著者の所属・活動拠点の国は、ポーランドです。

掲載誌:Frontiers in Environmental Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

著者らは、植物性食品を中心とする食事への移行が、人・動物・環境の健康にどのように関わるかを、既存の研究から整理しました。土台としたのは、この三つの健康を互いにつながるものとして扱う「ワンヘルス」という考え方です。

論文は、気候変動、生物多様性の損失、薬が効きにくい病原体の広がり、動物から人にうつる感染症、慢性疾患などを背景に、食事の変化を個人の栄養だけでなく、食料の生産や供給にも関わる対策として検討しています。

何を、どのように調べたか

この論文は、新たに参加者を集めた実験ではなく、関連する知見を文章で整理するナラティブレビューです。動物性食品を完全に除く食事だけでなく、一部を残しながら植物性食品の割合を増やす食事も扱っています。

著者らは、感染症や薬剤耐性、心血管疾患や2型糖尿病などの健康問題に加え、温室効果ガス、土地や水の利用、生物多様性、動物福祉に関する研究を取り上げました。食習慣と健康の関係を調べた観察研究、食事を変える介入研究、世界規模の食料需要の変化を想定したモデル研究などを参照し、栄養面や政策面の課題も検討しています。提供された抜粋では、文献検索に使ったデータベースや採択基準の詳細は確認できません。

主な報告結果

著者らは、集約的な畜産への依存を減らすことで、動物から人へ病原体が移るリスクや、畜産での抗菌薬使用を支える要因を弱められる可能性があると整理しました。ただし、動物性食品への需要の減少が、実際に生産の仕組みや飼育方法の変化につながることが条件です。紹介されたイタリアの集団研究では、調べた一部の薬剤耐性遺伝子の総量は、動物性食品も食べる人より完全菜食の人で少なく、菜食の人はその中間でした。

人の健康については、栄養を適切に整えた植物性中心の食事が、心血管疾患、2型糖尿病、肥満、一部のがんの予防や管理に役立つ可能性を示す研究をまとめています。例えば、2型糖尿病の人を対象とする研究では、体重や血糖、血中脂質の改善が報告されていました。著者らが重視しているのは、単に動物性食品を避けることではなく、果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツなどを中心に食事の質を高めることです。

環境面では、家畜の放牧地や飼料用作物への需要が減ることなどを通じ、温室効果ガス排出、土地利用、水利用を減らせる可能性が示されました。論文が紹介した世界規模のモデル研究では、2050年までに牛肉、鶏肉、豚肉、牛乳の50%を植物性の代替たんぱく源に置き換える想定で、2020年に比べて温室効果ガス排出量が31%、農地面積が12%、水利用量が10%減ると推計されています。これは実際に達成された削減量ではなく、想定した条件に基づく計算結果です。

この報告が示すこと

著者らの結論は、植物性食品を増やす食事を、ワンヘルスに基づく幅広い対策の一部に位置づけるというものです。食事の変更だけで動物由来の感染症や薬剤耐性を防げるわけではなく、農場の衛生管理、監視体制、抗菌薬の適正使用などに代わるものではありません。また、慢性疾患に関する知見の多くは観察研究に由来し、食事と薬剤耐性遺伝子の関係も因果関係を示したものではないとしています。

利益が得られるかどうかは、食事と生産の両方の質に左右されます。完全菜食では、とくにビタミンB12を強化食品やサプリメントから確保するなど、栄養面の計画が重要です。環境面でも、森林破壊につながる作物への置き換えを避け、土地や水を適切に管理する必要があります。著者らは、誰もが同じ食事を採用することではなく、地域の食文化や食品の価格・入手しやすさを踏まえ、栄養を確保しながら移行を支えることに意味があると述べています。

原著論文の著者・所属:Anna Choręziak(Department of Environmental Medicine, Poznan University of Medical Sciences; Doctoral School, Poznan University of Medical Sciences)、Piotr Rzymski(Department of Environmental Medicine, Poznan University of Medical Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anna Choręziak, Piotr Rzymski. Integrating plant-based diets into the One Health approach. Frontiers in Environmental Science(出版社:Frontiers Media) 2026-09-14. DOI: 10.3389/fenvs.2026.1883105. 原著ライセンス:CC BY.