著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Measurement Food

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

野菜を完全には乾かさず、水分をある程度残して仕上げる「半乾燥」技術の利用が広がっています。しかし、乾燥前に加熱を伴わない前処理を施した場合、貯蔵中に品質がどれくらいの速さで劣化するのか、またその劣化が温度にどれほど左右されるのかは、十分に調べられていないと研究チームは指摘しています。半乾燥野菜の品質の安定性を、測定に基づいて比較・予測する枠組みもまだ十分に整っていないといいます。

そこで著者らは、イタリアの地理的表示保護(PGI)を受けたシーラ産ジャガイモ(品種アグリア)を対象に、前処理の違いが半乾燥スライスの貯蔵中の品質安定性にどう影響するかを評価しました。あわせて、品質変化を劣化の速さや温度への敏感さとして数値で表す枠組みを示すことを目指しました。

何をどのように調べたか

前処理には二つの方法を比べました。一つは「真空含浸」で、減圧を利用して食品の組織内に溶液をしみ込ませる方法です。もう一つは、溶液に浸すだけの「浸漬」です。どちらの溶液にも、ベルガモット(柑橘類の一種)の加工副産物から得た抗酸化抽出物を加えました。さらに、塩化カルシウムを加えるかどうかで条件を分けています。

前処理したスライスは水分がおよそ20%になるまで乾燥させました。その後、気体などを通しにくい高バリア性のポリプロピレン製トレーに包装し、15℃、20℃、30℃で80日間保存しました。この間、品質の目安として次の項目を継続的に測定しています。食品中の水が微生物や化学反応にどれだけ利用されやすいかを示す「水分活性」、色、食感(テクスチャー)、ポリフェノールなどの総フェノール含量、そして抗酸化活性です。

得られたデータには、時間とともに品質が一定の速さで変化すると仮定するモデルと、残っている量に比例して変化すると仮定するモデルを当てはめ、劣化の速さを表す「速度定数」を求めました。さらに、温度と反応速度の関係を表すアレニウスの式を用いて「活性化エネルギー」を算出しました。活性化エネルギーは、温度が変わると劣化の速さがどれだけ変わるか、つまり温度への敏感さを示す指標として使われています。

主な結果

比較した条件のなかで、ベルガモット抽出物と塩化カルシウムを含む溶液で真空含浸した試料(試料B)が、最も良好な安定性を示したと報告されています。この試料は乾燥後の水分含量が16.01%と最も低く、色もよく保たれていました。明るさを示すL値は57.2、黄色みを示すb値は19.7でした。

アレニウス解析により、品質の劣化が温度に依存することも確かめられました。抄録に示された活性化エネルギーは、水分活性で28.91 kJ/mol、食感で24.55 kJ/mol、明るさ(L値)で84.70 kJ/mol、黄色み(b値)で67.26 kJ/molでした。数値が大きい項目ほど温度変化の影響を受けやすいことを意味し、色に関する指標は水分活性や食感に比べて温度に敏感だったことになります。

抗酸化活性については、15℃で80日間保存したとき、試料Bでは19%の低下にとどまりました。一方、塩化カルシウムを加えずに抽出物だけで真空含浸した試料では29%低下しました。著者らはこの差について、含浸液に塩化カルシウムを加えることで機能面の安定性が高まったことを示すものとしています。

研究の意味

この研究は、色や食感、抗酸化活性といった複数の品質の変化を、劣化の速さと温度への敏感さという共通の数値で表す方法を示しました。研究チームは、この枠組みが管理された貯蔵条件の下で前処理の方法を比較するための基盤になり、半乾燥ジャガイモスライスのどの品質が温度の影響を受けやすいかを見極める手がかりになるとしています。

原著論文の著者・所属:Alessandra De Bruno(Department of Human Sciences and Promotion of the Quality of Life , San Raffaele Open University , 00166 Rome , Italy)、Iolanda Cilea(Department of Agraria, University Mediterranea of Reggio Calabria, 89124 Reggio Calabria, Italy)、Amalia Piscopo(Department of Agraria, University Mediterranea of Reggio Calabria, 89124 Reggio Calabria, Italy)、Antonio Gattuso(Department of Agraria, University Mediterranea of Reggio Calabria, 89124 Reggio Calabria, Italy)、Marco Poiana(Department of Agraria, University Mediterranea of Reggio Calabria, 89124 Reggio Calabria, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alessandra De Bruno, Iolanda Cilea, Amalia Piscopo, et al. Multi-parameter kinetic framework for temperature-dependent stability in semi-dried potato slices. Measurement Food 2026-08-05. DOI: 10.1016/j.meafoo.2026.100312. 原著ライセンス:CC BY.