著者の所属・活動拠点の国は、中国、トルコ、エジプトです。

掲載誌:Marine Life Science & Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

捨てられるザクロの皮を生かすための試み

ザクロの加工では、果実の重さの約3〜4割を占める果皮が副産物として大量に出ます。これまで多くは廃棄されてきましたが、果皮にはポリフェノールと呼ばれる植物由来の成分が豊富に含まれています。ポリフェノールには、細胞内の酸化と還元のバランスの調節や脂質の低減といった働きが、これまでの研究で報告されています。

一方で、ポリフェノールは水に溶けにくく、体内の環境で不安定で、吸収されにくいといった弱点があります。さらに従来の抽出では有機溶媒を多く使うことが多く、環境負荷や安全性の面でも課題がありました。

研究チームは、こうした課題に対処するため、有機溶媒を使わずに、ザクロ果皮のポリフェノールをナマコ由来のペプチド(アミノ酸が短くつながったもの)とともに、ナノメートル(100万分の1ミリメートル)単位の微粒子にまとめる方法を検討しました。

水だけで果皮を処理し、一つの容器で粒子をつくる

著者らは、生のザクロ果皮を水と一緒にミキサーで砕き、ろ過と遠心分離によってポリフェノールを多く含む液を得ました。この液に香料成分として知られるバニリンとナマコペプチドを加え、暗所で24時間かき混ぜることで、成分が自然に集まってナノ粒子ができる「ワンポット」(一つの容器で完結する)方式を用いています。

3つの材料の濃度を変えることで粒子の大きさが変わることが報告されています。ポリフェノールの濃度が高いほど粒子は大きくなり、バニリンを減らすと粒子は小さくなりました。ナマコペプチドについては、濃度を下げるといったん小さくなり、さらに下げると再び大きくなる傾向でした。最も小さい粒子は直径約268ナノメートルで、研究チームはこの条件の粒子を以降の詳しい評価に用いました。

この粒子に含まれるポリフェノールを分析したところ、フラボノイド類が約48%、フェノール酸類が約33%、タンニン類が約11%を占めていたと報告されています。

試験管と培養細胞で確かめた働き

抗酸化作用(物質を傷つける反応性の高い分子を取り除く働き)を、試験管内の複数の方法で比べました。ナマコペプチド単独ではいずれの指標でも作用は弱かった一方、ナノ粒子はより高い除去作用を示しました。特に、反応性が非常に高いヒドロキシルラジカルについて、50%を除去するのに必要な濃度はナノ粒子で約329マイクログラム毎ミリリットルと、比較対象のビタミンC(約456マイクログラム毎ミリリットル)より低く、ビタミンCを上回る除去作用を示したと報告されています。

胃の酸性から腸の中性付近を想定したpH2〜8の液中では、酸性側で粒子が集まって大きくなり、中性側では再び小さく分散する変化が見られました。それでもpHの範囲全体で抗酸化の指標は一貫して保たれていたとされています。

培養細胞を使った実験では、過酸化水素で酸化的なストレスを与えたマウス由来の免疫細胞で、ナノ粒子の濃度が高いほど細胞内の活性酸素が少なくなりました。また、細胞のエネルギーを生み出すミトコンドリアの状態を示す膜電位の低下も、濃度に応じて回復したと報告されています。

さらに、ヒト肝臓由来の培養細胞にオレイン酸(脂肪酸の一種)を与えて脂肪をため込ませた実験では、ナノ粒子で処理すると細胞内の脂肪の粒(脂肪滴)が濃度に応じて約40〜60%減少しました。生きている細胞と死んだ細胞を見分ける染色では、大規模な細胞死は見られなかったとされています。

この研究が示すこと

この研究は、食品加工の廃棄物であるザクロ果皮から、有機溶媒を使わない簡単な工程で、大きさを調整できるナノ粒子をつくれることを示しました。そして、その粒子が試験管内で高い抗酸化作用を示し、培養細胞では活性酸素や脂肪滴の量を減らしたことを報告しています。

ただし、結果はいずれも試験管内と培養細胞での観察です。著者ら自身も、脂肪への作用の比較で個々の成分や単純な混合物を対照に置いていないこと、作用の仕組みや動物・人の体内での働きはまだ確かめられていないことを挙げています。廃棄されてきた素材に新たな価値を見いだす一つの道筋を、実験室レベルで示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Xiumin Zhang(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)、Dingning Lu(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)、Xiaoyang Shao(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)、Junyong Xuan(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)、A. M. Abd El-Aty(Department of Medical Pharmacology, Medical Faculty, Ataturk University, 25240, Erzurum, Turkey; Department of Pharmacology, Faculty of Veterinary Medicine, Cairo University, Giza, 12211, Egypt)、Wei Guo(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; School of Management, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)、Mingqian Tan(Dalian Key Laboratory for Precision Nutrition, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China; Department of Food Engineering, Faculty of Agriculture, Atatürk University, 25240, Erzurum, Turkey; State Key Laboratory of Marine Food Processing and Safety Control, School of Food Science and Technology, Academy of Food Interdisciplinary Science, Dalian Polytechnic University, Dalian, 116034, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiumin Zhang, Dingning Lu, Xiaoyang Shao, et al. “One-pot” green synthesis of sea cucumber peptide/pomegranate peel derivative nanoparticles with good scavenging of reactive oxygen species and alleviating fat accumulation. Marine Life Science & Technology 2026-10-26. DOI: 10.1007/s42995-026-00422-0. 原著ライセンス:CC BY.