著者の所属・活動拠点の国は、エジプトです。
掲載誌:Food Production Processing and Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
2型糖尿病の管理では、食後の血糖値の急な上昇を抑えることが重要な課題の一つとされています。食事に含まれるデンプンは、α-アミラーゼという消化酵素によって細かく分解され、最終的にブドウ糖として吸収されます。この酵素の働きを抑える医薬品としてアカルボースなどがありますが、消化器系の副作用が知られており、論文は植物由来の代替成分への関心が高まっていると述べています。
研究チームは、それぞれα-アミラーゼを抑える働きが個別に報告されてきた桑(マグワ)、ブドウ、オリーブの葉に着目しました。桑の葉にはルチンやクロロゲン酸、ブドウの葉にはカテキン、オリーブの葉にはオレウロペインといった、性質の異なるポリフェノールが含まれます。著者らは、これらを組み合わせると酵素の異なる部位に作用して阻害が高まる可能性があると考え、各抽出物の成分と抗酸化活性を調べたうえで、組み合わせたときのα-アミラーゼ阻害を評価しました。
何をどのように調べたか
エジプト・ギザの農場で採取した3種類の葉を乾燥・粉砕し、エタノール濃度60%と80%の水溶液で成分を抽出しました。ポリフェノールをより多く含んだ抽出液を選び、凍結乾燥して粉末状の抽出物にしました。
この抽出物について、ポリフェノール全体とフラボノイド全体の量を測定し、2種類の方法で抗酸化活性を評価しました。比較対象には、食品などに使われる合成の酸化防止剤BHTを用いました。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)という分離分析法で、個々のポリフェノール成分を特定・定量しました。
α-アミラーゼへの作用は、ブタのすい臓由来の酵素とジャガイモのデンプンを使う試験管内の実験で調べ、アカルボースと比較しました。さらに、酵素反応の速度の変化から阻害の型を分析しました。組み合わせの効果は「併用指数(CI)」で評価しました。CIが0.8未満なら単独の効果を足し合わせた以上に強まる「相乗効果」、0.8〜1.2なら単純な足し合わせに相当する「相加効果」、1.2を超えると互いに打ち消し合う「拮抗」と判定されます。
主な結果
抽出物の収量は60%エタノールのほうが多くなりましたが、ポリフェノールとフラボノイドの量、抗酸化活性はいずれも80%エタノール抽出物のほうが高い結果でした。そのため、以降の分析には80%エタノール抽出物が使われました。凍結乾燥した抽出物では、ポリフェノール量、フラボノイド量、抗酸化活性のいずれもオリーブが最も高く、ブドウ、桑の順でした。3種類とも抗酸化活性はBHTを上回り、オリーブ抽出物はBHTの約10倍の活性を示したと報告されています。
HPLC分析では、フェノール化合物14種類とフラボノイド7種類が特定されました。主な成分は、桑ではクロロゲン酸とルチン、ブドウではロスマリン酸とカテキン、オリーブではオレウロペインとアピゲニン-7-グルコシドでした。
単独で使った場合のα-アミラーゼ阻害は桑が最も強く、酵素の働きを半分に抑えるのに必要な濃度は1ミリリットルあたり4.53ミリグラムでした。オリーブは6.42ミリグラム、ブドウは7.44ミリグラムで、ブドウが最も弱い結果でした。一方、アカルボースは0.029ミリグラムで阻害しており、論文はアカルボースの効率が抽出物の200倍以上だったと述べています。反応速度の分析からは、3種類の抽出物はいずれも、酵素とデンプンが結合した状態に作用する「不拮抗阻害」という型を示しました。これに対しアカルボースは、デンプンと同じ部位を奪い合う「拮抗阻害」の型でした。
組み合わせでは、結果に大きな差が見られました。桑とブドウの組み合わせは相加効果から弱い拮抗、桑とオリーブはすべての比率で拮抗でした。これに対し、ブドウとオリーブの組み合わせはすべての比率で相乗効果を示し、CIは0.16〜0.55でした。最も強い相乗効果はブドウの割合が高い比率で得られました。3種類を混ぜた場合は、ブドウの割合を高めた配合でCIが約0.5となって相乗効果を示し、阻害率は81.77%でした。反対に、桑の割合を高めた配合では拮抗となりました。
この研究が示すこと
単独ではα-アミラーゼ阻害が最も弱かったブドウの葉の抽出物が、オリーブの葉の抽出物と組み合わせると相乗的な阻害を示した点が、この研究の特徴的な報告です。一方で、単独では最も強かった桑の抽出物は、他の抽出物と合わせると効果が打ち消される傾向がありました。植物抽出物の組み合わせ効果は、個々の強さだけでは予測できないことがうかがえます。
著者らは、この結果がα-アミラーゼ阻害作用を高めた機能性食品の開発に役立つ可能性があるとしています。ただし、いずれの抽出物もアカルボースより阻害効率は低く、今回の結果はすべて試験管内の実験によるものです。論文は、生体での検証がないこと、試験管内の実験ではヒトの消化管の複雑さや成分の吸収のされ方を再現できないことを主な限界として挙げています。
原著論文の著者・所属:Tarek S. Mohamed(Food Science Department, Faculty of Agriculture, Cairo University, Giza, 12613, Egypt)、Samy M. Galal(Food Science Department, Faculty of Agriculture, Cairo University, Giza, 12613, Egypt)、Ayman A. Mohammad(Food Technology Department, National Research Centre, 33 El Buhouth St., Dokki, Cairo, 12622, Egypt)、Karima S. M. Hammad(Food Science Department, Faculty of Agriculture, Cairo University, Giza, 12613, Egypt)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tarek S. Mohamed, Samy M. Galal, Ayman A. Mohammad, et al. In vitro evaluation of the phytochemical composition, antioxidant potential, and synergistic α-amylase inhibition kinetics of combined plant leaf freeze-dried extracts. Food Production Processing and Nutrition 2026-10-06. DOI: 10.1186/s43014-026-00429-1. 原著ライセンス:CC BY.