この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Springer Link (Chiba Institute of Technology)
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref
研究の目的
より健康的な乳製品を求める声を受けて、脂肪分を減らしたアイスクリームの開発が進められています。ただし、脂肪を減らすと、なめらかなクリーム感が損なわれたり、空気を含んでふくらむ度合いや溶けにくさといった品質が落ちたりすることがあります。
研究チームは、インドネシアで採れるヤムイモの一種「レッサーヤム(学名 Dioscorea esculenta)」に注目しました。このイモからイヌリンを取り出し、地元で調達できる原料として、低脂肪アイスクリームで脂肪の一部を置き換える材料に使えるかを予備的に調べることが、この研究の目的です。イヌリンは、果糖(フルクトース)がつながってできた「フルクタン」と呼ばれる種類の炭水化物です。
イヌリンの取り出し方と性質
著者らは、イモを熱いお湯で抽出し、水酸化カルシウムとリン酸を使って不純物を取り除く処理をしました。そのうえでエタノールを加えてイヌリンを沈殿させ、凍結乾燥して粉末にしました。得られた粉末については、物理的・化学的な性質を測定しました。あわせて、果糖を含む糖に反応して色が変わる「セリワノフ試験」と、赤外線の吸収から分子の構造の特徴を調べる「FTIR分析」も行いました。
論文によると、得られたのは白くて無臭の粉末で、収率(原料に対して得られた量の割合)は5.42%でした。pHは7.74、水分は10.56%、灰分(燃やした後に残るミネラル分)は1.52%で、70〜80℃での溶解度は95.59%と報告されています。セリワノフ試験とFTIR分析の結果から、この粉末がフルクタンの特徴をもつことが確認されました。
アイスクリームに加えた結果
次に研究チームは、このイヌリンをアイスクリームに0%から3%まで加えて比べました。イヌリンの濃度を上げるにつれて、オーバーラン(製造時に空気を含んでふくらんだ度合い)は15.79%から38.35%に高まり、脂肪含量は5.41%から3.76%に下がったと報告されています。
人が実際に食べて評価する官能評価では、イヌリンを3%加えたアイスクリームは色の好ましさを保ち、食感の評価が向上しました。一方で、味と香りの評価は有意に低下したとされています。
研究が示すこと
著者らは、レッサーヤムから取り出したイヌリンが、地元で調達できる原料として、アイスクリームの脂肪を一部置き換える材料になる可能性があると述べています。ただし、今回はあくまで予備的な応用の段階です。より幅広い食品への利用を勧めるには、純度、分子の鎖の長さ(重合度)、溶け方の特性について、さらに調べる必要があるとしています。食感が改善した一方で味や香りの評価は下がったという結果も含め、身近な作物を食品素材として活用する道筋とその課題の両方を示した研究といえます。
著者:Zjahra Vianita Nugraheni(Department of Chemistry , Faculty of Science and Data Analytics , Institut Teknologi Sepuluh Nopember , Surabaya , Indonesia)、Hilya Fathanah Rahmatillah(Department of Chemistry , Faculty of Science and Data Analytics , Institut Teknologi Sepuluh Nopember , Surabaya , Indonesia)、Syifa’ Aulia Wardah(Department of Chemistry , Faculty of Science and Data Analytics , Institut Teknologi Sepuluh Nopember , Surabaya , Indonesia)、Herdayanto Sulistyo Putro(Department of Chemistry, Faculty of Science and Data Analytics, Institut Teknologi Sepuluh Nopember)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zjahra Vianita Nugraheni, Hilya Fathanah Rahmatillah, Syifa’ Aulia Wardah, et al. Isolation and characterization of inulin from Indonesian lesser yam (. Springer Link (Chiba Institute of Technology) 2026-09-30. DOI: 10.1051/epjconf/202638703004. 原著ライセンス:CC BY.