掲載誌:Инновационная техника и технология

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ハムやソーセージなどの食肉加工品は、多くの人が日常的に口にする身近な食品であり、その安全性は公衆衛生に深く関わります。論文によると、ロシアで販売されるソーセージ製品のうち、ひき肉を練って作るタイプのソーセージ類が販売量全体の平均68%を占めています。さらに、そのタイプの販売のうち80%以上を、加熱して作るボイルドソーセージとウインナー類が占めています。

著者らは、こうしたボイルドソーセージを対象とする「獣医衛生検査」について分析し、近い将来の発展の方向性を示すことを目的としました。獣医衛生検査とは、獣医学の専門家が原料となる家畜や食肉、加工品の安全性と品質を確認する仕組みです。この論文は新たな実験を行った研究ではなく、既存の知見や先行研究をもとに検査の位置づけを体系的に整理した内容です。

生産から販売までをつなぐ検査

著者らは、獣医衛生検査が完成品の確認だけにとどまらず、製品の一生を通して働く仕組みであることを示しています。農場では家畜の健康状態や飼育・給餌の条件を確認し、と畜前には家畜を検査して、人に感染しうる病原体が食品を通じて広がるのを防ぎます。加工工場では、原料の受け入れ、加工、保管、出荷準備といった複数の段階で検査が行われます。さらに、ふん尿などの生物系廃棄物の扱いを通じて環境とも関わり、ロシアの獣医法やユーラシア経済連合(EAEU)の技術規則といった法制度に支えられています。

論文は検査の利点として、まず消費者の保護を挙げています。サルモネラ菌やリステリア菌、大腸菌群などの細菌や、豚肉を使う場合のトリヒナ(旋毛虫)などの寄生虫を見つけることで、食中毒や人と動物に共通する病気のリスクを下げられるとしています。また、抗生物質、ホルモン剤、農薬、重金属などの残留の監視や、DNAを調べる方法による原料の動物種の確認を通じて、肉原料の一部をより安い代替品に置き換える偽装を防ぐ役割も挙げています。

製造現場では、加熱不足や生地が酸っぱくなる変質、亜硝酸塩の過剰といった工程上の不具合を見つけることにも役立つとされます。検査の結果は流通に必要な書類の作成や、ロシアの電子的な追跡システム「メルクーリー」による原料から製品までの追跡にも使われます。企業にとっては、問題を早期に見つけることで損失や回収費用、評判の低下を抑えられるという経済的な利点もあると著者らは述べています。

3種類のソーセージを比べた先行研究の結果

論文では、検査の実例として、大型スーパーで販売されていた人気のボイルドソーセージ3種類「ドクトルスカヤ」「ルースカヤ」「モローチナヤ」を比較した先行研究の結果を紹介しています。この比較では、見た目や匂い、味などを人の感覚で評価する官能検査、成分を測る理化学検査、微生物検査が行われました。

紹介された結果によると、官能検査ではいずれの試料も規格に適合していました。一方、理化学検査では「モローチナヤ」のすべての試料で食塩の含有量が高く、平均2.42%と、規格の上限である2.2%を上回っていました。この製品ではデンプンの割合と亜硝酸ナトリウム(発色などに使われる添加物)の濃度も許容値を超え、pHの低下も見られました。著者らは、これが製造工程や定められた配合の違反を示している可能性があると述べています。なお、「ドクトルスカヤ」はたんぱく質の割合が規格の最低値を大きく上回っていました。微生物検査では、すべての試料が基準を満たしていました。

著者らはこの結果から、外見上の特徴だけでは配合や製造工程の違反が必ずしも分からないため、官能・理化学・微生物の検査を組み合わせた総合的な確認が必要だとしています。

今後の方向性と研究の意味

論文は、ボイルドソーセージの獣医衛生検査をより正確で迅速なものにし、生産・販売の流れに組み込んでいく方向性を示しています。具体的には、特定の動物のDNAを高感度に検出するPCR法や、DNAの量を精密に数えられるデジタル液滴PCRの活用、新しい添加物や動物用医薬品の残留など検査項目の拡大、検査結果と「メルクーリー」などの電子システムとの連携、製造ライン上で使える簡易検査の改良が挙げられています。さらに、子ども向けやハラールなど特定の製品に合わせた基準づくり、専門家の継続的な研修、塩分や亜硝酸塩を減らす流れへの対応も挙げられています。

この論文は、獣医衛生検査を、家畜の健康管理から廃棄物処理までをつなぐ仕組みとして捉えています。紹介された比較結果も、店頭に並ぶ身近な食品であっても、複数の検査を組み合わせて初めて規格からの逸脱が見えてくることを示しています。

原著論文の著者・所属:Б.В. Артамонов(Пензенский государственный аграрный университет)、С.А. Сашенкова(Пензенский государственный аграрный университет)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Б.В. Артамонов, С.А. Сашенкова. ВЕТЕРИНАРНО-САНИТАРНАЯ ЭКСПЕРТИЗА ВАРЕНЫХ КОЛБАС. Инновационная техника и технология 2026-10-01. DOI: . 原著ライセンス:CC BY.