掲載誌:Journal of Environmental Chemistry and Ecotoxicology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
輸入米に含まれる金属を調べる
米が主要な食料であり、輸入への依存も大きいセネガルで、研究チームは輸入米に含まれる微量金属の濃度と、その摂取に伴う健康リスクを調べました。対象としたのは、ヒ素、カドミウム、クロム、銅、鉄、亜鉛の6元素です。
著者らはダカール地域の商店や市場などで販売されていた輸入米14試料を集めました。白米と玄米を含む試料を粉砕し、酸で分解した後、元素ごとの濃度を測定しました。さらに、体重70kgの成人が米を1日0.30kg食べる条件を設定し、米から取り込む金属の量と健康リスクの指標を計算しました。
平均濃度の低さと、試料ごとのばらつき
測定した元素の平均濃度は、亜鉛、鉄、銅、クロム、ヒ素、カドミウムの順に高く、論文では全体として比較に用いた国際的な規制値を下回ったと報告しています。一方、ヒ素とカドミウムは試料間のばらつきが大きく、一部に汚染が集中している可能性が示されました。
ヒ素の平均濃度は乾燥した米1kg当たり0.091mg、最大値は0.375mgでした。カドミウムは平均0.043mg、最大0.350mgでした。また、推計した金属摂取量を重量で比べると、亜鉛と鉄が合計87.1%を占めましたが、健康リスクの計算で中心となったのは、摂取量の少ないヒ素とカドミウムでした。
健康リスクの指標では何が示されたか
著者らは、推計した摂取量を毒性の参照値と比較し、がん以外の健康影響について複数元素の寄与を合計する「ハザード指数」を求めました。この指数は14試料中8試料、約57%で判断の目安となる1を超え、主な寄与はヒ素によるものでした。1を超えることは、設定した摂取条件で潜在的な健康リスクが懸念されることを示す指標であり、健康被害が実際に発生したという観察結果ではありません。
発がんリスクについては、ヒ素、カドミウム、クロムの寄与を合計した推計値が、全14試料で論文が用いた懸念水準の10⁻⁴を超え、2.65×10⁻⁴から1.02×10⁻²の範囲だったと報告しています。平均の合計値への寄与はカドミウムが62.2%と最も大きく、がん以外のリスクでヒ素が中心となった結果とは異なりました。
これらは金属の濃度と摂取条件に基づく計算であり、消費者の発病を調べた結果ではありません。また、毒性が異なる化学形態を直接測定していないため、著者らは総ヒ素の75%を無機ヒ素、総クロムの20%を六価クロムと仮定しました。特に六価クロムの割合は、探索的な評価のために設定したもので、米に一般的に当てはまる割合ではないと説明しています。
量の多さだけではリスクを捉えられない
この研究が伝えるのは、平均濃度や金属の総量だけでは、試料ごとの汚染や元素によるリスクの違いを十分に捉えられないという点です。著者らは、今回の結果を踏まえ、ヒ素とカドミウムに重点を置いた監視と、輸入米の流通経路を追跡できる仕組みの改善が重要だと結論づけています。
著者:Belel GUEYE Pape、DIOP Tidiane、Adrienne Ndioléne、Fatou Ndoye、NDIAYE Maguette、Abdoul Khadir DIOP Cheikh
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Belel GUEYE Pape, DIOP Tidiane, Adrienne Ndioléne, et al. Analysis of trace metal contamination levels in imported rice in Senegal 2. Journal of Environmental Chemistry and Ecotoxicology 2026-09-30. DOI: 10.5897/jece2026.0521. 原著ライセンス:CC BY.