著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

イスラム教のラマダン月には、29〜30日間にわたり、夜明けから日没まで飲食を控える断食が行われます。大人と同じく、多くの思春期のスポーツ選手もこの断食を行っています。思春期は急速に成長する時期でエネルギーや栄養の必要量が多いため、食事の時間や回数が変わるラマダン中に、必要なエネルギー・栄養・水分を十分にとれるかが課題になります。しかし、思春期の選手を対象にした研究はまだ限られています。

そこで著者らは、思春期のバレーボール選手を対象に、ラマダン期間中に栄養状態と競技に関わる体力・運動能力がどう変化するかを調べました。あわせて、その変化が断食をどの程度続けたかによって違うかどうかも検討しました。

何をどのように調べたか

研究チームは2022年4〜5月にトルコで調査を行いました。対象は、ラマダンの断食を行った男子バレーボール選手35人で、平均年齢は約16歳、競技歴は平均約6年でした。選手たちはラマダン中も、日没後の食事(イフタール)のあとに普段どおり練習を続けました。

測定は、ラマダン前、ラマダン中(14〜16日目)、ラマダン終盤(28〜30日目)の3つの時期に行われました。それぞれの時期について、選手が3日分の食事と飲み物を記録し、エネルギーと三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)、水分の摂取量を算出しました。体重や首回り、腰回りと尻回りの比などの体格も測りました。運動能力は、握力、5m・10m・20mの短距離走、方向転換の素早さを見るアジリティテスト、しゃがんだ姿勢から真上に跳ぶ垂直跳び(スクワットジャンプ)、立ち幅跳びで評価しました。さらに、ラマダン前と終盤には血液検査を行い、体内の水分状態と関係しうる指標として、尿素、クレアチニン、アルブミン、カリウム、塩化物を測定しました。

断食の続け方については、ラマダン中ずっと断食を続けた13人、1〜7日中断した15人、8〜16日中断した7人の3グループに分けて比較しました。

主な結果

食事では、体重1kgあたりの脂質摂取量がラマダン前の1.88gから、ラマダン中は1.60g、終盤は1.52gへと減りました。水分摂取量もラマダン前の1日1.60Lからラマダン中1.35L、終盤1.44Lと減少し、研究期間を通じて推奨量を下回っていました。一方、エネルギー、炭水化物、たんぱく質の摂取量には統計的に意味のある変化はなく、エネルギーと三大栄養素の摂取は全体として思春期の選手向けの推奨水準とおおむね一致していたと報告されています。体重などの体格の測定値も変わりませんでした。

運動能力では、左手の握力がラマダン終盤に低下しました。右手の握力には時期による有意な変化はありませんでした。20m走のタイムはラマダン前が最も速く、その後しだいに遅くなりました。アジリティテストのタイムはラマダン中に遅くなりましたが、終盤にはラマダン前に近い水準に戻りました。5mと10mの短距離走、2種類のジャンプには時期による有意な変化は見られませんでした。

断食の続け方によるグループ間では、5m・10m・20m走、スクワットジャンプ、立ち幅跳びの成績に差が見られました。ただし、時期による変化の仕方がグループによって異なるという結果は、どの項目でも得られていません。著者らは、断食をより厳格に続けるほど成績が下がりやすい可能性を挙げつつも、これは今後の検証が必要な仮説だとしています。

血液検査では、ラマダン終盤に塩化物、尿素、尿素とクレアチニンの比がラマダン前より上昇しました。アルブミンとカリウムには変化がありませんでした。著者らは、これらの結果は体内の水分状態に変化が生じた可能性を示す一方、重い脱水というよりは軽い変化と矛盾しない、と考察しています。

この研究が示すこと

著者らは、思春期の男子バレーボール選手では、ラマダンの断食が食事の摂取内容、一部の運動能力、水分状態に関わる可能性のある血液指標の変化と関連しうる一方、体格は変わらなかったと結論づけています。特に水分摂取はラマダン前から不足気味で、期間中はさらに少なくなっていました。

なお、この研究には断食をしない比較グループが含まれていないため、断食をした選手としなかった選手を比べた結果ではなく、示されたのは因果関係ではなく関連です。また、対象は少人数の男子選手に限られ、運動能力の測定は日没後の食事から3〜4時間後に行われています。こうした条件のもとで、成長期の選手にとってラマダン中のエネルギー、栄養、とりわけ水分の摂取に注意を払うことが大切だという点が、この研究から伝わる主なメッセージです。

原著論文の著者・所属:Eda Elif Delice(Department of Nutrition and Dietetics, Institute of Health Sciences, Istanbul Medipol University, Göztepe Neighborhood, Kavacık, Atatürk Street No. 40, Beykoz, Istanbul 34810, Turkey; Tokat Provincial Directorate of Youth and Sports, New Neighborhood, Gaziosmanpaşa Street, No. 3, Center, Tokat 60030, Turkey)、Gülgün Ersoy(Department of Nutrition and Dietetics, Institute of Health Sciences, Istanbul Medipol University, Göztepe Neighborhood, Kavacık, Atatürk Street No. 40, Beykoz, Istanbul 34810, Turkey)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eda Elif Delice, Gülgün Ersoy. Changes in Nutritional Status and Sport-Specific Performance During Ramadan in Adolescent Male Volleyball Players: A Prospective Cohort Study. Nutrients 2026-09-30. DOI: 10.3390/nu18193227. 原著ライセンス:CC BY.