著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:AGROINTEK
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
牛肉のミートボールはインドネシアをはじめアジアの国々で広く親しまれている加工肉食品ですが、微生物の増殖や脂質の酸化によって傷みやすいという課題があります。著者らによると、製造現場では合成保存料や合成酸化防止剤が使われることが多い一方、健康面への懸念も指摘されており、安全で手に入りやすい天然素材による代替が求められています。
研究チームが注目したのは、カレーの色付けなどでもおなじみのターメリック(ウコン)です。ターメリックには、抗菌作用や抗酸化作用が知られるクルクミンという成分が多く含まれています。料理には昔から使われてきたものの、牛肉ミートボールのような加工肉への利用については十分に調べられていないとして、著者らはターメリック粉末の添加量が、ミートボールの微生物数、酸化の程度、物理的・化学的な性質、そして食べた人の好みにどう影響するかを調べました。
何を調べたか
研究チームは、牛肉400グラムにタピオカ粉、氷、塩、こしょう、ガーリックパウダーを混ぜた生地を基本とし、ターメリック粉末を加えないもの、肉の重さに対して1.5%、2.5%、3.5%加えたものの4種類のミートボールを作りました。生地は直径3センチの球形に丸め、沸騰したお湯で10分間ゆでました。各条件は4回ずつ繰り返して比較しています。
測定した項目は多岐にわたります。微生物の多さは、試料を培地で培養して生じた菌の集まりを数える「一般生菌数」で、脂質の酸化の進み具合は、酸化でできる物質を測る「TBA値」で評価しました。このほか、pH(酸性・アルカリ性の度合い)、加熱前後の重さから求めた加熱歩留まり、水分量、肉が水を抱え込む力(保水性)、加熱時に分離して出てくる液体の量で見る乳化の安定性、器具を使って測った柔らかさ、薄切りを指で折り曲げてひび割れ具合を見る折り曲げ試験も行いました。さらに、大学の学生25人に食べてもらい、0(とても嫌い)から9(とても好き)までの尺度で好ましさを評価してもらいました。
主な結果
論文によると、ターメリック粉末を加えると一般生菌数は統計的に意味のある差で減少しました。ターメリックなしでは1グラムあたり4.12(対数値)だったのに対し、3.5%添加では3.86と最も少なくなりました。酸化の指標であるTBA値も、ターメリックなしの0.86から、2.5%添加で0.58、3.5%添加で0.43へと下がりました。1.5%添加ではターメリックなしと同じ値でした。著者らは、こうした変化をクルクミンの抗菌作用や抗酸化作用と結び付けて考察しています。
性質の面では、ターメリックが増えるほどpHはわずかに下がり(6.56から6.44)、水分量も61.49%から59.66%へ減少しました。著者らは、この水分量はインドネシアの国家規格が定めるミートボールの上限(70%)の範囲内だと述べています。加熱歩留まりとして報告された値も、ターメリックを加えると低下しました。一方、加熱時に出てくる液体の量は2.5%以上の添加で減り、研究チームはこれを乳化の安定性が高まったことを示すものとしています。保水性はすべての条件でほぼ同じで、折り曲げ試験の点数にも統計的に意味のある差はありませんでした。
柔らかさについては、器具で測った値がターメリックの増加とともに小さくなり、結果の考察では、著者らはこれをミートボールが柔らかさを失ったものとして説明しています。そして、食べた人の好ましさの評価は、ターメリックなしの6.12から3.5%添加の4.48へと、添加量が増えるほど下がりました。著者らは、ターメリック特有の強い風味や食感の変化が影響した可能性を挙げています。
研究が示すこと
この研究は、身近な香辛料であるターメリック粉末を牛肉ミートボールに加えると、微生物数や脂質の酸化を抑える方向に働く一方で、水分量や加熱歩留まりの低下、そして食べた人の好みの低下といった代償も伴うことを報告しています。著者らは、ターメリックを天然素材による品質保持の手段として位置づけつつ、利点と食べやすさとの間にはトレードオフがあることを示しました。保存性を高める工夫と、おいしさを保つことの両立が、天然素材を加工食品に生かすうえでの課題であることがうかがえる研究です。
原著論文の著者・所属:Suharyanto Suharyanto(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, University of Bengkulu)、Warnoto Warnoto(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, University of Bengkulu)、Dwi Ramadanti(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, University of Bengkulu)、Hartati Hartati(Department of Animal Science, Faculty of Agriculture, University of Bengkulu)、Hajrawati Hajrawati(Department of Animal Production, Faculty of Animal Science, Hasanuddin University, Makassar, Indonesia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Suharyanto Suharyanto, Warnoto Warnoto, Dwi Ramadanti, et al. Microbiological, oxidative stability, physicochemical attributes, and sensory evaluation of beef meatballs with turmeric powder addition. AGROINTEK 2026-07-28. DOI: 10.21107/agrointek.v20i2.27756. 原著ライセンス:CC BY.