著者の所属・活動拠点の国は、トルコ、ポーランドです。
掲載誌:Food Science of Animal Resources
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:捨てられる柑橘の皮を肉の保存に生かす
鶏肉は世界中で広く食べられている動物性たんぱく質源ですが、低温で保存していても傷みやすい食品です。酸素や肉に含まれる酵素、微生物の働きによって、pH(酸性・アルカリ性の度合い)の変化やぬめりの発生、組織の分解が起こります。
そこで注目されているのが「可食フィルム」です。食品の表面を直接覆う、食べられる素材の薄い膜のことで、微生物の増殖や酸素・水蒸気の出入りを抑え、保存期間を延ばす役割が期待されています。素材の一つであるゼラチンは膜を作りやすい一方、それ自体には酸化を防ぐ働きや抗菌性がもともと備わっていないという弱点があります。
一方、柑橘類については、廃棄物のおよそ50〜60%が消費や加工の後に食べられない状態になるとされ、そこには皮や種、果肉の残り、房の残りかすが含まれます。柑橘の皮にはフェノール化合物やフラボノイドといった成分が豊富に含まれます。研究チームは、グレープフルーツ、オレンジ、レモンの皮から得た抽出物をゼラチンフィルムに加え、冷凍保存中のチキンバーガーの品質を保てるかを調べました。
どのように調べたか
著者らは、市場で購入したグレープフルーツ、オレンジ、レモンの皮を乾燥・粉砕し、70%エタノールと超音波を使って成分を抽出しました。まず、それぞれの抽出物に含まれるフェノール化合物の量と、抗酸化力(物質の酸化を防ぐ力)を測定しました。
次に、鶏の胸肉ともも肉からチキンバーガーを作り、抽出物を1%、2%、4%の濃度で加えたゼラチンフィルムで包みました。これらを、フィルムで覆っていない対照群などの比較用グループと比べながら、147日間冷凍保存しました。
保存中には、肉の傷み具合を示す複数の指標を測りました。pHのほか、たんぱく質の分解で生じるアンモニアなどの量を示す「揮発性塩基窒素(TVB-N)」、脂質が酸化した初期段階を示す「過酸化物価(PV)」、酸化がさらに進み、においや風味の悪化につながる物質の量を示す「TBARS値」、そして微生物の数です。
主な結果:グレープフルーツの皮、4%の濃度で効果が最も大きかった
抽出物の分析では、3種類の間に明確な差がありました。フェノール化合物の量は、グレープフルーツが1グラムあたり598.45mg(没食子酸換算)、オレンジが428.62mg、レモンが364.8mgでした。抗酸化力もグレープフルーツが最も高く(687.48µmol トロロックス/g)、レモンが最も低い値(227.40µmol トロロックス/g)でした。
保存開始時には、どのグループの間にもpHやTVB-Nの差は見られませんでした。保存が進むと、すべてのグループで数値が上がりましたが、柑橘の皮の抽出物入りフィルムで包んだバーガーは、対照群より一貫して低い値を保ちました。147日後のpHは、開始時の6.10から、4%抽出物のグループで6.77〜6.88に上がりました。これに対して、比較用のC群とG-C群ではいずれも7.13まで上昇しました。
TVB-Nは、グレープフルーツ4%のグループで100gあたり11.20mg Nと最も低く、対照群では20.30mg Nと最も高い値でした。論文は、エジプトの規格で鶏肉の新鮮さの目安が10〜15mg N、廃棄の基準が20mg Nとされていることを紹介しています。
脂質の酸化でも同様の傾向が見られました。過酸化物価は、開始時の1.00 meq O₂/kgから、保存終了時には対照群で7.00、グレープフルーツ4%のグループで4.50になりました。TBARS値も開始時はどのバーガーも0.15mg MDA/kgでした。147日後には、比較用のC群が1.01、G-C群が0.92だったのに対し、4%抽出物のグループはグレープフルーツ0.74、オレンジ0.75、レモン0.80(いずれもmg MDA/kg)にとどまりました。
著者らは、微生物数についても、抽出物入りフィルムのグループが覆っていない対照群より低かったと報告しています。また、効果は抽出物の濃度が高いほど大きく、4%の配合で最も高い保護効果が得られました。3種類の中では、グレープフルーツの皮の抽出物が最も効果的だったとしています。
この研究が示すこと
著者らは、柑橘の加工で出る皮を、生分解性のゼラチンフィルムに加えることで、肉製品の天然の保存素材として生かせる可能性を示したとしています。農産物の副産物を有効に活用しながら、環境に配慮した食品包装につなげるという考え方を示す結果です。
一方で、著者ら自身が限界も挙げています。抗酸化力を測ったのは抽出物単体で、抽出物を加えた後のフィルムの抗酸化力は直接測っていません。また、今回確かめたのは冷凍保存の条件に限られます。冷蔵保存での効果や、効果が生まれる詳しい仕組みは、今回の研究では明らかにされていません。
原著論文の著者・所属:Farhat Khalily(Department of Animal Production and Technologies, Faculty of Agricultural Sciences and Technologies, Niğde Ömer Halisdemir University, Niğde, Turkey)、İlknur Uçak(Department of Animal Production and Technologies, Faculty of Agricultural Sciences and Technologies, Niğde Ömer Halisdemir University, Niğde, Turkey)、Qurat ul ain Sajid(Department of Animal Nutrition and Feed Sciences, Wrocław University of Environmental and Life Sciences, 25 C.K. Norwida St., 51-630, Wrocław, Poland. [email protected])、Muhammad Umair Asghar(Department of Animal Nutrition and Feed Sciences, Wrocław University of Environmental and Life Sciences, 25 C.K. Norwida St., 51-630, Wrocław, Poland. [email protected])
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Farhat Khalily, İlknur Uçak, Qurat ul ain Sajid, et al. Citrus peel extract–enriched gelatin edible films as natural preservatives to enhance the shelf life and quality of chicken burgers. Food Science of Animal Resources 2026-09-28. DOI: 10.1007/s44463-026-00110-8. 原著ライセンス:CC BY.