著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Plants
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
研究の目的
レタスは涼しい気候を好む野菜で、論文によると生育に適した温度はおよそ15〜20℃です。急な高温は、とう立ち(早期の花茎の伸長)、葉先の褐変、苦味、生育量の減少を招くとされています。
著者は、高温下のレタスの葉に散布する3種類の資材を、同じ条件で並べて比較しました。1つ目は、植物のストレス応答に関わる信号物質であるジャスモン酸メチル(MeJA)です。2つ目は、葉の表面に光を反射する粒子の膜をつくる微細な粘土「ナノカオリン」、3つ目はメラトニンです。さらに、根が育つ培地の違いで反応が変わるかどうかも調べました。培地は2種類で、園芸でよく使われ保水性と通気性の高いピートとパーライトの混合培地と、土壌です。
どのように調べたか
実験には、アンタルヤの商業生産者から入手した、ロメインタイプのレタス「イェディクレ」の均一な苗を使い、制御された栽培庫で育てました。葉に散布した処理は5種類で、MeJA(0.5 mMと1.0 mM)、ナノカオリン(0.5%と1.0%)、メラトニン(0.1 mM)です。比較対照として、蒸留水だけを散布した区も設けました。
散布の24時間後から、温度を1日ごとに25℃、30℃、35℃、40℃と段階的に上げました。その後72時間の回復期間を置いてから、測定を行いました。すべての区が同じ高温条件を経験しています。ただし、高温にさらさない比較群は設けていません。
測定項目は、株の重さや草丈、根の状態、見た目の傷みの程度(0〜5の6段階評価)、葉の相対含水率、細胞膜からの電解質の漏れ、葉の温度です。相対含水率は、葉がどれだけ水分を保っているかを示す指標です。加えて、葉の抽出液を使い、DPPH法とABTS法でラジカル消去能を測りました。これは、ラジカルと呼ばれる反応しやすい分子を、抽出液が試験管内でどれだけ打ち消せるかを見る方法です。総フェノール含量も測定しました。
主な結果
ピート・パーライト培地では、処理による差が特にはっきり現れました。蒸留水区の株の生重量は1.13 gでした。これに対し、ナノカオリン1.0%区では11.61 g、0.5%区では11.15 g、MeJA 1.0 mM区では9.86 g、メラトニン区では9.36 gと、いずれも有意に高い値でした。見た目の傷みの評価も、蒸留水区の2.71に対し、メラトニン区とナノカオリン1.0%区では0.00でした。他の処理区も1未満にとどまっています。なお、乾燥重量は傾向が異なり、蒸留水区とナノカオリン0.5%区で高い値でした。
土壌では、生重量が最も大きかったのはメラトニン区(18.14 g)で、蒸留水区は8.69 gでした。一方、根の重さや長さ、太さには、処理による有意な差は見られませんでした。
葉の相対含水率は、培地によって反応の向きが異なりました。土壌では、蒸留水区の45.71%に対し、ナノカオリン1.0%区が73.07%、MeJA 1.0 mM区が72.98%、MeJA 0.5 mM区が69.32%と有意に高い値でした。ピート・パーライト培地では、MeJA区は蒸留水区と同程度で、ナノカオリン1.0%区が最も低い値でした。細胞膜からの電解質の漏れには、どちらの培地でも処理による有意な差はありませんでした。葉の温度にも有意な差は見られませんでした。
抽出液の分析では、どちらの培地でも、ナノカオリン処理区がDPPHとABTSのラジカル消去能、総フェノール含量のいずれでも最も高い値を示しました。たとえば土壌では、DPPHによる消去率が蒸留水区の31.45%に対し、ナノカオリン1.0%区で45.10%でした。一方、メラトニン区はこれらの値が蒸留水区より低くなりました。
この研究が示すこと
著者は、葉面散布への反応は資材の種類だけでなく、根が育つ環境にも大きく左右されると結論づけています。同じ資材でも、培地が違えば反応の大きさや向きが変わりうることを、3種類の資材を並べて比べることで示した点が、この研究の主な貢献とされています。
ただし、高温にさらさない比較群がないため、今回の結果は同じ高温条件の中での処理どうしの比較です。高温による被害をどれだけ軽くしたかを示すものではありません。また、抗酸化に関わる酵素や活性酸素そのものは測定していません。論文が挙げている仕組みは、過去の文献にもとづく解釈の段階にとどまる、と著者は述べています。
原著論文の著者・所属:Erhan Akalp(Department of Horticulture, Faculty of Agriculture, Dicle University, 21280 Diyarbakır, Turkey)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Erhan Akalp. Comparative Physiological and Biochemical Responses of Lettuce (Lactuca sativa L. var. romana) to Foliar Methyl Jasmonate, Nano-Kaolin, and Melatonin Under a Progressive High-Temperature Regime. Plants 2026-09-30. DOI: 10.3390/plants15193013. 原著ライセンス:CC BY.