著者の所属・活動拠点の国は、イラク、イランです。

掲載誌:Anbar Journal of Agricultural Sciences

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられがちなデーツの種を肉の保存に生かせるか

ハンバーガーのパティのようなひき肉製品は傷みやすい食品です。肉をひく過程で表面の微生物が全体に広がり、脂質も空気に触れて酸化しやすくなるためです。マイナス18℃の冷凍は劣化を遅らせますが、脂肪の分解や酸化を完全には止められません。そのため製造現場では、BHTなどの合成酸化防止剤が広く使われてきました。一方で、こうした添加物の安全性を懸念する声もあり、植物由来の天然素材で代わりになるものが探されています。

研究チームが注目したのは、ナツメヤシの果実(デーツ)の種です。種は果肉を利用した後に捨てられることが多い一方、ポリフェノール類や食物繊維を含み、抗酸化作用や抗菌作用が期待されています。著者らは、デーツの種を肉製品に加えた先行研究を検討したうえで、冷凍したバーガーで、合成酸化防止剤と並べて比べた研究は見当たらなかったと述べています。そこで本研究は、デーツの種の粉末を加えると、冷凍保存中のビーフバーガーで脂肪の劣化や微生物の増殖が抑えられ、品質が保たれるかを調べました。

4種類のバーガーを30日間冷凍して比較

研究チームは、イラク・バスラの地元市場で入手したハラウィ種のデーツから種を取り出し、乾燥させて細かい粉末にしました。分析すると、粉末の約7割(乾燥重量あたり71.40%)が食物繊維で、ポリフェノール類も含まれ、試験管内の測定で抗酸化活性が確認されました。

牛もも肉の脂肪分を15%にそろえ、1.5%の塩を加えたひき肉から、次の4種類のバーガーを作りました。何も加えない対照、種の粉末を2%加えたもの、4%加えたもの、合成酸化防止剤のBHTを0.02%加えたものです。これらをマイナス18℃で30日間保存し、保存の始め、15日目、30日目に品質を測りました。

調べた項目は主に次のとおりです。脂肪の酸化が進むとできる物質の量(TBARS値)と、脂肪が分解されて生じる遊離脂肪酸の量で、肉の劣化具合を見ました。微生物については、一般的な細菌数、低温でも増えられる「低温細菌」の数、大腸菌の数を数えました。ほかに、酸性度を表すpH、焼いたときに失われる重量の割合(加熱損失)、訓練を受けた10人のパネルによる色・味・柔らかさ・ジューシーさ・総合評価も調べました。ただし、BHTを加えたバーガーは、パネルの健康に配慮して試食評価の対象から外されています。

脂肪の劣化と細菌数は粉末入りで低めに

脂肪の酸化を示すTBARS値は、どのバーガーでも保存期間とともに上昇しました。それでも30日目の値は、対照が肉1kgあたり0.32mgだったのに対し、2%添加で0.25mg、4%添加で0.23mgと低く抑えられていました。遊離脂肪酸も30日目に対照が0.44%まで増えたのに対し、2%添加は0.27%、4%添加は0.23%にとどまりました。

細菌数は、冷凍の影響で対照を含むすべてのバーガーで時間とともに減りました。その中でも粉末入りのバーガーは低い値を示しています。30日目の一般細菌数は、1gあたり対照が5万4470、2%添加が5万2770、4%添加が4万8590でした。大腸菌も、30日目に対照の1gあたり38.02に対し、4%添加は15.67、2%添加は16.67、BHTは20.33でした。ただし、どの条件でも大腸菌は残っており、保存によって除去されたわけではないと著者らは記しています。

低温細菌については、著者ら自身が注意点を挙げています。粉末入りのバーガーは保存開始の時点ですでに対照より数が少なく、30日間の減り方は対照とほぼ同じでした。このため、処理間の差の一部は実験の開始前から存在していたことになります。またBHT入りのバーガーは、低温細菌数で対照と一貫した差を示しませんでした。著者らは、BHTが主に酸化防止剤であり、抗菌剤ではないためと考えています。

pH・焼き縮み・食味への影響

pHは保存中にどのバーガーでも上昇しましたが、上がり方には差がありました。30日目の値は、対照の6.11に対し、4%添加は5.79にとどまっています。焼いたときの重量損失は、期間全体の平均で4%添加が最も小さく(28.81%)、対照が最も大きい結果(30.22%)でした。この効果は4%添加でのみはっきり見られたとされ、著者らは種の食物繊維が水分を保つ働きによるものと考えています。

試食評価では、粉末入りのバーガーが色、味、柔らかさ、ジューシーさのいずれでも対照を上回りました。9段階評価による総合評価の保存期間平均は、対照の7.11に対し、2%添加で8.17、4%添加で8.42でした。

研究が示すこと

著者らは、4%のデーツ種子粉末が天然の抗酸化・抗菌素材として働き、冷凍ビーフバーガーの品質と安定性を高め、保存性の向上につながったと結論づけています。ふだんは捨てられる種を、合成添加物に代わる候補として評価した点が本研究の特徴です。

一方で著者らは、この研究の限界も挙げています。原料の牛肉は単一の入手元・単一のロットであること、保存期間が30日に限られること、真空包装などの包装条件は検討していないことです。今回の結果は、こうした条件のもとで得られた報告として受け止める必要があります。

原著論文の著者・所属:A. Y. Yousif(Department of Animal Production, College of Agriculture, University of Basrah, Basrah, Iraq)、S. G. Al-Shawi(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Basrah, Basrah, Iraq)、Z. K. Al-Younis(Department of Food Science, College of Agriculture, University of Basrah, Basrah, Iraq)、Z. Hamidi-Esfahani(Department of Food Science and Technology, Faculty of Agriculture, Tarbiat Modares University, Tehran, I.R. Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):A. Y. Yousif, S. G. Al-Shawi, Z. K. Al-Younis, et al. Enhancement of Beef Burgers Using Date Palm Seed Powder to Improve Quality Characteristics During Frozen Storage. Anbar Journal of Agricultural Sciences 2026-09-28. DOI: 10.32649/ajas.2026.193483. 原著ライセンス:CC BY.