著者の所属・活動拠点の国は、ドイツ、スイスです。
掲載誌:Powder Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:植物性ミルク粉末の「ダマ」問題
豆類や穀物などから作られる植物性ミルク代替品は、栄養価があり、従来の乳製品より環境負荷が低いことから、食品への利用が広がっています。論文の抄録によると、こうした製品を粉末にした場合、水に戻す(再溶解させる)際に課題があります。植物由来のたんぱく質や食物繊維がダマを作りやすく、粉が水になじむこと(ぬれ)や溶けることを妨げてしまうためです。
粉末食品を溶けやすくする方法として、「流動層造粒」が広く使われています。これは、下から送る空気で粉末の粒子を浮かせて動かしながら液体を噴霧し、粒子同士を結び付けて、より大きな粒(凝集体)にする加工法です。しかし研究チームは、原料の配合(組成)と加工条件が植物性ミルク代替品の溶けやすさにどう組み合わさって影響するのかは、これまで体系的に調べられていなかったと指摘しています。この点を明らかにすることが本研究の目的です。
何を調べたか
研究チームは、主な成分の特徴が異なる代表的な3種類の植物性ミルク代替品の配合を用意し、それぞれを流動層で造粒しました。抄録からは、たんぱく質を多く含む配合、食物繊維を多く含む配合、そして比較の基準となる炭水化物の多い配合の3種類だったことが読み取れます。
実験には「実験計画法」と呼ばれる統計的な手法が用いられました。これは、複数の条件をあらかじめ計画的に組み合わせて変化させ、それぞれの条件の影響や条件同士の相互作用を統計的に分析する方法です。著者らはこの手法を使い、配合と流動層の加工条件が、粉末の構造、ぬれやすさ、そして水に戻す際のダマの形成にどのように関わるかを調べました。
主な結果
抄録によると、凝集体の成長、つまり粒がどれだけ大きくなるかを主に左右していた加工条件は、液体の噴霧速度と噴霧に使う空気の圧力でした。一方、粉末のぬれやすさには配合の組成が強く影響していました。
ぬれやすさの指標として、研究チームは「接触角」を測定しています。接触角とは、表面に置いた液滴がその表面となす角度のことで、角度が大きいほど液体がはじかれやすく、ぬれにくいことを意味します。たんぱく質や食物繊維を多く含む配合は、炭水化物の多い基準配合に比べて接触角が大きく、ぬれにくいことが示されました。
さらに、接触角とダマの直径との間には相関が見られました。著者らはこの結果から、粉末が水に戻る過程では、ぬれの段階が全体の速さを決める律速段階になっていると解釈しています。
研究が示すこと
この研究は、植物性ミルク代替品の粉末の溶けやすさが、加工条件だけでなく原料の組成にも大きく左右されることを示しています。粒の大きさは主に噴霧の条件で決まり、ぬれやすさは配合によって変わるという役割の違いが整理されました。著者らは、実験計画法で得られたモデルが、配合ごとに流動層の加工条件を調整し、粉末の構造を目的に合わせて整えてダマの形成を抑えるための枠組みになるとしています。
原著論文の著者・所属:K. Kramm(Hamburg University of Technology, Institute of Solids Process Engineering and Particle Technology, Denickestraße 15, 21073 Hamburg, Germany)、S. Pietsch-Braune(Hamburg University of Technology, Institute of Solids Process Engineering and Particle Technology, Denickestraße 15, 21073 Hamburg, Germany)、V. Meunier(Nestlé Research, Vers-Chez-Les-Blanc, Route du Jorat, 1005 Lausanne, Switzerland)、K. Haas(Nestlé Research, Vers-Chez-Les-Blanc, Route du Jorat, 1005 Lausanne, Switzerland)、S. Heinrich(Hamburg University of Technology, Institute of Solids Process Engineering and Particle Technology, Denickestraße 15, 21073 Hamburg, Germany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):K. Kramm, S. Pietsch-Braune, V. Meunier, et al. Influence of fluidized bed process parameters and material properties on plant powder characteristics and reconstitution behavior. Powder Technology 2026-08-06. DOI: 10.1016/j.powtec.2026.123065. 原著ライセンス:CC BY.