著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:PLANT CELL BIOTECHNOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
コリアンダー(Coriandrum sativum L.)は、独特の香り、幅広い料理への利用、薬用としての重要性で知られる香辛料作物です。生理活性をもつさまざまな代謝物を豊富に含むとされています。本研究の著者らは、この植物を試験管内で効率よく培養する仕組みづくりを目指しました。
目的は二つありました。一つは、芽生えの胚軸(子葉と根の間の茎の部分)から「カルス」と呼ばれる未分化な細胞の塊を作り、そこから器官を再生させる「間接的器官形成」の系を開発することです。もう一つは、植物の成長を調節する物質(植物成長調節物質)の組み合わせを変えたときに、カルスの成分がどう変わるかを探ることでした。
何を調べたか
研究チームは、コリアンダー品種ACr-3の胚軸の切片を、無菌条件下でガンボーグB5培地という植物培養用の培地に置いて培養しました。培地には3種類の成長調節物質を、45通りの組み合わせで加えました。3種類とは、オーキシンの一種である2,4-Dと、サイトカイニンの一種であるBAPおよびカイネチンです。各条件は4反復とし、条件の割り当てを無作為にする実験計画で比較されました。
評価した項目は、カルスの重さ(生重量と乾燥重量)と生化学的な特性です。生化学的な特性としては、フェノール類やフラボノイドの量、抗酸化活性、クロロフィルやカロテノイドの量が調べられました。
主な結果
抄録によると、カルスの成長や成分の蓄積は条件によって大きく異なりました。成長調節物質のバランスが強く影響することが示されています。
最も重いカルスが得られたのはT35という条件です。この条件では、培地1リットルあたり2,4-Dを1.5ミリグラム、BAPを1.0ミリグラム、カイネチンを0.5ミリグラム加えました。生重量は2.790グラム、乾燥重量は1.953グラムでした。
一方、成分ごとに最も優れた条件は異なりました。総フェノール量はT41、フラボノイドの蓄積はT33、抗酸化活性はT44で最大となりました。クロロフィルとカロテノイドの量はT15で最大だったと報告されています。
また、試した再生用の培地では、カルスから芽(シュート)が完全に再生するまでには至りませんでした。ただし、胚のような構造を作る能力をもつ「胚形成カルス」は生じました。このことから著者らは、カルスに形態形成の有望な能力がうかがえるとしています。
研究の意味
この研究は、成長調節物質の組み合わせを適切に選ぶことで、コリアンダーのカルスの量や生化学的な特性を大きく高められることを示しています。著者らは、最適化した手順が、試験管内での代謝物生産、遺伝資源の保存、組織培養による増殖、遺伝的改良の基盤になりうると述べています。なお、今回試した再生培地では、シュートの完全な再生は誘導されなかったことも併せて報告されています。
原著論文の著者・所属:Harsh Vyas(Department of Genetics and Plant Breeding, School of Agriculture, Suresh Gyan Vihar University, Jaipur, Rajasthan, India)、Manas Mathur(School of Agriculture, Suresh Gyan Vihar University, Jaipur, Rajasthan, India)、Vasundhara Sharma(Department of Plant Physiology, ICAR–National Research Centre on Seed Spices (NRCSS), Ajmer, Rajasthan, India)、M.K. Mahatma(Department of Plant Biochemistry, ICAR–National Research Centre on Seed Spices (NRCSS), Ajmer, Rajasthan, India)、S. John(YP-I, ICAR–NRCSS, Ajmer, Rajasthan, India)、Ajeet Singh Shekhawat(Department of Genetics and Plant Breeding, School of Agriculture, Suresh Gyan Vihar University, Jaipur, Rajasthan, India)、Hansa Mathur(School of Agriculture, Suresh Gyan Vihar University, Jaipur, Rajasthan, India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Harsh Vyas, Manas Mathur, Vasundhara Sharma, et al. Optimization of Callus Induction and Biochemical Characterization of in Vitro Cultures of Coriandrum sativum L.. PLANT CELL BIOTECHNOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2026-10-24. DOI: 10.56557/pcbmb/2026/v27i9-1011264. 原著ライセンス:CC BY.