掲載誌:Asian Journal of Dairy and Food Research

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

魚は微生物や酵素の働きで傷みやすく、収穫後の損失が大きい食品です。インドの淡水養殖で重要なコイ科の魚ロフ(学名Labeo rohita)も例外ではありません。合成保存料への懸念が高まるなか、研究チームは、インドの家庭で昔から魚の保存に使われてきた塩とターメリックに注目しました。

著者らは、冷蔵・塩・ターメリックを組み合わせることで微生物の増殖を何重にも妨げ、腐敗を遅らせられると考えました。本研究では、頭と内臓、うろこを取り除いた丸ごとのロフを冷蔵保存し、塩やターメリックの処理が加熱調理時の性質や食味の評価にどう関わるかを調べています。

どのように調べたか

研究チームは、2020年7月にインド西ベンガル州の養魚場で水揚げされたロフを氷詰めで研究室へ運びました。洗浄後に頭・内臓・うろこを除き、1尾約70〜100グラムに整えています。魚は、何も加えない対照群、塩1%を加えた群、塩1%とターメリック1%を加えた群の3つに分けられ、4±1℃で13日間冷蔵されました。

保存中、著者らは魚を油で揚げ焼きし、加熱前後の重さから「調理歩留まり」(加熱後に残った重さの割合)と「調理損失」(加熱で失われた重さの割合)を求めました。あわせて、加熱による体長の縮み具合(収縮率)も測っています。さらに6人以上の経験ある評価者が、加熱した魚の色、形、におい、味、食感を9段階の好みの尺度で採点し、それらを所定の式でまとめた官能評価スコアを算出しました。

主な結果

論文によると、3群とも保存日数が進むにつれて調理歩留まりは下がり、調理損失と収縮率は増えました。保存13日目の塩とターメリックを併用した群の値は、調理歩留まり53.17%、調理損失46.83%、体長の収縮率6.74%でした。塩だけの群では同じ日の調理歩留まりが52.03%、調理損失が47.97%でした。著者らは、併用群が塩だけの群より歩留まりが高く損失が少なかったと報告しています。収縮率は併用群が3群のなかで最も低く、対照群は6.98%、塩だけの群は6.95%でした。なお、13日目の対照群の値は調理歩留まり53.77%、調理損失46.23%と報告されています。

官能評価スコアは、対照群で保存初日の12.02から13日目に6.00へ、併用群で12.85から6.94へ下がりました。塩だけの群は10日目まで対照群より高いスコアを保ちましたが、その後大きく下がって5.24になりました。評価期間中、全群が論文で食用に適さないとされる基準(5未満)を上回っていましたが、併用群のスコアが最も高く推移しました。

研究が示すこと

著者らは、塩とターメリックを併用した魚は、他の2群より冷蔵中の保存安定性が良く、食味の評価も保たれたと結論づけています。その理由について論文では、ターメリックの抗菌・抗酸化作用と、塩による脱水作用が相乗的に働いたためと考察しています。ただし、この研究で直接測ったのは調理特性と官能評価であり、微生物の量などは調べていません。

本研究は、インドの食文化で受け継がれてきた塩とターメリックによる下処理を冷蔵保存と組み合わせ、加熱時の品質と食味の面から比べたものです。著者らは、この組み合わせを手軽で経済的な保存方法の候補として位置づけています。

原著論文の著者・所属:Ankures Bhattacharya、Supratim Chowdhury

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ankures Bhattacharya, Supratim Chowdhury. Role of Salt and Turmeric in Modulating Cooking and Organoleptic Traits of Whole Gutted Rohu (Labeo rohita) under Refrigerated Storage (4±1°C). Asian Journal of Dairy and Food Research 2026-08-06. DOI: 10.18805/ajdfr.dr-2479. 原著ライセンス:CC BY.