著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。

掲載誌:Applied Sciences

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:加工の度合いだけで食品の良し悪しを判断できるか

近年、食品を加工の度合いと目的で分ける「NOVA分類」が広く使われるようになりました。NOVA分類は食品を、未加工・最小限の加工食品、加工された調理用食材(油や砂糖など)、加工食品、超加工食品の四つのグループに分けます。超加工食品を多く食べることと、肥満や2型糖尿病、心血管疾患などのリスクが高いこととの関連が、観察研究で報告されてきました。

一方で、観察研究で見つかる関連だけでは、「加工そのもの」が原因なのかを見分けにくいという問題があります。超加工食品の多い食事は、エネルギー密度や糖、飽和脂肪、塩分、食物繊維の量などの点でも他の食事と異なるためです。著者らはこの総説で、超加工食品という概念の科学的な基盤と限界を、食品科学・食品技術の立場から検討しました。著者らは疫学研究で報告された関連そのものに異を唱えているわけではありません。この分類が個々の食品の性質について何を教えてくれて、何を教えてくれないのかを整理することを目的としています。

「配合」と「加工」を分けて考える

総説の中心にあるのは、食品の「配合(どの原材料をどれだけ使うか)」と「加工(加熱や乾燥などの処理)」を区別すべきだという主張です。著者らは、栄養成分やエネルギー密度は主に配合で決まり、食感や食品の組織構造の変化は配合と加工の組み合わせで生じると整理しています。例として、トマトを加熱すると色素成分リコピンが体に取り込まれやすくなるのは加工の効果です。パンなどの焼き菓子・パン類の減塩や食物繊維の強化は配合の効果です。ナッツや穀物を丸ごと食べるか粉にして食べるかで消化の速さが変わるのは、食品の構造の効果です。NOVAはこれらをまとめて一つの区分を与えるため、それぞれの寄与を切り分けられない、と著者らは指摘しています。

同じ区分の中でも違いが大きいことも示されています。乾燥は「最小限の加工」に含まれる処理ですが、条件によってビタミンCやポリフェノール、カロテノイドなどの熱や酸素に弱い成分が大きく失われることがあります。一方、凍結乾燥はこうした成分をよく保ちます。ただし、凍結乾燥はエネルギーとコストがかかります。著者らは、この比較を特定の技術を勧めるためではなく、一つの区分の中に性質の大きく異なる処理が含まれることを示す例として挙げています。

また著者らは、「工業用の原材料」だから体に悪いとは限らないと述べています。ペクチンやオリゴ糖、オメガ3脂肪酸、ビタミンなど、健康を目的に加えられる原材料もあるためです。超加工食品とされる工程の多くは、健康上の利点をねらった機能性食品の開発にも使われます。ただし著者らは、機能性食品にも糖や脂肪の多いものがあるとも断っています。添加物や水素添加などの工程が、それ自体で健康上の利点を意味するわけではありません。製品ごとに成分と根拠を見て評価する必要がある、という立場です。

超加工食品の中にも大きな幅がある

総説はNOVA自体が「すべての超加工食品が不健康だ」と言っているわけではないことを確認しています。疫学研究は、個々の製品ではなく、食事全体に占める超加工食品の割合を調べているという点も確認しています。しかし製品単位で見ると、同じグループ4の中に栄養面で大きく異なる食品が混在します。たとえば砂糖入りのコーラと無糖の栄養強化豆乳、クリーム入りビスケットと包装された全粒粉パンは、いずれも超加工食品に分類されます。それでも糖や食物繊維、たんぱく質、微量栄養素の量は大きく異なります。

総説が紹介する分析では、NOVAで超加工食品とされたスナックバー734品について、栄養の質(Nutri-Score)と「自然さ」の指標(食品自然度指数)の双方に大きなばらつきが見られました。果物ベースのバーは両方で高い評価を得ることが多く、シリアルバーは概して低い評価でした。また、栄養面で良好な製品を除くと、残りの超加工食品の8割以上が「脂肪・塩・糖の多い食品(HFSS)」の基準に当てはまるという報告も取り上げています。こうした点から著者らは、超加工食品というラベルは食事パターンを捉える上では有益である一方、個々の製品を選ぶ指針としての価値は限られると述べています。

ほかの評価指標とその限界、そして結論

著者らは、NOVAを補う方法として複数の指標を比較しています。HFSSの判定に使われる栄養プロファイルモデルは、エネルギーや飽和脂肪、糖、塩分と、食物繊維やたんぱく質などを点数化して差し引くもので、成分データから計算できるため透明性が高く、再現性よく適用できるとされています。推奨される栄養素と控えるべき栄養素のバランスを見る栄養密度指数(NRF指数)は、定量的で柔軟な指標ですが、どの栄養素を選ぶか、基準量をどう置くか、100キロカロリー当たりか1食当たりかといった算出の基準によって結果が変わります。どちらの指標も、加工や食品の構造は考慮しません。表示情報から食品の「自然さ」を1〜5で評価する食品自然度指数は、消費者の評価とよく一致します。しかし、栄養や健康上の価値を測るものではありません。食事の炎症を起こしやすさを見る食事性炎症指数は、もともと食事全体を評価するためのもので、個々の食品への当てはめには限界があります。著者らは、これらの指標は測っているものが違い、互いに置き換えられるものではないと強調しています。

このほか総説では、減糖・減塩などの配合の見直しが技術的に難しいことにも触れています。合成添加物を避ける「クリーンラベル」志向の広がりや、食品製造で出る副産物を原料として生かす取り組みも取り上げています。副産物を安全に食べられる原料にするには、むしろ加工が欠かせない、と著者らは述べています。

著者らの結論は、食品の質は加工の度合いだけでは捉えきれないというものです。食品の分類には、栄養の質、食品の構造、配合、加工、健康への影響、環境への配慮を組み合わせて考える必要がある、としています。この総説は、「加工されているかどうか」から一歩進んで、「どんな加工が、どんな配合の食品に、どう作用したのか」を問うことの大切さを示しています。

原著論文の著者・所属:Carlos F. Torres(Instituto de Investigación en Ciencias de la Alimentación (CIAL), Consejo Superior de Investigaciones Científicas-Universidad Autónoma de Madrid (CSIC-UAM), Nicolás Cabrera 9, 28049 Madrid, Spain; Sección Departamental de Ciencias de la Alimentación, Facultad de Ciencias, Universidad Autónoma de Madrid, 28049 Madrid, Spain)、Assamae Chabni El-Baroudi(Departamento de Química Agrícola y Bromatología, Facultad de Ciencias, Universidad Autónoma de Madrid, 28049 Madrid, Spain; Instituto de Investigación en Ciencias de la Alimentación (CIAL), Consejo Superior de Investigaciones Científicas-Universidad Autónoma de Madrid (CSIC-UAM), Nicolás Cabrera 9, 28049 Madrid, Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Carlos F. Torres, Assamae Chabni El-Baroudi. Revisiting the Ultra-Processed Food Concept: A Critical Review of Its Scientific Basis and Implications for Food Classification. Applied Sciences 2026-10-28. DOI: 10.3390/app162110657. 原著ライセンス:CC BY.