著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
たんぱく質が足りているとき、糖質の配合は意味を持つか
筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)は筋肉を大きくし、筋力を高める方法として広く知られています。その効果を支える栄養としてまず挙げられるのがたんぱく質ですが、たんぱく質がすでに十分にとれている場合、さらに増やしても上乗せの効果は限られると考えられています。そこで、たんぱく質以外の栄養、とくにトレーニングのエネルギー源となる糖質が、長期的な筋肉の変化をさらに後押しするのかが問われてきました。
糖質にはさまざまな種類があり、分子の大きさや構造、消化・吸収の速さ、血糖値の上がり方、おなかへの負担などが異なります。しかし、たんぱく質摂取が比較的足りている条件で、異なる糖質配合の補給食品を長期間のトレーニング中に直接比べた研究は少ないと著者らは指摘しています。研究チームは、糖質とたんぱく質を組み合わせた2種類の配合と、対照となる補給食品を比べ、8週間の筋力トレーニングで筋肉量、筋力、体組成の変化に違いが出るかを調べました。
3つのグループで8週間のトレーニングと補給を比較
対象は、筋力トレーニングの習慣がない18〜25歳の健康な男性36人です。参加者は無作為に3グループへ分けられ、参加者も研究者もどのグループに属するかを知らない「二重盲検」という方法で行われました。最後まで参加したのは33人です。
1つ目のグループは、マルトデキストリン、マルトオリゴ糖、ブドウ糖を主な糖質とし、たんぱく質を加えた配合(論文では「低分子量糖質+たんぱく質」と呼ばれています)をとりました。2つ目のグループは、イソマルツロース、高度分岐環状デキストリン、加工でん粉、果糖など複数の糖質を混ぜ、たんぱく質を加えた配合(「高分子量糖質+たんぱく質」)をとりました。2つの配合は1回分50グラムあたり約12.5グラムのたんぱく質と約32〜33グラムの糖質を含み、たんぱく質量はそろえられ、主に糖質の種類と構成が異なっていました。3つ目の対照グループは、マルトデキストリンを主成分とする補給食品をとりました。
全員が指導者の監督のもと、週3回、1回約90分の筋力トレーニングを8週間続け、補給食品を毎日50グラムとりました。トレーニングをした日は終了後30分以内に、しない日は朝食時に飲みました。試験の前後には、X線を使った体組成測定で体重、筋肉量、体脂肪量を、メジャーで腕や太もも、胸、お尻の周囲長を、超音波で太もも、上腕、胸の筋肉の厚さを調べました。さらに、1回だけ持ち上げられる最大重量などで筋力を測り、血液中のテストステロン(男性ホルモン)とコルチゾール(ストレスに関わるホルモン)、その比も調べました。なお、試験開始前の参加者のたんぱく質摂取量は体重1キログラムあたり1日約1.2グラムで、食事の摂取量に3グループ間の目立った差はありませんでした。
補給の2グループで筋肉量の増加が大きかった
8週間後、3グループすべてで体重、全身の筋肉量、筋肉の周囲長と厚さ、筋力が向上しました。そのうえで、糖質とたんぱく質を組み合わせた2グループは、対照グループよりも筋肉に関するいくつかの指標で大きな改善を示しました。
体重と全身の筋肉量では、グループによって変化の大きさが統計的に異なりました。平均の増加量は、体重が対照グループ1.3キログラム、低分子量の配合2.1キログラム、高分子量の配合2.6キログラムでした。全身の筋肉量はそれぞれ0.8キログラム、1.5キログラム、2.4キログラムでした。一方、体脂肪量の変化にはグループ間で統計的な違いは見られませんでした。
2つの配合を比べると、高分子量の配合のほうが体重と全身の筋肉量の増加が大きかったと報告されています。しかし、腕や太ももなど部位ごとの周囲長、筋肉の厚さ、筋力、血液中のホルモン指標では、2つの配合の間に一貫した差は見られませんでした。
「どちらの配合が優れているか」はまだ言えない
著者らは、たんぱく質が比較的足りている条件でも、糖質とたんぱく質を組み合わせた補給が筋力トレーニングによる筋肉の変化を追加で支える可能性があると結論づけています。
同時に、著者らは結果の受け止め方に慎重です。2つの配合は糖質の分子の大きさだけでなく、原料の種類や組成も同時に異なっていました。そのため、体重や筋肉量で見られた差を糖質の分子量そのものによるものとは言えず、どちらかの配合が全体として優れていることも示されていないとしています。この研究は、筋力トレーニング中の補給を考えるうえで、糖質の配合の違いがどこまで結果に関わるのかを、慎重に読み解く必要があることを示しています。
原著論文の著者・所属:Wanyuan Liang(China Basketball College, Beijing Sport University, Beijing 100084, China; Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Xiang Wang(China Basketball College, Beijing Sport University, Beijing 100084, China; Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Congyu Sun(Beijing Competitor Sports Nutrition Research Institute, Beijing 100029, China)、Yan Chen(Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Ye Sun(Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Dong Wang(Beijing Competitor Sports Nutrition Research Institute, Beijing 100029, China)、Jingyi Zhang(Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China; School of Education, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Chengnan Zhang(Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)、Bing Wei(Beijing Competitor Sports Nutrition Research Institute, Beijing 100029, China)、Junqiang Qiu(Beijing Sports Nutrition Engineering Research Center, Beijing 100084, China; Department of Exercise Biochemistry, Exercise Science School, Beijing Sport University, Beijing 100084, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wanyuan Liang, Xiang Wang, Congyu Sun, et al. Comparative Effects of Different Carbohydrate–Protein Formulations on Resistance Training Adaptations in Healthy Young Men. Nutrients 2026-10-25. DOI: 10.3390/nu18213513. 原著ライセンス:CC BY.