著者の所属・活動拠点の国は、台湾です。

掲載誌:ACS Omega

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

でんぷんは通常、冷たい水にはほとんど溶けず、加熱して初めて糊状になります。これに対し「粒状冷水可溶性でんぷん(GCWS)」は、冷水に溶ける性質を持ちながら、もとのでんぷんに近い粒の形や糊の性質を保つ素材として注目されています。

GCWSの作り方の一つに、でんぷん粒をごく少量のアルカリを含むアルコールに浸す「アルコール・アルカリ処理」があり、特に効果的な方法とされています。研究チームは、この処理の条件がトウモロコシでんぷんの構造と性質にどう影響するかを系統的に調べ、GCWSを狙いどおりに設計するための手がかりを得ることを目指しました。

何を調べたか

著者らは、エタノール濃度(50〜90%)、水酸化ナトリウム(NaOH)の量(1〜6%)、処理温度(30〜50℃)を変えてトウモロコシでんぷんを処理しました。

処理後のでんぷんについて、粒の形の観察や光学的な分析に加え、示差走査熱量測定と呼ばれる方法で糊化(加熱で粒が崩れて糊になる変化)に伴う熱量を調べました。さらに、冷水での膨らみやすさ、溶けやすさ、糊の透明さ、粘り気といった実用上の性質を評価し、統計解析でどの条件がどの性質に効いているかを分析しました。

主な結果

論文の要旨によると、処理によってでんぷん粒は次第に縮み、くっつき合い、融合していきました。また、偏光を当てたときに見える「複屈折」という光り方が失われていきました。50〜70%のエタノールでNaOHが3%以上の条件では、粒が完全に崩れる様子が観察されたと報告されています。

熱分析では、アルカリが強い条件ほど糊化に必要な熱量が減り、NaOHが5%以上になると、でんぷん内部の規則正しい構造が失われたとされています。

性質の面では、得られたGCWSは冷水での膨潤度が最大19.4、25℃での溶解度が12.8〜29.6%、糊の光の透過率が70%を超え、35℃での粘度が最大810cPに達し、未処理のでんぷんを上回ったと報告されています。

統計解析からは、膨らみやすさと粘り気には主にエタノール濃度が、溶けやすさと糊の透明さには主にNaOHの量が関わっていることが示されました。

研究から伝わること

著者らは、これらの結果がGCWS製造に適した処理条件を示すとともに、処理条件と得られる性質との関係を理解する手がかりになるとしています。エタノール濃度とアルカリ量という二つの条件が、それぞれ異なる性質を左右するという知見は、溶けやすさ、透明さ、粘り気といった性質を条件の調整によって作り分けられる可能性を示しています。

原著論文の著者・所属:Yung-Ho Chang(Providence University , , ,)、Chia-Long Lin(Providence University , , ,)、Xiu-Wen Xue(Providence University , , ,)、Jheng-Hua Lin(Providence University , , ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yung-Ho Chang, Chia-Long Lin, Xiu-Wen Xue, et al. Alcoholic–Alkali Modification of Corn Starch: A Framework for GCWS Design and Functional Tailoring. ACS Omega 2026-08-22. DOI: 10.1021/acsomega.6c03649. 原著ライセンス:CC BY.