著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Veterinary Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

鶏肉生産では、高密度飼育や環境ストレスに加え、抗生物質の使用制限が進んでいます。こうした中で、鶏の健康と肉の質をどう保つかが課題になっています。その対策の一つとして研究されているのが、植物由来の成分を飼料に加える方法です。

研究チームが注目したのは、アジアに広く分布するカジノキ(英名ペーパーマルベリー)です。カジノキにはフラボノイドと呼ばれる植物成分が含まれており、抗酸化作用などが知られています。肉用鶏であるブロイラーでは、これまでも他の植物のフラボノイドが筋肉の発達や肉質に関わるとする報告がありました。しかし、カジノキ由来フラボノイドがふ化後の筋線維の発達や筋肉の代謝にどう影響するかは、十分に分かっていませんでした。

そこで著者らは、カジノキ由来フラボノイドを飼料に3段階の量で加え、ブロイラーの胸肉ともも肉を調べました。目的は、効果的な添加量を探ることと、筋肉の質の変化に伴う代謝の違いを探索することです。

どのように調べたか

実験には、生後1日のブロイラー240羽を使いました。鶏は4つのグループに無作為に分けられました。一つは基本の飼料のみを与える対照群です。残りの3群には、飼料1kgあたり100mg、200mg、300mgのカジノキ由来フラボノイドを加えた飼料を与えました。飼育期間は42日間です。使用した製品は、供給元の品質情報で総フラボノイドが約40%とされ、主な成分はケルセチンやケンフェロールなどでした。

飼育後、胸肉ともも肉について、肉の質に関わる指標を測定しました。保存中に流れ出る水分(ドリップロス)、加熱による重量減少(クッキングロス)、pH、かみ切る際の力(せん断力、肉の硬さの目安)、肉の色です。肉の色は、明るさ、赤み、黄色みの3つの値で評価しました。

顕微鏡では、筋肉を構成する細長い細胞である筋線維の太さと密度を調べました。また、筋肉の抗酸化力に関わる酵素の働きと、脂質の酸化の目安となる物質(MDA)の量も測りました。さらに、全体の結果が最もそろって良好だった200mg群については、対照群と比較する代謝物の網羅的分析(メタボロミクス)を行いました。これは筋肉中の多数の小さな分子を一度に検出し、グループ間の違いを探る手法です。

主な結果

水分の保持については、胸肉のクッキングロスが100mg群と200mg群で対照群より低くなりました。もも肉のドリップロスは3つの添加群すべてで低下しました。一方、肉の硬さの目安であるせん断力には、どの群でも差がありませんでした。著者らは、この結果から肉が柔らかくなったとは言えないと述べています。pHは胸肉の200mg群と300mg群、もも肉の200mg群で低下しました。ただし著者らは、pHの低下はそれ自体を利点とみなすのではなく、水分保持や色の結果と合わせて解釈すべきだとしています。

肉の色では、胸肉の赤みが3つの添加群すべてで高く、200mg群で最も高くなりました。もも肉では、200mg群で赤みが高まりました。黄色みは200mg群と300mg群で低くなりました。

筋線維を観察すると、添加群では筋線維がより細く、密に並ぶ傾向が見られました。胸肉では200mg群で筋線維が細くなり、密度はすべての添加群で高まりました。もも肉では、すべての添加群で筋線維が細くなり、密度は200mg群と300mg群で高まりました。

抗酸化の指標では、添加によって抗酸化力や抗酸化酵素の働きが高まりました。脂質の酸化の目安であるMDAは減少しました。著者らは、両方の筋肉で最も一貫した反応が見られたのは200mg群だったと報告しています。

代謝物の分析では、200mg群と対照群の間で、胸肉では75種類、もも肉では65種類の代謝物に差が見られました。胸肉ではアミノ酸に関わる経路(フェニルアラニン代謝など)が目立ちました。もも肉では、コレステロール代謝や脂肪酸の代謝など脂質に関わる経路が目立ちました。ただし、この分析は各群3羽分という少数の試料で行われ、量を正確に測るものでもありません。そのため著者らは、得られた結果は関連を示す探索的なものであり、因果関係を示す証拠ではないと位置づけています。

この研究が示すこと

この研究は、カジノキ由来フラボノイドを飼料に加えると、ブロイラーの胸肉ともも肉で、水分保持、色、筋線維の状態、抗酸化の指標の一部が変化したことを報告しています。特に1kgあたり200mgの添加で、こうした変化が最もそろって見られました。

一方で、肉の柔らかさには差がありませんでした。代謝の違いも、肉質の変化と関連する可能性を示した段階にとどまります。著者らは、200mgの添加量が肉質の一部の指標を改善する有望な水準であると結論づけるとともに、その仕組みについては慎重に解釈する必要があることも示しています。

原著論文の著者・所属:Min Yang(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Enze Zhang(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Bingyu Zhu(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Hailong Wang(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Xing Zhou(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Mengling Peng(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Jie Zhou(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)、Jianbo Cheng(College of Animal Science and Technology, Anhui Agricultural University, Hefei)、Xiuheng Xue(College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei)、Juhua Wang(College of Veterinary Medicine, Anhui Agricultural University, Hefei)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Min Yang, Enze Zhang, Bingyu Zhu, et al. Dietary Broussonetia papyrifera flavonoids affect broiler muscle fiber development, meat quality, antioxidant capacity, and muscle metabolomic profiles. Frontiers in Veterinary Science 2026-08-06. DOI: 10.3389/fvets.2026.1891551. 原著ライセンス:CC BY.