この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Acta Scientiarum. Technology/Acta scientiarum. Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
脂肪を減らしたアイスクリームの課題に取り組む
アイスクリームの乳脂肪は、なめらかな口当たりやクリーミーさを生み、内部の気泡や氷の結晶の状態にも関わります。そのため脂肪を減らすと、氷っぽいざらつきなど食感の欠点が出やすくなります。研究チームは、脂肪を減らしたアイスクリームに脂肪の役割を補う素材(脂肪代替素材)を加え、こうした問題を抑えながら、たんぱく質や食物繊維を加えた「機能性」アイスクリームを作ることを目指しました。
著者らによると、脂肪代替素材を1種類ずつ調べた研究は多い一方、たんぱく質系と炭水化物系の素材を同じ条件で並べて比べ、組み合わせた場合の効果まで調べた研究は少ないといいます。本研究はこの比較を目的としています。
9種類のアイスクリームを作り比べる
炭水化物系の素材として、イヌリンとデキストランを使いました。イヌリンは水に溶ける食物繊維で、腸内の有用な細菌のえさになるプレバイオティクスとして知られます。デキストランは乳酸菌の仲間が作り出す多糖類で、本研究では大学の研究室で細菌から作ったものを用いました。たんぱく質系の素材には、牛乳のたんぱく質であるカゼインを加工したカゼインナトリウムと、乳清(ホエイ)のたんぱく質を高度に精製したホエイプロテインアイソレート(WPI)を使いました。
試作品は9種類です。脂肪9.5%の通常のアイスクリームを比較の基準とし、脂肪6.2%のもの、脱脂粉乳を増やしたもののほか、脂肪を約4%に減らしたうえで、イヌリン4%、WPI 4%、カゼインナトリウム4%、さらにイヌリンとWPI、イヌリンとカゼインナトリウム、デキストランとWPIをそれぞれ2%ずつ組み合わせたものを作りました。
これらについて、成分、溶けるまでの時間、混合液のとろみ(流れにくさ)、硬さなどの食感、加熱したときの融解の熱的な性質、色を測定しました。さらに、官能評価の経験がある22〜30歳の学生・研究者35人が、見た目や風味、食感などを9段階で評価しました。
素材ごとに異なる効果
たんぱく質系の素材を加えた試作品では、たんぱく質の割合が6.9%から9.66%になり、狙いどおりたんぱく質を増やすことができました。混合液のとろみの度合いを表す「粘稠度係数」は、デキストランとWPIを組み合わせた試作品で18.63と、通常脂肪の試作品(6.48)を含むすべての試作品の中で最も高くなりました。一方、WPIだけを4%加えた試作品ではこの値が最も低くなりました。
食感では、脂肪を減らした試作品の多くが通常脂肪のものより硬くなりましたが、イヌリン4%の試作品は硬さ252.9 g、噛みごたえの指標64.95で、著者らはイヌリンが硬さと噛みごたえを改善したと報告しています。WPIはイヌリンよりも硬さを大きく高めました。
溶けやすさについては、たんぱく質系素材の効果がまちまちでした。WPIは溶けにくさを大きく高めた一方、カゼインナトリウムは完全に溶けるまでの時間を短くしました。示差走査熱量測定という手法で融解に伴う熱量(エンタルピー)を調べたところ、WPIを含む試作品では概して値が低く、WPI 4%の試作品は1グラムあたり99.78ジュールでした。著者らは、WPIが水分を抱え込み、大きな氷の結晶ができにくくなったことが一因の可能性があると考察しています。
官能評価では、全体として通常脂肪の試作品が最も好まれましたが、イヌリン4%の試作品と、イヌリン2%とWPI 2%を組み合わせた試作品も、9点満点の平均でそれぞれ6点と5.8点となり、全体として受け入れられる水準に達しました。
研究が示すこと
研究チームは、脂肪代替素材の種類や組み合わせによって、とろみ、食感、溶け方、評価のされ方が大きく変わることを、同じ条件のもとで比べて示しました。結果から著者らは、イヌリンとWPIが、脂肪を減らしつつたんぱく質や食物繊維を加えたアイスクリームの品質を高める素材として有効に働きうると結論づけています。
著者:Sezen Aksu(Yildiz Technical University)、Hatice Beki̇roğlu(Yildiz Technical University / Sirnak University)、Selma Kayacan(Yildiz Technical University)、Enes Dertli̇(Istanbul Technical University)、Osman Sağdıç(Yildiz Technical University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sezen Aksu, Hatice Beki̇roğlu, Selma Kayacan, et al. Effect of carbohydrate and protein-based fat substitutes on low-fat functional ice cream quality. Acta Scientiarum. Technology/Acta scientiarum. Technology 2026-09-14. DOI: 10.4025/actascitechnol.v48i1.76412. 原著ライセンス:CC BY.