著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
すぐに食べられる魚介加工品が増えるなか、燻製品はその香りと味わいで好まれています。一方、伝統的な燻製は時間と手間がかかります。研究チームは、燻製の香りを液体で付ける「液体スモーク」に注目しました。これを、食材を真空包装して温度と時間を管理しながら加熱する「スーヴィード(真空低温調理)」と組み合わせ、調理済みのスズキ(ヨーロピアンシーバス)を作ろうと考えました。
著者らによると、先行研究を調べた範囲では、液体スモークとスーヴィードを組み合わせた研究は見当たりませんでした。そこでこの研究では、液体スモークで風味づけしたスズキを3つの温度でスーヴィード調理し、約2℃で冷蔵保存しました。その間に、味や香りなどの官能面、化学的な鮮度、微生物の増え方がどう変わるかを評価しています。
どのように調べたか
スズキの切り身は、食塩2.5%、ヒマワリ油3%、液体スモーク5%を混ぜた液に3分間浸して風味を付けました。その後、切り身2枚(約200g)ずつを真空包装し、60℃、65℃、70℃のいずれかで20分間加熱しました。加熱後は氷水などで急速に冷やし、冷蔵庫で保存しています。
分析は、生の魚、風味づけ後、加熱直後に行い、保存中は4日ごとに続けました。調べた項目は多岐にわたります。たとえば、微生物が利用できる水の割合を示す「水分活性」、pH、色を測りました。腐敗が進むと増える揮発性の窒素化合物の量(TVB-N)や、脂質の酸化の目安となるTBARs値も測定しています。微生物では、一般的な細菌、低温で増える細菌、酸素がない環境で増える細菌、大腸菌群、酵母・カビの数を調べました。さらに、経験のある5人の評価者が、味とジューシーさ、におい、食感、香り、見た目を点数で評価しました。
主な結果
水分活性は保存中を通じて0.974〜0.985の範囲にあり、グループ間に意味のある差はありませんでした。pHは生の魚で6.86でしたが、酸性の液体スモークと塩の影響で風味づけ後に6.57へ下がり、加熱によって再び上がりました。保存12日目までは6.45〜6.69で推移しましたが、16日目と20日目には7以上になりました。著者らは、この時期に微生物が増えたことと関連づけて説明しています。
腐敗の指標であるTVB-Nは、保存中どのグループでも「腐敗」とされる基準(100gあたり35mg)を超えませんでした。保存28日目までの評価では、60℃と65℃のグループが「非常に良い」、70℃のグループが「良い」に区分されました。脂質酸化の指標であるTBARs値は保存中に上昇しました。最も高かったのは60℃のグループの1.78(mg MDA/kg)で、どのグループも「非常に良い」とされる3未満にとどまりました。著者らは、真空包装によって酸化の原因となる空気から守られたことを理由の一つに挙げています。
微生物では、加熱の温度による違いが現れました。低温で増える細菌は、加熱でいったん大きく減りました。その後、60℃と65℃のグループでは保存28日目に、70℃のグループでは32日目に基準値を超えました。一般的な細菌も、32日目に60℃と65℃のグループで基準値を上回りました。酵母・カビは、60℃と65℃のグループで20日目に基準値に達しましたが、70℃のグループでは増え方が少なくなりました。大腸菌群は風味づけの段階で検出下限付近まで減り、保存16日目まで低い水準が続きました。
官能評価では、保存が進むにつれて味とジューシーさの点数が全グループで下がりました。低下が特に目立ったのは60℃のグループです。65℃のグループは保存20日目まで最も良い評価を保ち、香りでも最も好まれました。においの点数は24日目まで高い水準を保ち、その後大きく下がりました。評価者は、切り身に燻製魚らしい特有のにおいがあると述べています。
研究が示すこと
この研究は、液体スモークによる風味づけとスーヴィード調理を組み合わせたスズキについて、冷蔵中の品質変化を多くの面から追跡したものです。加熱温度によって、品質の保たれ方に違いが報告されました。70℃では微生物の増加が遅い傾向が見られ、65℃では味や香りの評価が高い傾向が見られました。わずかな温度差の選び方が、日持ちとおいしさの両方に関わることを示した報告といえます。
原著論文の著者・所属:Rukiye Köklü(Graduate Education Institute, Department of Fisheries and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)、Hülya Turan(Faculty of Fisheries, Department of Fisheries Fishing and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)、Can Okan Altan(Faculty of Fisheries, Department of Fisheries Fishing and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)、Demet Kocatepe(Faculty of Fisheries, Department of Fisheries Fishing and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)、Bayram Köstekli(Faculty of Fisheries, Department of Fisheries Fishing and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)、Bengunur Corapci(Faculty of Fisheries, Department of Fisheries Fishing and Processing Technology Sinop University Sinop Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rukiye Köklü, Hülya Turan, Can Okan Altan, et al. The Sensory, Chemical and Microbiological Quality of Sous‐Vide Cooked Sea Bass ( Dicentrarchus labrax Linneaus, 1758) With Liquid Smoke Flavor. Food Science & Nutrition 2026-07-31. DOI: 10.1002/fsn3.72184. 原著ライセンス:CC BY.