著者の所属・活動拠点の国は、イラクです。
掲載誌:Iraqi Journal of Market Research and Consumer Protection
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
白いソフトチーズはイラクの市場で広く流通しています。一方で、微生物によって傷みやすく、日持ちが短いという課題があります。近年は合成保存料を使わない食品を求める消費者が増えており、天然素材で品質を保つ方法が探られています。
研究チームが着目したのは、マッシュルーム(Agaricus bisporus、ホワイトマッシュルーム)です。世界で最も多く栽培・消費されているキノコの一つです。著者らは、マッシュルームの粉末を濃度を変えてソフトチーズに加えました。そして、保存中の栄養成分や、風味などの官能的な品質(人の感覚で評価する品質)を保ち、日持ちを延ばせるかを調べました。
何をどう調べたか
研究チームはまず、バグダッドのキノコ農場で収穫した白色と褐色のマッシュルームを粉末にし、フェノール化合物などの成分を分析しました。その結果、白色の粉末のほうが有効な成分を多く含んでいました。このため、チーズには白色マッシュルームの粉末を使うことにしました。
チーズは、牛乳を63℃で30分間加熱殺菌したあと、微生物由来の凝乳酵素(レンネット)で固め、食塩を加えて作りました。これを5つに分け、粉末を加えない対照区と、粉末を0.7%、0.9%、1.1%、1.3%の割合で加えた4つの区を用意しました。
保存しながら、水分、たんぱく質、脂肪、灰分(ミネラル分の目安)といった成分のほか、pHと酸度を測りました。また、16人の評価者による官能評価を、最長15日目まで行いました。採点は、風味(45点)、組織・かたさ(35点)、色(10点)、外観(10点)の合計100点満点です。
主な結果
保存14日後の成分を比べると、対照区では水分が44.5%から52.6%に増えました。たんぱく質は23%から18.9%に、脂肪は25.4%から19.8%に減りました。一方、粉末を最も多く加えた1.3%の区では、水分が42.7%から43%、たんぱく質が23.78%から23%、脂肪が26.34%から26.2%となり、変化は小さくとどまりました。
酸っぱさの指標でも違いが見られました。対照区では保存中にpHが5.32まで下がり、酸度は0.16%から0.46%に上がりました。粉末を加えた区ではpHが5.59〜5.88の範囲にとどまり、1.3%の区の酸度は0.28%までの上昇でした。著者らは対照区の変化について、チーズ中の微生物が残った乳糖を乳酸などに変えたためと説明しています。
官能評価では、作りたての時点では粉末を加えない対照区が99.1点と最も高く、粉末を加えた区は94.9〜95.9点でした。粉末によって色の評価がやや下がったことも報告されています。しかし対照区は1週間ほどで評価が下がり始め、9日目以降は傷んだため評価できませんでした。これに対し、粉末を加えた区は保存期間を通じて受け入れられる評価を保ちました。特に1.3%の区は、15日目でも92.7点を得ました。
研究が示すこと
著者らは、マッシュルーム粉末を加えると、ソフトチーズの保存中のたんぱく質や脂肪の割合が保たれたと結論づけています。風味などの品質も、受け入れられる水準で長く維持されました。マッシュルーム粉末が、合成保存料に代わる天然素材として乳製品に使える可能性を示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Samah A. M. Abboud(Food Science Department , College of Agriculture , Baghdad University , Iraq)、Ebtisam F. Mousa(Assist. Prof. Food Science Department , College of Agriculture , Baghdad University , Iraq)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Samah A. M. Abboud, Ebtisam F. Mousa. THE EFFECT OF MUSHROOM (AGARICUS BISPORUS) POWDER ON THE SENSORY PROPERTIES OF SOFT CHEESE AND PROLONGING ITS SHELF LIFE.. Iraqi Journal of Market Research and Consumer Protection 2026-09-30. DOI: 10.28936/jmracpc18.3.2026.(2). 原著ライセンス:CC BY.