著者の所属・活動拠点の国は、ロシアです。
掲載誌:Legal regulation in veterinary medicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
豚肉は価値の高い食肉の一つですが、販売や加工の過程には獣医衛生上のリスクがあります。著者らによると、食肉や内臓は動物から人にうつる病気(人獣共通感染症)を媒介することがあり、と畜や保管のルールが守られない場合には食中毒の原因にもなり得ます。そのため、豚肉が食用に適しているかを確かめ、病的な変化を早く見つけ、品質の悪い原料が市場に出るのを防ぐ獣医衛生検査は、食肉の品質と安全を管理する重要な仕組みとされています。
サンクトペテルブルク国立獣医大学の研究チームは、ロシアのレニングラード州にある施設から得られた豚の枝肉10頭分について、複数の検査方法を組み合わせて品質と安全性を評価しました。
どのように調べたか
検査は州内のと畜場と大学の獣医衛生検査学講座の実験室で行われました。まず官能検査として、頭部、内臓、枝肉を目で見て、触れて、においを確かめました。リンパ節を切開して異常の有無を確認したほか、寄生虫の一種である嚢虫(のうちゅう)を探すために咀嚼筋や心臓の筋肉にも切れ目を入れて調べています。肉を煮て、できたスープの透明度や香りを確認する煮沸試験も実施しました。
さらに、筋肉に寄生する旋毛虫(トリヒナ)の幼虫を探すため、横隔膜の脚の部分と肋間の筋肉から試料を取り、薄い切片を2枚のガラス板で押しつぶして観察するトリヒナ検査を行いました。調べた切片は合計24枚です。
化学的な検査としては、たんぱく質が分解し始めると生じる物質を硫酸銅との反応で調べる試験、肉に含まれる酵素ペルオキシダーゼの働きを確かめるベンジジン試験、pHメーターによる酸性度の測定を行いました。加えて、肉の切り口をスライドガラスに押し当てて作った標本をグラム染色し、顕微鏡で一視野あたりの微生物の数を数えました。
主な結果
論文の報告では、ほとんどの枝肉が官能的、化学的、微生物学的な指標で新鮮な肉の基準と規格文書の要件を満たしていました。肉は特有の色、弾力、においを持ち、指で押したくぼみはすぐに戻り、脂肪は白く柔らかく異臭がありませんでした。煮沸試験では、ほぼすべての試料で透明で香りのよいスープが得られました。
硫酸銅との反応はすべての試料で陰性で、濁りや沈殿は見られませんでした。ベンジジン試験はすべて陽性、pHは5.6〜5.9の範囲でした。顕微鏡で数えた微生物は一視野あたり1〜8個で、著者らはこれを新鮮な肉に相当する値としています。トリヒナ検査では、どの切片からも幼虫は見つかりませんでした。
一方で、一部の枝肉には局所的な病的変化が見つかりました。3番と9番の枝肉では肺に血液を吸い込んだ状態(血液吸引)が、8番では飼料を吸い込んだ状態が確認され、これらの肺は食用から外して処分されました。また1番、6番、7番では、肝臓に脂肪がたまって組織が変性した部分(脂肪変性)が大小さまざまに見つかり、その部分は切り取って処分されました。
研究が示すこと
検査の結果、廃棄された部分を除き、すべての枝肉は制限なく販売できると判断されました。著者らは、見た目やにおいなどを確かめる官能検査と実験室での検査を組み合わせることで、食肉の品質と安全性を客観的に評価できると述べています。全体としては基準を満たす枝肉の中にも、肺や肝臓に局所的な異常が見つかった今回の報告は、部位ごとの丁寧な検査が食用に適さない部分を取り除くうえで役立つことを示しています。
原著論文の著者・所属:A. N. Tokarev(Saint Petersburg State University of Veterinary Medicine)、A. A. Terekhov(Saint Petersburg State University of Veterinary Medicine)、A. S. Smolkina(Saint Petersburg State University of Veterinary Medicine)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. N. Tokarev, A. A. Terekhov, A. S. Smolkina. Veterinary and sanitary examination of pork. Legal regulation in veterinary medicine 2026-10-25. DOI: 10.52419/issn2782-6252.2026.3.221. 原著ライセンス:CC BY.