著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

菜種かすに含まれるポリフェノールをどう取り出すか

菜種は世界三大油糧作物の一つで、油を搾った後に残る「菜種かす」は世界で年間約4000万トン生じるとされています。菜種かすはたんぱく質などを豊富に含みますが、ポリフェノールやフィチン酸、グルコシノレートといった成分が栄養面での利用を妨げる「抗栄養因子」として働くため、活用が限られてきました。菜種かすのポリフェノールは2〜4%と、ほかの油糧作物より多く含まれ、たんぱく質と結びついて消化性を下げたり、苦みや渋みの原因になったりします。一方で、菜種ポリフェノールには抗酸化作用などの性質が報告されており、取り出して利用できれば価値が高まると考えられています。

ポリフェノールを取り出す従来の方法は、時間がかかる、溶媒を多く使う、効率が低いといった課題を抱えています。そこで注目されているのが、水を100℃を超える高温でも液体のまま保って抽出に使う「亜臨界水抽出」です。高温の水は性質が変わり、油になじみやすい成分も溶かしやすくなるため、有機溶媒を使わずに抽出できます。さらに、超音波で液体中に生じる微小な泡がはじける作用(キャビテーション)を利用して植物の細胞壁を壊す方法も研究されています。

研究チームによると、これまでの研究は主に単一周波数の超音波を用い、菜種かす以外の植物素材を対象としていました。そこで著者らは、周波数の異なる超音波で前処理したあとに亜臨界水で抽出する二段階の方法が、菜種かすからのポリフェノール回収にどう影響するかを明らかにすることを目的としました。

超音波の周波数を変えて比較

研究チームは、機械搾油で得られた1品種の菜種かすを粉砕して試料としました。超音波は、40kHzの単一周波数、20kHzと40kHzを同時に照射する二周波、20・40・60kHzを同時に照射する三周波の3通りを用意しました。まず条件を一つずつ変える予備実験により、超音波処理は20℃・20分・168W、亜臨界水抽出は160℃・15分・かすと水の比率1対20という条件を選びました。

そのうえで、100℃の湯で20分抽出する従来の熱水抽出、亜臨界水抽出のみ、各周波数の超音波処理のみ、各周波数の超音波前処理の後に亜臨界水抽出を行う方法を比較しました。得られた抽出液は樹脂で精製してから乾燥させ、抽出物の収量、総ポリフェノール量、フラボノイド量、アントシアニン量、抗栄養因子(タンニン、フィチン酸、グルコシノレート)の量、試験管内での抗酸化能を測定しました。抽出後に残ったかすは電子顕微鏡で表面の構造を観察しました。

二周波の超音波と亜臨界水の組み合わせで最も高い値

超音波のみで抽出した段階では、二周波が単一周波や三周波よりも多くのポリフェノールを抽出しました。著者らは、周波数を重ねるほど良いわけではなく、三周波では作用がかえって打ち消し合う面もあると考察しています。

乾燥抽出物の収量は、熱水抽出が3.44%と最も低く、二周波の超音波前処理と亜臨界水抽出を組み合わせた方法が4.60%と最も高い値でした。これは熱水抽出に比べて33.54%多い量です。この組み合わせでは、熱水抽出と比べて総ポリフェノール量が34.99%、フラボノイド量が63.12%、アントシアニン量が49.56%多くなったと報告されています。

抗栄養因子については、ポリフェノールの一種であるタンニンはどの処理でも熱水抽出より増えました。一方、精製した抽出物中のフィチン酸は熱水抽出で最も多く(1グラムあたり5.36ミリグラム)、二周波の超音波のみと、二周波の超音波と亜臨界水の組み合わせで最も少ない値(それぞれ3.90と3.98ミリグラム)でした。グルコシノレートも熱水抽出の1グラムあたり17.09マイクロモルに対し、二周波と亜臨界水の組み合わせでは10.69マイクロモルと37.45%少なくなりました。

試験管内で調べた抗酸化能も、二周波と亜臨界水の組み合わせが3種類の測定法すべてで最も高く、ラジカルを消去する割合は2つの測定法でそれぞれ77.45%と55.71%でした。著者らは、この傾向がポリフェノールやフラボノイドの量の増加と一致していることを指摘しています。電子顕微鏡による観察では、熱水抽出後のかすは表面が比較的保たれていたのに対し、二周波と亜臨界水を組み合わせた後のかすは細かく砕け、多孔質の構造になっていました。

超音波の周波数の選び方が抽出結果を左右する

著者らは、多周波の超音波前処理と亜臨界水抽出を組み合わせて菜種かすからポリフェノールに富む抽出物を得たのは、この研究が初めてだとしています。調べた条件の範囲では、二周波の超音波前処理の後に亜臨界水で抽出する方法が、収量、ポリフェノール量、抗酸化能の点で良好な結果を示し、精製した抽出物中のフィチン酸とグルコシノレートは比較的少ない結果でした。

この研究は、超音波は周波数を多く重ねるほど良いとは限らず、組み合わせ方によって亜臨界水抽出の結果が変わることを示しています。ただし、著者らが述べているとおり、使われたのは1品種の菜種かすで、実験は実験室規模で行われたものです。報告された抗酸化能も試験管内で測定した値です。

原著論文の著者・所属:Xiaoai Wang(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Sheeza Rasheed(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Jingyu Wei(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Chenchen Yao(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Yuqing Duan(Institute of Food Physical Processing, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China; School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Kai Hu(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Dongyan Chen(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)、Wenlin Li(Oil Crops Research Institute, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Wuhan 430062, China)、Haihui Zhang(School of Food Science and Engineering, Jiangsu University, Zhenjiang 212013, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiaoai Wang, Sheeza Rasheed, Jingyu Wei, et al. Effects of Multi-Frequency Ultrasound-Enhanced Subcritical Water on the Extraction of Phenolic Compounds from Rapeseed Meal. Foods 2026-10-16. DOI: 10.3390/foods15203687. 原著ライセンス:CC BY.