の相関が見られたと報告されています。
JZS-12では、水が十分な条件でカリウムを与えると、かえって収量が減るという予想外の結果も出ました。一方、干ばつ下ではカリウムによってわずかに増収していました。著者らはこの反応の仕組みについていくつかの可能性を挙げていますが、それらは仮説として示されたものです。
研究が示すこと
この研究は、干ばつ下でのカリウム施肥の効き方が品種によって大きく異なることを、6品種の比較で示しました。著者らは、カリウムで初めて本来の力を発揮する品種もあれば、カリウムに頼らず乾燥に耐える品種、カリウムだけでは不利を補えない品種もあると整理しています。そのうえで、どの品種にも同じようにカリウムを与えるのではなく、品種ごとに施肥の考え方を変える必要があると論じています。
原著論文の著者・所属:Yuying Sang(Inner Mongolia Key Laboratory of Plants Adversity Adaptation and Genetic Improvement in Cold and Arid Regions, College of Life Sciences, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)、Dong Wang(Inner Mongolia Key Laboratory of Plants Adversity Adaptation and Genetic Improvement in Cold and Arid Regions, College of Life Sciences, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)、Yikun Li(Inner Mongolia Key Laboratory of Plants Adversity Adaptation and Genetic Improvement in Cold and Arid Regions, College of Life Sciences, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)、Handa Zhang(Inner Mongolia Academy of Agricultural and Animal Husbandry Sciences, Hohhot 010010, China)、Mingshou Fan(College of Agriculture, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)、Ziyi Zhang(Inner Mongolia Key Laboratory of Plants Adversity Adaptation and Genetic Improvement in Cold and Arid Regions, College of Life Sciences, Inner Mongolia Agricultural University, Hohhot 010018, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yuying Sang, Dong Wang, Yikun Li, et al. Genotypic Differences in Potato Yield and Starch Content Response to Potassium Fertilization Under Drought Stress. Plants 2026-08-04. DOI: 10.3390/plants15152386. 原著ライセンス:CC BY.