著者の所属・活動拠点の国は、ウクライナです。

掲載誌:Eastern-European Journal of Enterprise Technologies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究のねらい

クリームやプリンのような乳デザートでは、なめらかさや適度なとろみが品質の重要な要素です。脂肪を減らして低カロリーにすると、こうした食感の土台となる構造をどう作るかが課題になります。そのため、たんぱく質やでんぷん、食物繊維などを組み合わせた「安定剤」がよく使われます。

研究チームによると、これまでの研究は特定の二つの成分の組み合わせを扱うものが中心でした。製造中に乳の混合液を加熱しながら撹拌する工程(加熱・機械処理)が、複数成分の安定剤とどう関わって構造を作るのかは、十分に調べられていませんでした。

そこで著者らは、バターを作るときに出るバターミルクと、膜ろ過で濃縮された側の液であるリテンテートという、乳製品製造の副産物を原料にしました。これらを使ったクリームとプリンを試作し、加熱温度と撹拌の回転速度が、デザートの粘り気と内部の粒子の状態にどう影響するかを調べました。

何を調べたか

安定剤には、たんぱく質の成分と炭水化物の成分を組み合わせたものを使いました。クリームには乳清たんぱく質濃縮物、イヌリン、ペクチンなどを使いました。プリンには乳清たんぱく質濃縮物、でんぷん、ゼラチン、米粉を使いました。

乳の混合液は、回転式の乳化装置で処理しました。温度は20〜85℃、撹拌の回転速度は毎分2800〜7200回転の範囲で条件を変えています。そのうえで、とろみの指標となる粘度を測り、見た目や味、食感などを人が評価する官能評価を行いました。さらに、顕微鏡写真で内部の粒子の大きさの分布を観察しました。

主な結果

論文によると、温度85℃、回転速度毎分2800回転で処理した試料が、官能評価で最も好ましい結果となりました。この条件での粘度は、バターミルクを原料にしたクリームが2950mPa·s、プリンが8120mPa·sでした。リテンテートを原料にした場合は、クリームが4150mPa·s、プリンが10050mPa·sでした。20℃のときと比べると、85℃では粘度がプリンで2.7〜3.0倍、クリームで1.3〜1.7倍に高まったと報告されています。

著者らはこの変化について、加熱によって安定剤のたんぱく質や炭水化物の大きな分子が水を含んでほどけ、立体的なゲルの網目ができるためだと説明しています。

顕微鏡観察では、処理前の混合液には600〜800マイクロメートルに達する大きなかたまりがあり、構造が不均一でした。処理後は、クリームで100マイクロメートル以下、プリンで150マイクロメートル以下の細かくそろった粒子からなる構造に変わりました。

粒子の分布は製品と原料によって異なりました。プリンでは、50〜100マイクロメートルの粒子がリテンテート原料で最大60%、バターミルク原料で最大90%を占めました。クリームでは、リテンテート原料で50〜100マイクロメートルの粒子が最大80%を占めました。一方、バターミルク原料では10マイクロメートル未満の粒子が最大90%を占めました。研究チームは、こうした均一な構造は、たんぱく質と炭水化物が結びついた複合体ができた結果だとしています。プリンでは「たんぱく質とでんぷん」、クリームでは「たんぱく質と食物繊維」の複合体です。

この研究が示すこと

この研究は、低カロリーの乳デザートでも、加熱と撹拌の条件を選ぶことで、たんぱく質と炭水化物の成分が結びつき、均一でなめらかな構造を作れることを示しています。

ただし著者ら自身も、この結果は調べた温度と回転速度の範囲内のものだと述べています。また、特定の装置、特定の安定剤の組み合わせ、2種類の原料で得られたものです。構造の評価も主に粘度と顕微鏡写真に基づいています。ほかの原料や配合に当てはまるかどうかは、追加の確認が必要とされています。

原著論文の著者・所属:Tetіana Rudakova(Institute of Food Resources of the National Academy of Sciences of Ukraine)、Iryna Romanchuk(Institute of Food Resources of the National Academy of Sciences of Ukraine)、Antonina Minorova(Institute of Food Resources of the National Academy of Sciences of Ukraine)、Sergiy Narizhnyy(Bila Tserkva National Agrarian University)、Halyna Kalinina(Bila Tserkva National Agrarian University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tetіana Rudakova, Iryna Romanchuk, Antonina Minorova, et al. Determining the influence of thermal-mechanical treatment on the structure formation of low-calorie dairy desserts. Eastern-European Journal of Enterprise Technologies 2026-10-28. DOI: 10.15587/1729-4061.2026.371110. 原著ライセンス:CC BY.