著者の所属・活動拠点の国は、セルビアです。

掲載誌:Insects

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

研究の背景と目的

世界人口の増加に伴い、人が直接食べる分だけでなく、家畜や養殖魚のエサとしてもタンパク質の需要が高まっています。家畜飼料の主なタンパク源である大豆粕や魚粉は価格が高く変動しやすいうえ、大豆栽培は森林破壊や水の使用、魚粉は野生の魚資源の限界といった問題を抱えています。そこで欧州を中心に、昆虫を新しいタンパク源として利用する研究が進んでいます。

本研究の対象は、ゴミムシダマシ科の甲虫ツヤケシオオゴミムシダマシ(Zophobas morio)の幼虫で、「スーパーワーム」や「ジャイアントミールワーム」とも呼ばれます。生産や栄養の面で有望とされる一方、近縁のチャイロコメノゴミムシダマシ(ミールワーム)に比べて研究が少なく、どのようなエサが適しているかについての知識は限られています。研究チームは、9種類の飼料原料をそれぞれ単独で与えたときに、幼虫の成長や生産効率、エサの消化のされ方、幼虫自身の成分がどう変わるかを調べました。

どのように調べたか

実験には、ふ化から約4週間育てた平均体重0.030グラムの幼虫を用いました。小さなプラスチック容器1つに約68匹(計2グラム)を入れ、1種類のエサにつき4つの容器を用意し、温度28度前後の暗い環境で飼育しました。比較の基準(対照)となるエサは、昆虫飼育で一般的な小麦ふすまです。水分は、栄養をほとんど加えない寒天で与えました。

幼虫は週に1回、容器ごとに数と総重量を測り、1匹あたりの平均体重も計算しました。最も成長の早かった小麦ふすま区で成長が止まった時点で、すべての区の実験を同時に終えています。生産の現場では飼育期間の長さが重要になるため、同じ飼育期間で比べるという考え方です。

成績の指標の一つが「飼料要求率」で、幼虫の重量を1グラム増やすのに何グラムのエサを消費したかを表し、値が小さいほど効率よく体重に変えられたことを意味します。また別の実験で、食べたエサとふんの量や熱量を比べ、エサのうちふんとして出ずに体内に取り込まれたとみなせる割合(見かけの消化率)と、ふんに失われた分を差し引いたエネルギー量(可消化エネルギー)を求めました。

主な結果

9種類のうち2種類は途中で評価できなくなりました。エンドウ豆を与えた区では早い段階で死亡が急増して全滅し、大豆グリッツ(砕いた大豆)を与えた区では共食いが激しく起こり、大きな幼虫が数匹残るだけになりました。著者らは、エネルギーとタンパク質のバランスの悪さや、エンドウ豆に含まれる消化を妨げる成分などが関係した可能性を挙げていますが、原因は今回の結果からは確定できないとしています。

残る7種類(小麦ふすま、菜種粕、ひまわり粕、パン粉、小麦、ライ小麦、穀物からアルコールを作った後の乾燥残さであるDDGS)のうち、1匹あたりの平均体重が最も大きかったのは小麦ふすま区で、604ミリグラムでした。ライ小麦、小麦、ひまわり粕の区はその5〜6割程度で、パン粉、DDGS、菜種粕の区が最も振るいませんでした。飼料要求率は小麦ふすまの2.55からパン粉の17.50まで大きな幅があり、ひまわり粕は2.80と小麦ふすまに近い値でした。死亡率が最も低かったのもひまわり粕の区です。パン粉は小麦粉が原料でありながら幼虫がほとんど食べず、著者らは乾燥しすぎていることや硬い粒が含まれることが影響した可能性を指摘しています。

消化の実験では、小麦ふすまの乾物消化率は0.43、可消化エネルギーは乾物1キログラムあたり8.50メガジュールで、ミールワームを対象にした先行研究と近い値でした。可消化エネルギーが最も高かったのはでんぷんの多い小麦(10.40メガジュール)、最も低かったのは菜種粕(5.54メガジュール)でした。ひまわり粕は成長が比較的良かった一方で消化率は0.31と低く、著者らは殻に由来する繊維の多さが関係している可能性を挙げています。

幼虫の体の成分もエサによって大きく変わりました。乾物あたりのタンパク質含量はひまわり粕区で最も高く、パン粉区で最も低い結果でした。でんぷんの多いライ小麦、小麦、パン粉の区では脂質含量が高くなり、タンパク質の多いDDGS区でも脂質は比較的高めでした。

研究が示すこと

この研究は、ジャイアントミールワーム幼虫の育ち方、エサの消化のされ方、体の成分が、与えるエサによって大きく左右されることを示しました。栄養成分だけでなく、エサの乾燥具合や硬さといった物理的な性質や、食べなくなる、共食いするといった行動の変化も成績に影響していました。

特に、繊維が多く昆虫のエサに向かないと考えられがちなひまわり粕が比較的良い成績を示した点について、著者らは、こうした原料も選択肢から外すべきではない可能性を示すものとしています。ただし今回の結果は各原料を単独で与えた場合のものであり、成績が劣った原料が、栄養バランスを整えた配合飼料の一部としても不向きだという意味ではないと著者らは強調しています。

原著論文の著者・所属:Polovinski Horvatović M(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Jajić I(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Vukadinović M(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Petrović M(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Beuković D(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Laćarac N(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)、Ivković M(Faculty of Agriculture, University of Novi Sad, Trg Dositeja Obradovića 8, 21000 Novi Sad, Serbia.)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Polovinski Horvatović M, Jajić I, Vukadinović M, et al. The Effects of Different Feed Substrates on Production Performance, Digestibility, and Chemical Composition of <i>Zophobas morio</i> Larvae. Insects 2026-10-12. DOI: 10.3390/insects17101049. 原著ライセンス:CC BY.