著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。
掲載誌:American Journal of Clinical Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
植物性食品を中心とした食事は、生活習慣病などの非感染性疾患のリスク低下や環境の持続可能性の面で利点があるとされます。一方で、たんぱく質の摂取量が少なくなる可能性も指摘されています。年齢を重ねると筋肉量が減りやすくなるため、高齢者にとってたんぱく質を十分にとれるかどうかは重要な問題です。
研究チームは、55歳以上の成人を対象に、筋力トレーニングと組み合わせた場合、ベジタリアン食が肉や魚を含む食事(雑食)と比べて、たんぱく質摂取量や手足の筋肉量の面で見劣りしないかを調べました。ここでのベジタリアン食は「ラクト・オボ・ベジタリアン」と呼ばれる形で、肉や魚は食べず、乳製品と卵はとる食事です。
どのように調べたか
参加者は無作為に二つのグループに分けられ、ベジタリアン食か雑食のどちらかについて食事指導を受けました。どちらのグループも12週間、週3回の筋力トレーニングを行いました。食事は参加者自身が食品を選び、体重1キログラムあたり1日1.2グラム以上のたんぱく質をとることを目標にしました。ベジタリアン食のグループはたんぱく質の60%以上を植物性食品から、雑食のグループは60%以上を動物性食品からとることを目指しました。
主に評価した項目は、3日間の食事記録から求めたたんぱく質摂取量と、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)という弱いX線を使う方法で測った手足の筋肉量です。このほか、脚で重りを押す力(レッグプレス)、椅子からの立ち座りテスト、握力も調べられました。
この試験は「非劣性」を確かめる設計でした。非劣性とは、ベジタリアン食の結果が雑食と比べて、あらかじめ決めた許容幅(たんぱく質摂取量では1日あたり体重1キログラムにつき0.12グラム、筋肉量では0.25キログラム)を超えて劣っていないと言えるかどうかを判定する考え方です。
主な結果
著者らによると、たんぱく質摂取量と手足の筋肉量のどちらについても、ベジタリアン食の非劣性は示されませんでした。雑食グループとの差は、たんぱく質摂取量で1日あたり体重1キログラムにつきマイナス0.33グラム、筋肉量でマイナス0.33キログラムと報告されています。
一方で、両グループとも、たんぱく質の摂取量と植物性・動物性の割合の目標は達成していました。ベジタリアン食のグループは1日あたり体重1キログラムにつき1.24グラムで、たんぱく質の76%が植物性でした。雑食のグループは1.58グラムで、67%が動物性でした。
手足の筋肉量は、ベジタリアン食のグループで0.38キログラム、雑食のグループで0.66キログラム増え、どちらの増加も統計的に意味のあるものでした。レッグプレスの力と椅子からの立ち座りテストの成績も両グループで向上し、グループ間の差は見られなかったと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、ベジタリアン食のグループではたんぱく質摂取量が少なく、筋肉量についても雑食に劣らないとは示せなかったと結論づけています。それでも、両グループとも1日あたり体重1キログラムにつき1.2グラム以上のたんぱく質をとることができ、筋力トレーニング期間中に筋肉量、筋力、体の機能が向上したとしています。肉や魚を食べない食事を選ぶ高齢者でも、目標を立てて食品を選べば必要とされる量のたんぱく質をとりながら筋力トレーニングの効果を得られる一方、雑食と比べた差は残りうることを示した研究といえます。
著者:Sophie L. van Oppenraaij(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health, Sport and Physical Activity, Amsterdam University of Applied Sciences, Amsterdam, The Netherlands; Amsterdam Public Health Research Institute, Aging and Later Life, Vrije Universiteit Amsterdam, The Netherlands. Electronic address: [email protected])、Peter J.M. Weijs(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health, Sport and Physical Activity, Amsterdam University of Applied Sciences, Amsterdam, The Netherlands; Amsterdam Public Health Research Institute, Aging and Later Life, Vrije Universiteit Amsterdam, The Netherlands; Department of Nutrition and Dietetics, Amsterdam University Medical Center, The Netherlands)、Sjors Verlaan(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health, Sport and Physical Activity, Amsterdam University of Applied Sciences, Amsterdam, The Netherlands; Department of Surgery, Radboud University Medical Center, Nijmegen, The Netherlands)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sophie L. van Oppenraaij, Peter J.M. Weijs, Sjors Verlaan. Effects of a self-selected vegetarian compared with an omnivorous diet on protein intake and muscle mass in older adults during resistance exercise: the IMPACT randomized controlled trial. American Journal of Clinical Nutrition 2026-09-22. DOI: 10.1016/j.ajcnut.2026.101533. 原著ライセンス:CC BY.