著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。

掲載誌:Food Hydrocolloids

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

傷みやすいブルーベリーを守るコーティングを目指して

ブルーベリーは非常に傷みやすい果実です。保存中に劣化が進むと、栄養や風味にかかわる重要な特性が失われていきます。研究チームは、果実の表面を薄い膜で覆う「コーティング」によって、この劣化を遅らせる方法に取り組みました。

土台に使ったのは、セルロースを加工した多糖類のカルボキシメチルセルロース(CMC)です。研究チームは、多糖類を主成分とするコーティングについて、水分の出入りを防ぐ性能(水分バリア性)を高めることを目的にしました。

油とナノファイバーを組み合わせる

研究チームは、CMCにブドウ種子油(グレープシードオイル)とセルロースナノファイバー(CNF)を加えたコーティングを作りました。ブドウ種子油の濃度は0〜0.1重量%の範囲で変えています。CNFは、セルロースをナノメートル単位の極めて細い繊維にした素材です。

CNFには由来の異なる2種類を用いました。1つはコーヒーの抽出かす(使用済みコーヒー粉)から得たCNFです。もう1つは細菌に由来するCNF(バクテリアセルロースナノファイバー)です。著者らによると、前者は繊維の長さと太さの比である「アスペクト比」が低く、後者はアスペクト比が高く純度も高い繊維です。研究チームは、こうした繊維の特徴の違いが、膜の性質や果実の保存効果とどのように関係するかを比べました。

抄録によると、CNFはCMCの高分子鎖と強く相互作用し、緻密な構造を作りました。このときCNFは複数の役割を担ったとされています。1つは、膜の中に散らばる微細な充填材として、水が膜の中を拡散する経路を曲がりくねったものにする役割です。もう1つは、油を保持する担体として、膜の撥水性を高める役割です。

細菌由来のナノファイバーで保存効果が最も高く

保存効果が最も高かったのは、細菌由来のCNFを含むコーティングでした。中でも、細菌由来CNFとブドウ種子油0.1重量%をCMCに加えたもの(論文中の名称はCB-0.1)が最良だったと報告されています。このコーティングでは果実の劣化が最も遅く、腐敗率はコーティングなしの果実に比べて最大18%低くなりました。また、劣化を早める条件で保存する加速保存試験において、最長12日間にわたり果実の品質を保ったとされています。

著者らは、細菌由来CNFのアスペクト比が高いことを利点として挙げています。アスペクト比が高いことで相互作用できる部位が多くなり、繊維同士の絡み合いも生じたと説明しています。その結果、CMCとのなじみが良くなり、油滴が安定し、まとまりのある膜構造ができたとしています。こうした膜は、コーヒーかす由来CNFの膜に比べて、バリア性能と機械的性能も優れていました。

研究チームは、試料を凍らせた状態で観察する低温走査電子顕微鏡(クライオSEM)で果実の表面も調べました。CB-0.1のコーティングはブルーベリーの表面によくなじみ、追加の保護層を形成していました。このとき、果皮を覆う白い粉状の層である「ブルーム」は保たれていました。一方、コーヒーかす由来CNFのコーティングはブルームに浸み込み、その構造を乱していたと報告されています。

繊維の性質を調整して果実に合わせる

この研究からは、同じセルロースナノファイバーでも、由来や繊維の特徴の違いによって、コーティングの性能や果実表面との相性が変わることがうかがえます。著者らは、この研究を「調整可能な」ブルーベリー保存手法として位置づけ、CNFの性質を変えることで、果実ごとに異なる生理的な特徴に合わせられるとしています。また、収穫後の損失を減らせる可能性も示したと述べています。

原著論文の著者・所属:Lilah Saidi(School of Chemical Engineering, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia)、Carol Hiu Wai Yan(Electron Microscope Unit, Mark Wainwright Analytical Centre, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia)、Yong Wang(School of Chemical Engineering, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia)、Peter Richard Wich(Australian Centre for NanoMedicine, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia; School of Chemical Engineering, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia)、Cordelia Selomulya(School of Chemical Engineering, University of New South Wales, Sydney, NSW 2052, Australia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lilah Saidi, Carol Hiu Wai Yan, Yong Wang, et al. Enhanced water-barrier carboxymethyl cellulose coatings reinforced with grapeseed oil and cellulose nanofibers for blueberry preservation. Food Hydrocolloids 2026-07-28. DOI: 10.1016/j.foodhyd.2026.113166. 原著ライセンス:CC BY.