著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Healthcare
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
視覚障害のある人は、一般の人と比べて運動不足や座りがちな生活、心理的な苦痛、社会的孤立を経験しやすく、睡眠の質の低さとも関連すると報告されています。こうした背景から、障害に合わせて工夫されたスポーツ(アダプテッドスポーツ)が、健康的な生活習慣や心身の健康を支える場として注目されてきました。
ブラインドベースボールは、イタリアで生まれた視覚障害者のための野球型の団体競技です。音の手がかりや体の位置感覚、空間の把握、仲間との連携を組み合わせ、見え方の程度が異なる選手が共通のルールで一緒にプレーできます。研究チームによると、これまでに競技選手の心理的な健康やバランス能力などは調べられてきましたが、食行動、身体への肯定感、睡眠の質という三つの側面を同時に調べた研究はありませんでした。
そこで著者らは、イタリアの競技ブラインドベースボール選手を対象に、これら三つの側面と生活習慣を探索的に把握し、イタリアの一般成人について公表されている基準値と記述的に比べることを目指しました。あわせて、ブラインドベースボールだけを行う選手と他の競技も掛け持ちする選手、生まれつきの視覚障害の選手と人生の途中で視覚障害を負った選手との違いも調べました。
調査の方法
調査は2026年1月30日から3月15日まで、国内リーグのシーズン前の時期に匿名のオンラインアンケートで行われました。リーグに登録された競技選手108人のうち53人が回答し、回答率は49.1%でした。回答者の平均年齢は39.3歳で、約77%が男性、約85%が法的に全盲とされる区分でした。参加者は画面読み上げソフトなどの支援技術を使って回答しています。
アンケートでは、年齢や性別、自己申告の身長・体重、視覚障害の種類、競技歴や練習時間、喫煙や飲酒、外食や自炊の頻度などを尋ねました。さらに、食べ方の傾向を八つの側面から測る成人食行動質問票、自分の体を受け入れ大切にする気持ちを測る身体評価尺度、過去1か月の睡眠の質を0〜15点で評価する簡易版ピッツバーグ睡眠質問票という、既存の検証済みの質問票を用いました。睡眠の質問票は点数が高いほど睡眠の問題が大きいことを示し、5点を超えると「睡眠の質が低い」と分類されます。
主な結果
研究チームの報告によると、選手のBMI(身長と体重から求める体格の指標)は62.3%が普通体重、約3割が過体重で、肥満は5.7%にとどまりました。睡眠については60.4%が睡眠の質が良好と分類され、睡眠の質が低いと分類された人は約40%でした。著者らは、視覚障害があるにもかかわらず、睡眠の状態はイタリアの一般成人の基準範囲内にあったと述べています。
身体への肯定感は全体に高く、1項目あたりの平均点は5点満点で3.77でした。イタリアの成人の基準値(男性3.74、女性3.93)と同程度の水準です。項目別では、自分の体を尊重する気持ちや、体の良いところを認める気持ちが特に高い一方、自分の体の独自の特徴を大切に思う気持ちや、メディアが描く魅力的な姿と違っても自分を美しいと感じる気持ちは比較的低めでした。
食行動については、目立った乱れは見られなかったと報告されています。食べることを楽しむ傾向の得点が最も高く、なじみのない食べ物を避ける偏食傾向の得点が最も低くなりました。多くの選手は外食が少なく、普段から自宅で食事を作っていると答えました。
探索的な比較では、他の競技も掛け持ちする選手は、ブラインドベースボールだけを行う選手に比べて、満腹を感じやすい傾向(満腹感への敏感さ)の得点が低いことが示されました(2.30対2.78)。また、掛け持ち選手は睡眠質問票の平均点が高く(6.05対4.70)、睡眠の質が低いと分類された人の割合も高めでした(55.0%対30.3%)。掛け持ち選手は余暇の運動時間も長いと報告されています。一方、人生の途中で視覚障害を負った選手は、生まれつきの選手より、感情によって食べ過ぎたり食べられなくなったりする傾向の得点が高めでしたが、統計的に意味のある差には至りませんでした。身体への肯定感には、どちらの比較でも差はみられませんでした。
研究が示すこと
著者らは、イタリアの競技ブラインドベースボール選手が全体として良好な生活習慣の傾向を示したと結論づけています。ただし、この研究は一時点の調査であり、比較に使ったのも同時期に集めた対照群ではなく公表済みの基準値です。そのため、こうした良好な状態がブラインドベースボールへの参加によってもたらされたとは言えず、参加者がもともと持っていた特徴を反映している可能性もあります。
それでも研究チームは、ブラインドベースボールへの参加が健康的な生活習慣や自分の体への前向きな気持ちと両立しうることが示されたとし、障害のある人を包み込む団体スポーツが、食事や睡眠、身体への肯定感を含めた多面的な健康づくりの場になりうると位置づけています。
原著論文の著者・所属:Giuditta Carretti(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Sofia Lotti(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Monica Dinu(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Francesco Sofi(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Mirko Manetti(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Barbara Colombini(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)、Mirca Marini(Department of Experimental and Clinical Medicine, University of Florence, 50134 Florence, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Giuditta Carretti, Sofia Lotti, Monica Dinu, et al. Eating Behavior, Body Appreciation, and Sleep Quality in Italian Blind Baseball Athletes: A Cross-Sectional Exploratory Survey. Healthcare 2026-10-15. DOI: 10.3390/healthcare14203446. 原著ライセンス:CC BY.