この研究は、フィリピンの研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal on Science and Technology
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとした研究か
競技スポーツでは、体力や技術だけでなく、一瞬の判断の速さが勝敗を分けると考えられています。この研究の著者は、コート外での食事の自己管理と、コート上での反応的な判断の速さとを結びつける心理的な仕組みが、アジアの育成環境ではまだ十分に調べられていないと述べています。
そこで着目されたのが「栄養に関する自己効力感」です。これは、環境や気分に左右される状況でも自分で決めた食事の計画を実行できるという、その領域に限った自信を指す考え方として論文中で説明されています。著者は、中国・武漢の若手バスケットボール選手を対象に、この自己効力感と、反応的な判断の速さとの関係を検討し、あわせて年齢・性別・学年による違いを調べることを目的としたと記しています。
調査の方法
調査は、武漢市東西湖区にある若手バスケットボールの育成機関で行われ、279人の選手が参加しました。内訳は男子185人(66.3%)、女子94人(33.7%)で、年齢層は18〜19歳が16.8%、19〜20歳が30.1%、20〜21歳が22.6%、21歳を超える層が30.5%でした。実際に競技経験のある選手を選ぶため、目的に応じて対象者を選定する手法が用いられています。
測定には、研究者が独自に作成した4段階評価の質問票が使われました。栄養に関する自己効力感は、食事の準備ができているか、サプリメントについての知識、水分補給の習慣、消化の状態を自分で感じ取る感覚、長期的な継続という5つの側面から尋ねられています。判断の速さについては、予測の正確さ、フライング的な動き出しからの立て直し、視線を静かに保つ「クワイエット・アイ」と呼ばれる能力、疲労時に生じる判断の遅れ、状況が複雑になったときの対応という5つの指標が設けられました。
なお、この調査で測られたのはいずれも選手自身による自己評価であり、機器でミリ秒単位の反応時間を計測したものではありません。分析では記述統計に加え、グループ間の差を調べる一元配置分散分析とシェッフェの事後検定、関連の強さを調べるピアソンの相関係数が用いられ、有意水準は5%に設定されています。質問票全体の信頼性を示すクロンバックのα係数は.988と報告されています。
報告された主な結果
論文によれば、栄養に関する自己効力感の全体平均は3.17(標準偏差.51)で、研究で定めた基準では「効果的」と解釈される水準でした。判断の速さの全体平均は3.19(標準偏差.48)で、こちらは「速い」と解釈される水準です。
年齢による違いも報告されています。19〜20歳の選手が、自己効力感のすべての側面で一貫して最も高い値を示し、21歳を超える層が最も低い値でした。性別については、サプリメントに関する知識と水分補給の習慣という2つの側面で男子が女子を上回る差がみられたと述べられています。
そして、栄養に関する自己効力感の合計と、反応的な判断の速さとの間には、統計的に意味のある正の相関が認められました。つまり、食事を自分で管理できるという自信が高い選手ほど、自分の判断は速いと評価する傾向があったということです。ここで示されているのは両者が同じ方向に動くという関連であり、一方が他方を引き起こすことを確かめたものではありません。
この研究が示す意味
著者は、栄養に関する自信は測定可能な認知的パフォーマンスの要素であると結論づけ、行動面の栄養教育を戦術トレーニングの中に組み込むことを支持する結果だとしています。また、調査結果をもとに「認知・栄養の自己モニタリング・プログラム」を提案しています。
食事の管理はこれまで、コンディションや体づくりの話として扱われがちでした。この研究は、それを判断力という競技の中核に近い側面と結びつけて捉える視点を、育成現場のデータとともに提示したものと言えます。
著者:Haiyang Luo(Graduate School , Emilio Aguinaldo College Manila , Philippines)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Haiyang Luo Nutritional Self-efficacy and Reactive Decision - Making Speed among Players in a Sports Facility. International Journal on Science and Technology 2026-08-30. DOI: 10.71097/ijsat.v17.i3.11505. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。